顎が痛い時に考えられる原因は?顎関節症についても解説!
「物を食べるときに顎(あご)が痛い」「物を噛む際に顎の関節に痛みや違和感がある」といった症状を感じたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした症状は、顎関節症という病気や、関節に炎症を及ぼす病気のこともあります。
今回の記事では、顎が痛い原因や対処法、受診すべき診療科について解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
顎関節の構造
顎関節(がくかんせつ)は、頭蓋骨の一部である側頭骨(そくとうこつ)と下顎骨(かがくこつ)とが接続している関節です。
顎関節は、左右に1対ずつあります。そして、側頭骨のくぼんだ部分に、下顎骨の突き出した部分(下顎頭:かがくとう)がはまるような構造となっています。
そして、骨と骨の間には、関節円板(かんせつえんばん)や軟骨という組織があり、動きをスムーズにする役割があります。
顎関節は、関節自体が非常に複雑で、開閉運動だけでなく、前後左右のスライド運動も可能です。
また、顎関節の特徴として、口を開けるたびにはまり込んでいる下顎頭がくぼんだ部分から外れるという動きがあるということです。これは正常な動きですが、顎が外れて元に戻らない状態は顎関節脱臼(がくかんせつだっきゅう)と呼ばれます。
顎の関節が痛む原因
顎の関節が痛む原因を解説しましょう。
顎関節症
顎の関節とその周囲の筋肉に問題が生じることで起こります。
顎を動かす際の痛みや、顎の関節のクリック音が特徴です。ストレスや歯ぎしり、顎のクセなどが原因で発生することがあります。この顎関節症については、後ほど詳しく述べていきます。
歯の問題
虫歯や歯周病、不適切な噛み合わせ(歯列不正:しれつふせい)が顎の痛みを引き起こすことがあります。
噛み合わせが悪いと、顎関節に余計なストレスがかかり、顎の痛みだけでなく、頭痛などの他の症状も引き起こす可能性があります。
関節リウマチ
関節リウマチは、全身の関節を侵す自己免疫疾患です。関節リウマチは関節に炎症を引き起こし、顎関節にも影響を及ぼすことがあります。関節リウマチは痛みだけでなく、関節の機能障害も引き起こす可能性があります。
外傷や怪我
顎を直接的に打撲したり、事故による怪我が顎の関節に痛みを引き起こすことがあります。
また、過去の外傷が原因で後に痛みが発生することもあります。
顎関節症とは
顎関節症は、顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん:噛むための筋肉)の痛み、顎関節の雑音、開口障害(口を開けにくい状態)や顎運動異常を主要な徴候とする障害のこととなります。
顎関節症がなぜ起こるのか、そのメカニズムについては不明なことが多いとされています。
しかしながら、以下のようなリスク因子が考えられています。
日常生活を含む環境因子
- 緊張する仕事
- 多忙な生活
- 対人関係の緊張
行動因子
- 硬いものの咀嚼(そしゃく)
- 長時間の咀嚼
- 楽器演奏
- 長時間のデスクワーク
- 単純作業
個人的な因子
- かみ合わせ
- 顎関節の形態
- 咀嚼筋の構成因子
- 疼痛の閾値、経験
- 性格
- 睡眠障害
なお、日本顎関節学会によると、顎関節症は以下のように分類されています。
顎関節症の治療
顎関節症と診断するためには、先ほど述べたような他の原因を見落とさないようにすることが大切です。
必要な診察や検査などで、そういった他の原因を除外し、治療に進んでいきます。
顎関節症の治療目標は、痛みを減少させ、顎の機能を回復させ、そして正常な日常生活を送れるようにすることにあります。
顎関節症は時間が経過するにつれて改善し、治癒していくことが多いとされています。
それを患者さんが理解した上で、リスク因子と考えられるような生活習慣を改善していきます。
さらに、顎関節症のタイプに合わせて、以下のような治療が提案されます。
薬物療法
炎症や痛みを和らげるために非ステロイド性抗炎症薬が処方されることがあります。
物理療法
顎の筋肉を弛緩させ、動きを改善するためのストレッチやマッサージが行われます。
サポートデバイス
夜間の歯ぎしり防止用のマウスガードなどが使用されることがあります。
ストレス管理
ストレス軽減のためのカウンセリングやリラクゼーション技術が推奨されることがあります。
顎関節症は適切な診断と治療によって、症状の管理が可能な状態です。
そのため、顎の痛みや不快感が続くような場合は、専門の医療機関での相談を受けるようにしましょう。
顎が痛い時に受診すべき診療科
顎が痛い場合、適切な診療科を選ぶことが重要です。主に以下の診療科があります。
歯科
顎関節症の多くは歯科で治療が可能です。
耳鼻咽喉科
顎の問題が耳の症状と関連している場合もありますので、耳が痛い、耳から汁が出ているなどの症状を伴う場合には耳鼻咽喉科を受診しましょう。
神経内科または精神科
顎の痛みが神経的な疾患やストレス、不安が原因となっていると考えられる場合、神経内科や精神科を紹介される場合もあります。
整形外科
顎関節の構造的問題や大きな損傷の場合は整形外科での治療が適切と考えられます。
顔面の怪我などの後に顎が痛む場合、整形外科を受診するようにしましょう。
顎が痛い時の対処法・治療法
顎の痛みの治療は原因に応じて異なりますが、一般的な治療法には以下のようなものがあります。
原因となる疾患の治療
関節リウマチやその他の疾患のために顎が痛い場合には、その疾患の治療をしていきます。
温冷療法
痛みや腫れに対して、冷やしたり温めたりすることが効果的です。
薬物療法
痛みや炎症を軽減するための非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることが多いです。
物理療法
顎の筋肉をリラックスさせ、動きを改善するためのストレッチやマッサージが行われることがあります。
スプリント療法
夜間に特殊なマウスピースを使用して歯の噛み合わせを調整し、顎への負担を減らす治療です。
まとめ
顎が痛い場合、その原因は多様で、適切な診断と治療を受けることが必要です。
自己判断せず、症状が続く場合は専門医の診察を受けることが大切です。日常生活でのストレス管理や適切な口内ケアも、顎関節症の予防につながります。
症状が続く場合には、我慢せずに、医療機関を受診するようにしましょう。
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カテゴリー:よくある耳鼻科の症状 投稿日:2024-05-31
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