眼振とは何?フレンツェル眼鏡を使った診断についてご紹介
眼振(がんしん)という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるでしょうか。
眼振とは、眼球が無意識に反復的に動く症状のことで、視覚的な不快感や視力低下を引き起こすことがあります。
このコラムでは、眼振の基本情報からフレンツェル眼鏡を使った診断と治療について、わかりやすく解説します。
眼振とは何か
眼振とは、自分の意志とは関係なく目がけいれんしたように動いたり揺れたりしている状態のことです。
規則的でリズミカルに動いたり、振り子のような往復運動が起こったりします。
眼振には、生まれつきの先天性のものと、生まれてから何らかの原因で起こる後天性のものがあります。
眼振の種類とメカニズム
ゆっくりとした動き(緩徐相:かんじょそう)と早い動き(急速相:きゅうそくそう)とを繰り返す衝動性眼振(しょうどうせいがんしん)と、これらの区別がはっきりとしない振子様眼振(ふりこようがんしん)とに分けられます。
急速相の動きが横方向に動く水平性・上下に動く垂直性、ぐるっと回る回旋性に分けられます。
また、じっとものをみた際に引き起こされる注視眼振(ちゅうしがんしん)や、頭の位置を変化させた時に起こる頭位眼振(とういがんしん)、体の位置を変えた時に起こる体位変換眼振などがあります。
眼振の原因は多岐にわたり、脳、内耳、視神経の異常などが考えられます。
眼振のメカニズムは、眼球運動を制御する神経系の異常に起因します。
脳幹、小脳、内耳の前庭系が関与し、これらの部分の機能異常が眼振を引き起こします。
具体的には、内耳の前庭器官の異常や脳幹の障害が眼球運動の制御を妨げ、無意識の動きを引き起こすのです。
眼振が生じている際には、めまいが起こったり、ものが揺れて見えたり、あるいは他の症状を伴います。
眼振の見方
眼振の見方については、以下のような手順で行います:
注視眼振検査
正面、および上下左右に約30°の眼位で、眼振の有無を観察します。
頭位眼振検査
フレンツェル眼鏡を装着し、頭部を動かしながら眼振を観察します。
頭位変化における眼振の誘発の有無を確認します。
頭位変換眼振検査
座位と懸垂(けんすい)頭位(頭を垂らした体位)で頭位変換を行い、眼振の有無を確認します。
この検査は、BPPV(良性発作性頭位めまい症)の診断に有効です。
これらの検査は、眼振の種類や原因を特定するための重要な手段であり、正確な診断と適切な治療計画の立案に役立ちます。
フレンツェル眼鏡とは
フレンツェル眼鏡は、眼振の診断に使用される特別な眼鏡です。
この眼鏡は、患者が外部の視覚情報から遮断されることで、眼球運動を観察しやすくします。
具体的には、以下のような特徴があります。
拡大レンズ
眼球の微細な動きを観察しやすくするためのレンズ
暗室効果
外部の視覚情報を遮断し、眼振の診断を容易にする
フレンツェル眼鏡を使った診断方法
フレンツェル眼鏡は、眼振の診断において非常に重要なツールです。
めまいを訴える患者には、まずフレンツェル眼鏡を使って眼振の有無を確認します。
この眼鏡を使用することで、患者の視覚的な固定が排除され、眼球運動をより明確に観察することができます。
以下に、フレンツェル眼鏡を使った診断方法を詳細に説明します。
準備
患者はフレンツェル眼鏡を装着します。
これにより、外部の視覚刺激が遮断され、眼球運動がより明確に観察できる状態になります。
暗室状態の設定
フレンツェル眼鏡のレンズは強い拡大効果があり、暗室効果を持つため、患者の視野がほぼ完全に遮断されます。
この状態では、眼球運動が患者自身に制御されず、自然な状態で観察されます。
観察と記録
医師は患者の眼球運動を観察します。
これには、眼球の微細な動きを観察するための拡大レンズが役立ちます。
診断中、以下のような検査を行います。
a. 注視眼振検査
患者の正面および上下左右に約30°の眼位で、眼振の有無を観察します。
b. 頭位眼振検査
患者の頭部をゆっくりと動かし、各頭位での眼振を観察します。
この検査では、方向交代性眼振(水平半規管型BPPV)の有無を確認します。
例えば、左下頭位で強い眼振が見られる場合、患側は左側であると判定されます。
c. 頭位変換眼振検査
座位と懸垂頭位で頭位変換を行い、眼振の有無を確認します。
この検査は、特にBPPVの診断に有効です。
フレンツェル眼鏡の利点
フレンツェル眼鏡の利点としては、患者の視覚的な固定が排除されるため、自然な眼球運動が観察できることです。
また、使用が簡便であり、患者にとっても負担が少ないです。
さらに、眼振の有無や種類を正確に判断することができます。
フレンツェル眼鏡を用いた診断は、眼振の特性や原因を特定するために非常に有効な方法です。
まとめ
眼振は、生理的なもの、つまり問題のないものもありますが、耳や目、脳の問題が原因となっている場合もあります。
眼振の詳しい観察のために、フレンツェル眼鏡が役立ちます。
眼振によるめまいやものが揺れて見える、などの症状がある場合には、早めに耳鼻科を受診することをお勧めします。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:よくある耳鼻科の症状 投稿日:2024-07-26
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