声枯れ

声が枯れる原因は?対処法や治療法について医師が解説

声が枯れると、日常生活に支障をきたすだけでなく、コミュニケーションや仕事にも影響を及ぼします。今回の記事では、声が枯れる原因や具体的な症状、治療法などについて詳しく解説していきます。

声枯れとは

声が枯れることを、医学的には嗄声(させい)ともいいます。
声帯や喉の不調によって声の質や音が変化し、声の質が低下し、かすれたり、しわがれたりする通常の声が出にくくなる状態を指します。
この状態は一時的なものから長期間にわたるものまで様々であり、正確な原因と適切な治療が必要です。

発声と嗄声との関係

発声は声帯の振動によって生じ、声帯が適切に閉じることで明瞭な音が出ます。

発声は、声帯の内転と呼気の動きが協調して行われる過程です。声帯が正常に閉じない、あるいは声帯の振動が不規則になることで、声が不明瞭になったり、雑音が混入したりします。
つまり、不規則な振動や声帯の不完全な閉鎖が、嗄声の主な原因となります。

音声障害の分類

なお、声が枯れたりしっかりと発音できなくなったりする音声の障害には、以下のようなものがあります。

1. 器質性音声障害

声帯に生じる器質的異常(ポリープ、結節など)が原因です。

2. 機能性音声障害

声帯の動きに問題があるが、器質的異常は見られないものです。

3.神経学的音声障害

神経系の問題により発生します(例:声帯麻痺)。

声が枯れる原因

声が枯れる原因はさまざまですが、主なものには以下が挙げられます。

1.過度な使用

長時間話したり、大声を出すことで声帯に負担がかかります。

2.感染症

風邪やインフルエンザなど、上気道感染が原因で声帯が炎症を起こすことがあります。

3.喫煙やアルコール

これらは声帯の炎症や腫れを引き起こす可能性があります。

4.声帯の障害

ポリープ、結節、声帯麻痺などが声の枯れを引き起こすことがあります。

5.悪性腫瘍

喉頭癌やその他のがんは、初期症状として声の枯れを引き起こすことがあります。特に喫煙者や過度のアルコール消費者で声の枯れが見られる場合は注意が必要です。

6.胃食道逆流症(GERD)

胃酸が喉まで逆流し、声帯を刺激して声の枯れを引き起こすことがあります。

声が枯れる症状が2週間以上続く場合や、呼吸困難、血痰、痛み、体重減少などの他の症状が伴う場合は、すぐに医師の診断を受けることが重要です。早期発見と治療が、より良い予後につながります。

声枯れの症状

声が枯れると、以下のような症状が現れることがあります。
声の枯れに伴う典型的な症状は以下の通りです。

1.声の変化

通常の声と比べて、声がかすれたり、音が裏返りやすくなる。

2.発声の労力

声を出すのに普段よりも多くの努力が必要になります。

3.喉の違和感

喉に違和感や刺激感、痛みを感じることがあります。

4.発声時の疲労感

話しているうちに声がますます弱くなる。

声が枯れる際の診断方法

それでは、声が枯れる症状がある場合の診断方法について解説していきます。

生理学的検査

喉頭鏡という器具を用いて声帯を直接観察します。
声帯ポリープや、腫瘍性病変などはこの検査でわかります。

音響学的検査

音声の物理的特性を分析します。

心理学的検査

GRBAS尺度で音声の質を評価します。
なお、GRBAS尺度は、音声障害の評価に用いられる臨床尺度です。
これは、音声の異常を聴取する際の感覚的な評価を提供するために用いられるものです。
医師や言語聴覚士が患者の音声の状態を評価する際に利用されます。GRBASは次の5つの項目の頭文字を取ったもので、それぞれの項目は音声の異常の特徴を示しています。

  1. G (Grade) – 総合評価: 音声の全体的な異常の程度。
  2. R (Roughness) – 粗糙性:音声のガラガラ感やざらざら感。
  3. B (Breathiness) – 気息性:息漏れ感が含まれる音声の息っぽさ。
  4. A (Asthenicity) – 無力性:音声の弱さや力のなさ。
  5. S (Strain) – 努力性:音声を出すのに必要な努力の度合い。

これらの項目はそれぞれ0から3のスケールで評価されます。
0は正常、1は軽度の異常、2は中度の異常、3は重度の異常を示します。この尺度によって、音声障害の程度が定量的に評価され、治療前後の変化を追跡しやすくなります。

音声障害の治療法

声の枯れに対する治療は原因に応じて異なりますが、基本的なアプローチは以下のとおりです。

1.声の休息

声帯を休め、自然治癒を促します。

2.保湿

加湿器を使用することで、喉と声帯の乾燥を防ぎます。

3.薬物療法

抗炎症剤、抗菌剤、鎮咳剤など、症状に応じた薬物を使用します。

4.外科的治療

声帯のポリープや結節が原因の場合は、外科的な治療が必要になることがあります。
声帯の病変を取り除く手術や、声帯の位置調整を行います。

5.音声治療

専門の音声療法士から正しい発声法を学び、声帯の過剰な緊張や不適切な使い方を改善します。

まとめ

声が枯れるという症状には、声帯や喉の健康に関する問題が隠れている可能性があります。
正しい声の使い方や適切な治療を行うことで、声の健康を保ち、日常生活や仕事でのコミュニケーションに支障が出ないようにすることが重要です。
もしも声が枯れるという症状がある場合には、耳鼻咽喉科の医師に相談し、早めに適切な対策を取ることが大切です。

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大澤 亮太

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大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:よくある耳鼻科の症状  投稿日:2024-06-07

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