生理のトラブルで困っている方へ(過多月経・月経困難症)
「生理痛がひどくていつも寝込んでしまう、仕事/学校を休んでしまう」
「市販の痛み止めを飲んでも生理痛がよくならない」
「出血の量が多くて、大きなナプキンでももれてしまう」
「生理前にイライラがおさまらない」
このような症状でお困りではありませんか?
生理のときの症状には個人差が大きく、全く困っていないという方もいれば、ひどい症状に悩まされている方も多くいらっしゃいます。
なかなか言い出すことができず、がまんしているケースを多数拝見しました。
生理のトラブルには対処法があります。正しくお薬を使うことで生理を楽にすることが可能です。
本日は過多月経・月経困難症についてお話しします。
原因
生理のトラブルがあるときには、子宮や卵巣になんらかの疾患がある場合と特に疾患がない場合があります。
- 器質性(きしつせい)月経困難症:子宮や卵巣に何らかの疾患があり、それが原因で生理痛、過多月経を引き起こしている状態をいいます。
原因疾患としては、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などがあります。
- 機能性(きのうせい)月経困難症:子宮や卵巣には特に疾患はないが、生理のトラブルを来している状態をいいます。何も原因がないのに、月経トラブルを抱えている女性はたくさんいらっしゃいます。
症状
月経前、月経が始まってから数日間、下腹部痛で困っていることを月経困難症と言います。
月経時の出血が多いことを過多月経といいます。月経量は他人と比較することができないため、量が多いことに気付いていないことがよくあります。
血液検査でいつも貧血と言われる、大きなナプキンを1時間に1回交換しないといけない、大きなナプキンでもよく漏れてしまうなどのエピソードをお持ちの方は、過多月経である可能性が高いです。
診断
まずは器質的な疾患がないかどうかを確認します。
超音波検査を行い、子宮や卵巣に所見があるかどうかを確認します。何らかの所見がある場合には、必要に応じて骨盤MRI検査によって精密検査を行います。
月経量が多い場合には採血検査を行い、貧血の有無を確認します。
治療
子宮や卵巣に器質的疾患がある場合には、まずはそちらの治療を行います。
特別な疾患がないのに月経痛がひどい、量が多い場合には以下のような治療を行っていきます。
鎮痛剤
下腹部痛があるときには我慢せず、早めに鎮痛剤を使うことをおすすめします。痛みがピークに達すると痛み止めは効きにくくなるからです。
超低用量ピルもしくは低用量ピル
女性ホルモンには2種類のホルモンがあります。エストロゲンとプロゲステロンです。これらのホルモンが増えたり減ったりすることによって、排卵が起きたり生理が来たりしています。
これらのホルモンの変動によって、生理の出血量増加、PMS、排卵が起こります。
この2種類のホルモンの合剤が(超)低用量ピルです。ピルを内服することにより、月経量を減らしたり、PMSや排卵を抑えることが可能です。
超低用量ピルはエストロゲンの量を減らすことによって副作用を軽減することを目的として作られた薬剤です。月経困難症に対して保険適応での処方をすることが可能です。
低用量ピルは避妊をメインの目的としている薬剤であり、保険適応ではなく自費での購入となります。こちらのピルにおいても、月経痛やPMSを改善したり、月経量を減らすことは可能です。
ピルの副作用
頭痛、吐き気、乳房の張り、不正出血;飲み始めの1-2カ月にみられることが多いです。副作用が軽微であればピルを飲み続けることによって改善していきます。副作用がとても強く見られる場合には、内服を中止して主治医に相談してください。
血栓症;発生頻度は低いですが、発症すると命に係わる副作用です。足の小さな静脈に血栓(血のかたまり)が出来て、肺の動脈を詰まらせてしまいます。ピルを内服開始した後に、ふくらはぎの痛みや左右差、呼吸困難、胸痛があれば早急に受診してください。タバコを吸う方、肥満がある方、心臓などに基礎疾患がある方、膠原病がある方などは血栓症のハイリスクです。医師の判断によりピルを内服できないことがあります。
レボノルゲストレル放出子宮内システム(商品名;ミレーナ)
子宮内に小さな器具を留置します。その器具からプロゲステロンが放出され、子宮内膜が増殖するのを抑えます。そして月経の量が減り、痛みも軽減します。
漢方薬
月経痛がひどい方では冷え性を持っていることが多いです。また、PMSに対して効果が高いと言われている漢方薬もあります。
患者様それぞれの体質に合わせて漢方薬を処方しています。
まとめ
生理痛がひどく、量が多いときには子宮や卵巣になんらかの病気が隠れているときがあります。超音波検査で簡単に検査できますので、放置せずに早めに受診しましょう。
なにも病気がないのに、生理で困っている女性はたくさんいらっしゃいます。このような場合において、ピルや痛み止め、漢方薬を使うことで生理の時期を快適にすることは可能です。
生理が快適になると毎日をより楽しく過ごすことができます。
生理のトラブルでお困りの際には気軽にご相談頂けると幸いです。
【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。
診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。
(医)こころみ採用HP取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
カテゴリー:よくある婦人科の症状 投稿日:2024-06-01
関連記事
人気記事
【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用
喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用
カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド) 投稿日: