ティンパノメトリー

ティンパノメトリーの基本: 耳の健康を支える重要な検査について解説

耳の不調を感じたとき、私たちが耳鼻科で受ける検査の一つに「ティンパノメトリー」というものがあります。
この検査を受けることで何がわかるのでしょうか。
今回はティンパノメトリーの基本と、それが私たちの耳の健康管理にどう役立つのかを解説します。

1. ティンパノメトリーとは何か?

ティンパノメトリーは、耳の健康を調べる検査で、鼓膜と中耳の状態を見るために使います。
具体的には、耳に小さな機械を使って音波を送り、鼓膜の動きをチェックするというものになります。
ティンパノメトリーは、滲出性中耳炎、耳管機能不全、鼓膜の穿孔などの診断に役立ち、治療方針の決定にも重要な役割を果たします。
検査自体は非常に迅速で、痛みを伴わないため、小さな子どもから高齢者まで広く行われています。

2. ティンパノメトリーの実施方法

では、実際にどのようにティンパノメトリー検査が行われるのかを解説していきます。
患者の耳道にプローブを挿入し、音波を送信します。
この音波の鼓膜に対する反応を計測し、中耳の健康状態を評価します。

ティンパノメトリーは数分で完了し、特別な準備は必要ありません。
検査前に耳の清掃を行うことがあります。

3. ティンパノメトリーで分かること

ティンパノメトリーによって得られる情報は中耳の健康を評価するのに非常に有用です。
以下は、ティンパノメトリーで特に注目されるポイントとその解釈についての詳細です。

中耳の圧力測定とその意味

ティンパノメトリーでは、中耳の空気圧を測定します。
正常な状態では、中耳の圧力は外部の大気圧とほぼ同じです。
中耳に異常がある場合、圧力が正常範囲から逸脱していることが多く、これが病態の指標となります。

負の圧力

耳管が適切に機能していない場合、中耳の圧力が外部の圧力よりも低下し(負の圧力)、これは耳管機能不全や急性中耳炎の初期段階を示すことがあります。

正の圧力

中耳に液体が溜まる滲出性中耳炎などでは、圧力が上昇することがあります。

検査結果の解釈方法

ティンパノメトリーの結果は、通常、ティンパノグラムと呼ばれるグラフに表示されます。
このグラフは鼓膜の動き(コンプライアンス)と中耳圧の関係を示し、異常がある場合には特定のパターンで現れます。

タイプ A

正常なティンパノグラム。鼓膜の動きが良好で、中耳圧も正常です。

タイプ B

平坦な曲線を示し、これは鼓膜の動きがほとんどないことを意味します。
これは鼓膜の後ろに液体が存在する場合(滲出性中耳炎)や、鼓膜穿孔のある場合に見られます。

タイプ C

鼓膜の動きはある程度保たれていますが、中耳圧が負の値を示しています。
これは耳管機能不全や急性中耳炎の初期に見られる典型的なパターンです。

ティンパノグラム型のグラフ

引用)ティンパノグラムの利用法.耳鼻臨床.1987;80(10):1485-1495.

4. ティンパノメトリーが示す一般的な病態

ティンパノメトリーは、中耳の状態を評価し、さまざまな耳の病態を診断するのに役立ちます。
以下はティンパノメトリーが示す一般的な病態と、それに対応するティンパノグラムの特徴となります。

1. 滲出性中耳炎

病気の内容: 滲出性中耳炎は、中耳に粘液または液体が溜まる状態です。
これは通常、感染後やアレルギー反応によって起こります。
痛みは少ないことが多いのですが、聞こえに影響を及ぼすことがあります。

ティンパノグラムは、タイプ B が典型的で、平坦な曲線を示します。
これは中耳に液体が存在し、鼓膜の動きがほとんどないことを意味します。

2. 急性中耳炎

病気の内容: 急性中耳炎は、中耳の感染により急速に炎症が生じる病状で、通常、痛みや発熱を伴います。
しばしば小児に見られる症状です。

ティンパノグラムについては、初期段階ではタイプ C を示すことが多いです。
これは中耳圧が負の値(負圧)であり、耳管の機能不全を示します。
病状が進行すると、液体の蓄積によりタイプ B に移行することもあります。

3. 耳管開放症

病気の内容: 耳管開放症は、通常は閉じているはずの耳管が常に開いている状態を指します。
これにより、呼吸や飲み込みの際に耳に不快感や異音が生じることがあります。

この状態では、ティンパノグラムの結果は多様であり、耳管が開いている状態を反映して通常よりも鼓膜の動きが活発になることがあります。
しかし、特定のパターンは診断によって異なるため、他の臨床的証拠と合わせて評価されることが一般的です。

5. まとめ

今回の記事では、ティンパノメトリーの検査方法や結果の見方、さらに異常を示す病態についても解説しました。
ティンパノメトリーは、内耳の状態をみるためにとても役立つ検査です。
近年では、さらに幅広い刺激音を用いたワイドバンドティンパノメトリーが耳小骨(じしょうこつ)という耳の骨の病変の診断など応用範囲を広げています。
今後も、こうした検査技術の進歩に注目していきましょう。

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カテゴリー:耳鼻科の検査  投稿日:2024-07-26

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