声帯ポリープ

声帯ポリープとは?原因や症状・治療法・予防法について医師が解説

声帯ポリープとは

声帯ポリープは、声帯という発声を司る部位にできる良性の腫れ物のことです。一般的には、声の使い過ぎや慢性的な声の不適切な使い方が原因で発生します。また、喫煙やアレルギー、上気道感染症などもリスク要因とされています。
今回の記事では、声帯ポリープの症状や原因、診断方法、治療法、そして予防法について解説していきます。

声帯とは

まずは、声帯についてご説明します。
声を出す際に、その音源を作る器官は喉頭(こうとう:喉のことです)です。そして、声帯は喉頭の内部にある、左右一対の前後に走るひだのような形をしています。

画像
発声と声帯振動の基礎


(引用)発声と声帯振動の基礎.日本音響学会誌.2015;71(2):73-79.

声帯は、以下のような3層構造からなっています。

  • 粘膜(カバー):上皮+浅層(動きやすい組織)
  • 靭帯(移行部):中間層+深層
  • 筋肉(ボディ):声帯筋

声を出すためには、声帯がスムーズに動くことが大切です。

声帯ポリープの原因

声帯ポリープは、長期間にわたって喉を酷使することで声帯に過度な刺激が加わり、声帯の粘膜がむくむことによってできるのではないかとされています。さらに、こうした機械的な刺激によって、声帯に出血や血腫ができるというメカニズムも考えられています。実際に、上気道炎、つまり風邪の後に発生するポリープでは、声帯に炎症が起こることで刺激が加わり、ポリープが出来てしまうこともあります。

その他には、胃食道逆流症や甲状腺機能低下症で治療をしていない場合、さらに慢性の喉頭のアレルギー反応、タバコの煙などの刺激物などの慢性的な吸入などが原因として挙げられます。

声を無理に出すことが最も多い原因となるため、歌手や学校の先生など、声を多く使う職業の方によく声帯ポリープがみられます。

声帯ポリープの症状

さて、声帯にポリープができると、声帯がうまく振動できなくなってしまいます。すると、以下のような症状が現れます。

声のかすれや声の変化

声帯ポリープが声帯の振動を妨げるため、声がかすれたり、声の質が変わったりすることがあります。

声の疲れ

声を長時間使った後、声が疲れやすくなることがあります。

発声時の不快感

声を出す際に喉に違和感や軽い痛みを感じることがあります。

咳・痰

声帯ポリープが喉に刺激を与えることで、咳や痰が出ることがあります。

声帯ポリープの症状は個人差があり、中には症状がほとんどない人もいます。しかし、声の変化や喉の不快感が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診して診察を受けるようにしましょう。早期発見と適切な治療によって、症状が改善する見込みが高まります

声帯ポリープの診断

声帯ポリープの診断は、主に以下のように行われていきます。

症状の詳細な問診

主に耳鼻咽喉科などを専門にする医師が、患者の声の変化、喉の違和感、咳や痰の有無など、症状に関する詳細な情報を聴取していきます。

声の評価

声のかすれや変声の程度を評価するために、実際に患者に話したり歌ったりしてもらうことがあります。

喉頭鏡検査

耳鼻咽喉科医は、喉頭鏡を使用して喉と声帯を直接観察します。この検査により、声帯ポリープの存在、大きさ、位置などが確認できます。

ストロボスコープ検査

ストロボスコープという、高速で周期的な運動を行っている物体を、その周期に合わせた光の点滅によって観察する装置があります。その装置を使用して、声帯の振動を詳細に観察することができます。この検査により、声帯の動きやポリープの影響をより詳しく評価することができます。

声帯ポリープが確認された場合の追加検査

ポリープの見た目ががんと区別が付かない場合などは、声帯ポリープの性質をより詳しく調べるために、細胞診や生検などの追加検査が行われることがあります。

これらの検査結果をもとに、医師は声帯ポリープの診断を行っていきます。

声帯ポリープの治療

声帯ポリープの治療法としては以下のようなものがあります。

音声治療

大声を出すことを避け、専門の言語聴覚士による指導などにより正しい発声の仕方を学びます。
音声治療によって、ポリープが縮小することもあります。また、ポリープを切除した後に音声治療をすることで、ポリープの再発を予防する効果が期待できます。

炎症やアレルギーの治療

また、炎症やアレルギーが原因となっている場合には、抗炎症薬や抗アレルギー薬が処方されることがあります。
ポリープが大きい場合や、保存的治療で改善が見られない場合には、外科的に切除することがあります。

手術

声帯ポリープに対する手術の一つに、喉頭微細手術というものがあります。これは、全身麻酔をかけた上で直達喉頭鏡を使って喉頭(のど)をしっかり見えるようにします。そして、手術用顕微鏡を喉に入れて、画像を見ながら手術を行うというものになります。

この手術では、ポリープの形や大きさ、色味などから、どれくらい声帯の粘膜を残せるのかを判断します。そして、手術の方法を選んでいきます。
例えば、有茎性(ゆうけいせい)、つまりポリープがキノコのようにクキがあるような形の場合の手術の様子を下に示します。

声帯ポリープ切除術


引用)音声外科手術の基本手技.日耳鼻.2019;122-1349.

声帯ポリープの予防

声帯ポリープの予防には、以下のような対策が有効です。

適切な声の使用

声を過度に使うことを避け、>正しい発声方法を身につけることが重要です。特に声を多く使う職業の方は、発声法について専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

声の休息

長時間声を使った後は、適度な休息を取ることで喉を休ませましょう。

水分摂取

十分な水分を摂取することで、喉の乾燥を防ぎ、声帯の健康を保ちます。

禁煙

喫煙は喉や声帯に悪影響を及ぼすため、禁煙を強くおすすめします。

アレルギー対策

アレルギー反応が喉に影響を与える場合、適切なアレルギー対策を取ることが大切です。

胃食道逆流症の管理

胃酸が喉に逆流することで、声帯に影響が出ることがあります。そのため、胃食道逆流症の適切な管理が必要です。
これらの予防策を日常生活に取り入れることで、声帯ポリープのリスクを下げることが期待できます。また、声の変化や喉の不快感が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

まとめ

今回の記事では、声帯ポリープとはどのようなものか、そして原因や症状、治療法、予防法について解説しました。適切な治療や声の出しすぎに気を付けることで、声帯ポリープは改善することもあります。しかし、再発する可能性もあるので、日常的に気を付けていくことが大切です。
今回の記事が参考になれば幸いです。

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カテゴリー:耳鼻科の病気  投稿日:2024-06-03

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