小児喘息

小児喘息の症状と治療法

気管支喘息とは

ぜん息とは、呼吸をするときに空気が通る道(気道)が狭くなり、呼吸困難をきたす病気です。何らかの刺激が加わると、炎症をおこしている気道粘膜が敏感に反応し、ぜん息症状を引き起こします。

小児ぜん息と成人ぜん息の違い

小児ぜん息のほとんどはアレルギーが関与するといわれます。これに対して成人ぜん息の場合は、「非アトピー型ぜん息」でアレルゲンを発見できないケースが多いです。原因に対処できす、気道は硬くてせまくなり、もとに戻りにくい状態(リモデリング)がおこりやすい特徴があります。

治りにくい成人ぜん息に移行しないためにも、小児期のうちに適切な治療を行うことが大切といえるでしょう。

小児ぜん息の特徴

ぜん息になりやすいのは、アレルギー体質、家族にぜん息の人がいる、男の子、肥満などの場合とされています。

ダニやペットなどのアレルゲン、かぜなどをひきおこすウィルス、タバコの煙、大気汚染などが原因でぜん息はおこります。

低年齢になるほど、呼吸機能が未発達なため、症状に注意が必要です。

なお、思春期になると体力もつき、喘鳴(ぜいめい)が出にくくなるため、症状が軽いからと放置しないようにしましょう。小児期にぜん息になった人は、成長とともに治ると考えられていました。しかし、一部で成人ぜん息に移行する人や、一時的に良くなっても大人になってからぜん息になる人もいるのが現状です。

適切な治療を受けることで全く症状のでない寛解(かんかい)になるといわれているため、継続した治療が必要です。基本的には15歳以上になると小児科から内科に変更しますが、お子さんの状態にもよるため、主治医に相談してください。

症状

空気が通る気道が狭いため、呼吸時にヒューヒューやゼーゼーという症状が出ます。笛がなるような音がするため、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれます。

急いで受診が必要な場合

子供は症状を訴えにくいこともあり、保護者の観察が重要です。

以下のような症状に注意をしましょう。

  • 水分を飲まない、食事がほとんどとれない
  • 横になれない、座っている、抱かれている方が楽な起坐(きざ)呼吸がある
  • 咳き込んでときに嘔吐する
  • 唇や顔色が悪い
  • 呼吸があらく、うなり声が聞かれる
  • 息をすうときに、のどやろっ骨の間がへこむ、小鼻が開く
  • 脈が速くなる
  • 機嫌が悪くなる

症状を見極め、早めに医療機関の受診が必要です。状態によっては救急要請を検討してください。

症状の特徴を伝える

正しい診断のために、詳しい症状を医師に伝えることが大切です。

  • 症状はいつ出るのか、頻度はどうか:夜間寝る前、早朝、哺乳後など
  • 症状の程度:肩を上下させる呼吸があるか、どのような音がするか(ヒューヒュー、ゼロゼロなど)
  • 日常生活への影響:食事がとれるか、眠っている途中で苦しくて目が覚めないか、運動はできるか
  • 他の症状:咳や熱はないか、鼻水の様子など

気になる症状は医師に相談しましょう。

ぜん息以外でも喘鳴(ぜんめい)はおこる

乳幼児は気管支が細いため、かぜをひいただけでもヒューヒュー、ゼーゼーをおこすことがあります。これは喘息性気管支炎(ぜんそくせいきかんしえん)といわれ、気管支喘息との見分けは困難です。

ほかにも胃液が食道に逆流しやすい、飲み込む機能に異常がある、生まれつき心臓に異常がある場合などで喘鳴をおこします。

また、ピーナッツや小さいおもちゃなど気道に吸い込むことでおこる気道異物の場合も喘鳴をきたします。これは誤嚥(ごえん)と呼ばれるもので、小さなおもちゃや電池などを誤って飲み込まないよう注意が必要です。

検査と診断

医師による問診や聴診、各種検査の結果により診断が行われます。血液検査のIgE(アイジーイー)抗体検査や、皮膚テストなどでアレルギーを調べ、呼吸器機能検査で呼吸状態を評価します。また、他の病気との鑑別として喀痰(かくたん)検査、レントゲン撮影などが必要に応じて実施されます。

治療と対処

治療の目標は、日常生活で発作がおこらないようにコントロールすることです。ひとたび気道が収縮して狭くなり、元に戻らない状態(リモデリング)におちいると、重症化を招きます。状態が軽いうちにできるだけ早く気道の炎症を抑えることが重要です。

発作を予防する

ぜん息発作を予防する薬はコントローラーといわれ、吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬の内服などがあります。吸入ステロイドは全身ではなく、局所に作用するため副作用はほとんどありません。

また、症状の重症度に応じて6歳以上の場合は、皮下注射を実施する場合があります。

発作時がおこった場合

ぜん息発作時に使う薬はリリーバーといわれ、狭くなった気道を広げる気管支拡張薬β2(ベータツー)刺激薬を使用します。ただし、貼り薬は吸収時間が長いため発作時には不適切です。

発作時は以下のような対応を行うと苦痛の軽減につながります。

  • 薬物使用:発作止めの吸入や内服を使用する
  • 腹式呼吸:横隔膜を使った肺に負担をかけない効率的な呼吸法により、呼吸困難が軽減する
  • 水分摂取:少量ずつ水分を摂取することで脱水が予防できる
  • 痰を出させる:手のひらに水をためるように指をまるめて背中を少したたく方法(タッピング)により、たんがでやすくなり、呼吸が楽になる

喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が軽い小~中発作時は吸入や内服を行い、反応を確認します。症状が強い大発作の場合は薬物使用後、速やかな医療機関の受診が必要です。

日常生活の注意

気道に炎症は続いているため、刺激で発作を起こさないよう日常生活に注意をしましょう。

薬を正しく使用する

ぜん息の治療は薬物療法が中心となるため、医療機関への定期受診が必要です。発作が頻繁に起こる場合は治療のステップアップが行われます。

主な治療薬である吸入は、子供の年齢によっては怖がることも考えられます。この場合は、親が手技を見せる、楽しみながら取り組めるようにするなどの工夫が必要です。

なお、吸入薬の影響で、口の中にカビが発生するカンジダ症になることがあります。吸入後は水分摂取やうがいを行うことで予防につながります。口の中に異常があれば医師に相談し、くれぐれも自己判断で市販の口内炎薬を使わないようにしましょう。市販薬に含まれる成分がカンジダ症に逆効果となる可能性があります。

環境整備を行う

小児ぜん息の原因は、アレルギーの場合が多く、アレルゲンをできるだけ取り除くことが大切です。

ダニの予防にはこまめな掃除を心がけましょう。ペットの飼育には注意が必要で、室内で飼わない、または、寝室にペットを入れないなどの工夫が必要です。

また、大気汚染の影響で症状が悪化する場合もあります。外出時にはマスクを着用し、不要な外出を控えるなとの対策をしてください。

なお、家族の喫煙はぜん息の症状悪化をきたす明確な原因です。喫煙者のはく息にも有害物質が含まれ、子供に影響を及ぼしてしまいます。

自己管理を促す

年齢に応じて子供自身が理解できるような働きかけが必要です。

はいた息で呼吸状態を客観的に評価するピークフローの測定や、ぜん息日記を記入するなどお子さん自身が病気について理解できるよう取り組みましょう。

なお、発作時にも有効な腹式呼吸を実践するにはコツが必要で、普段から練習しておく必要があります。

運動をして体力をつける

運動により喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難がおこる「運動誘発ぜん息」は、運動により呼吸数が増加し、気道が乾燥することで発作が誘発されると考えられています。小さなお子さんでは大泣きしたり、はしゃぎすぎたりしても発作がおこることがあります。

運動前に吸入や内服を行う、十分なウォーミングアップ、気道の乾燥を防ぐためにマスクを着用するなどの予防法を実践しましょう。少しの刺激で発作をおこさないよう、日頃から運動を行い、体力をつけておくことが大切です。

取り入れやすい運動は、競技でないゆっくりと行えるものがよいでしょう。湿度が保たれた環境の水泳やウォーキングなどがおすすめです。お子さん自身が好きなスポーツをすると、長く続けることができ、心理面でもメリットがあります。

なお、運動をして息苦しさを感じた場合は、速やかに運動を中断し腹式呼吸を行うと、症状の改善につながります。

災害時対策をする

災害時に備え、すぐ薬が持ち出せるように準備しておくことが大切です。また、現在使用している治療薬や発作の頻度についても説明ができるようにしておきましょう。

避難所生活を余儀なくされると、環境が激変します。タバコの煙はもちろん、たき火などの煙も原因になるため、近づかないようにしてください。様々な心理的ストレスが症状悪化につながることもあり、日頃から発作の対処法を知っておくことが重要です。

まとめ

気管支喘息は、空気の通る道(気道)に炎症がおこり、呼吸困難をおこします。

症状がよくなったからといって治療を中断すると、気道が収縮して狭くなり、元に戻らない状態(リモデリング)におちいる可能性があります。

定期的に受診し、日常生活で発作が起こらないように病気をコントロールすることが大切です。

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カテゴリー:通年の子供の病気  投稿日:2024-05-31

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