突発性難聴は自然に治る?突発性難聴の原因や症状・治療法について医師が解説
突発性難聴とは
突発性難聴は突然、片方の耳(まれに両耳のこともあります)の聞こえが悪くなる疾患です。そして、早期の対応が聴力回復の鍵となります。
今回の記事では、突発性難聴の原因や症状、治療法、そして自然に回復するのか、について解説していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
突発性難聴の原因
音は、空気の振動として伝わり、耳の中の組織である蝸牛(かぎゅう)というカタツムリの殻のような構造の中にある「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」によって感じ取られます。
この有毛細胞は、音を感じ取った後に、脳に伝える役割をしています。
引用)難聴について | Hear well Enjoy life. – 快聴で人生を楽しく 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
なお、感音難聴とは、内耳や蝸牛(かぎゅう)神経、脳に問題がある難聴のことを指します。
突発性難聴は、有毛細胞が何らかの原因で傷つき、壊れてしまう病気です。
原因としてははっきりとはまだわかっていませんが、有毛細胞を栄養している血液の流れが悪くなってしまうことや、ウイルス感染、自己免疫疾患、ストレスなどが関与している可能性が考えられています。
突発性難聴は、一度言語を習得してから発症する片方の耳の感音性難聴の原因として半数以上を占めるという報告もあります。
引用)急性感音難聴診療の手引き2018年版.pdf p38 III 各論 1 突発性難聴
突発性難聴は高齢者に発症することが多く、60歳代での発症が最多となっています。
突発性難聴の症状
突発性難聴の診断基準の主症状は、「突然発症する、原因不明の、高度の感音難聴」というものです。そして、診断基準にもそのように定義されています。
耳の聞こえの検査には、段階的に高さが変わっていく音が、どれくらいの大きさで聞こえるのかを調べる純音聴力検査というものがあります。このテストでは、通常250ヘルツから8000ヘルツまでの範囲の周波数が用いられます。
突発性難聴は、隣り合う3周波数の音に対して、それぞれ30デシベル(dB)以上の聴力低下が72時間以内に生じたもの、と定義されています。
朝に目が覚めたら難聴になっていた、と気づくようなことが多いですが、数日をかけて悪化していく例もあります。
片側の耳の場合が多いのですが、両方の耳が同時に聞こえなくなることもあります。
耳鳴りやめまいを伴うこともあります。
突発性難聴の診断方法
突発性難聴の診断方法は、以下のようになります。
症状の評価
先ほど述べたような症状があるかどうかを、患者さんへの問診から聞き取り、評価していきます。
聴力検査(オージオメトリー)
突発性難聴の診断には、純音聴力検査が必須です。この検査では、異なる周波数での患者さんの聴力閾値が測定されます。
他の原因の除外
耳鏡検査を行い、外耳道や鼓膜の異常を確認します。
また、MRIやCTスキャンを使用して、腫瘍や中耳の疾患など、聴力低下の他の原因を除外します。
さらに、全身性の疾患(例:感染症、自己免疫疾患)が原因でないことを確認するために、血液検査が実施されることがあります。
突発性難聴の治療方法
突発性難聴に対する治療法としては、現在までにエビデンスが確立したものはないとされています。
通常は、治療には主にステロイド薬が用いられ、聴力の回復を目指します。
ここからは、突発性難聴に対する治療方法についてご説明します。
ステロイド治療
最も一般的な治療法として、内服薬または中耳内注射によるステロイド(抗炎症薬)が用いられます。ステロイドは内耳の炎症を抑え、聴力回復を促すことが期待されます。
血管拡張薬
循環不良が原因と考えられる場合、血流を改善する薬剤が処方されることがあります。
高圧酸素療法
高圧酸素室で純粋な酸素を吸入することにより、内耳への酸素供給を改善し、聴力回復を促進する治療法です。
抗ウイルス薬
ウイルス感染が原因と考えられる場合、抗ウイルス薬が処方されることがあります。
この他、代謝改善薬やビタミン製剤が併用されることもあります。また、もし薬物治療に対して改善が不十分だった際には、片側の耳が聞こえないというハンディキャップが残ることにもなります。そのため必要であれば、補聴器による治療も行われます。
突発性難聴は回復するのか
突発性難聴の患者さんにおいては、約1/3の症例では治癒するものの、1/3の症例では部分的な回復に留まり、さらに1/3の症例では不変であることが報告されています。
治療を行っても耳の聞こえが変わらなくなった場合には、それ以上の聴力の改善は期待できないことが多いです。また、一般的には、繰り返し発症することはないとされています。
まとめ
今回の記事では、突発性難聴の原因や症状、治療法について解説しました。
突発性難聴を治すためには、早期発見・早期治療ができるかどうかが大切です。
気づかないうちに聴力が低下していることもあるので、定期的な聴力検査と健康管理を心がけましょう。そして、もし、聞こえが悪いと感じた場合には、早めに耳鼻科を受診するようにしましょう。
この記事が参考になれば幸いです。
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カテゴリー:耳鼻科の病気 投稿日:2024-06-03
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