急性喉頭蓋炎とは?原因や治療法・見逃してはならないサインを医師が解説
急性喉頭蓋炎とは
急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋(こうとうがい)という、のどぼとけの上にあるフタのような構造とその周囲の組織が急激に腫れて炎症を起こす病態です。
以前は主に小児にみられた病気でしたが、現在では成人での発症が多くなっています。
急性喉頭蓋炎は、重症になってしまうと気道、つまり空気の通り道の閉塞により、命に関わる状態に至る可能性があります。
今回の記事では、急性喉頭蓋炎の原因や治療法、見逃してはならないサインを解説していきます。
急性喉頭蓋炎の原因
急性喉頭蓋炎の主な原因は細菌感染です。特に、インフルエンザ菌b型(Hib)が有名です。しかし、Hibワクチンの普及により、インフルエンザ菌によるものに加え、現在では他の細菌やウイルスも原因として考えられています。例えば、肺炎球菌や黄色ぶどう球菌、肺炎桿菌、β溶血性レンサ球菌などの他の細菌も関与することがあります。また、ウイルス性の喉頭蓋炎も報告されており、風邪やインフルエンザウイルスが原因となることもあります。
細菌やウイルス感染によって、声門(せいもん)という声を出すために大切な構造の上が炎症を起こし、その後周囲にも炎症が広がっていきます。
急性喉頭蓋炎の疫学
急性喉頭蓋炎は、Hibワクチン導入前は主に5歳以下の小児に多く見られました。しかし、ワクチン導入後は発生率が大幅に減少しました。今では、まれに成人でも発症することがあります。
成人の場合、免疫力の低下や慢性疾患の存在がリスクファクターとなることがあります。また、喫煙やアルコールの摂取も喉頭蓋炎の発症リスクを高めるとされています。
男女の比率としては、日本では2〜3:1と男性に多く、また、年齢分布としては50歳代に多いとされています。また、急性喉頭蓋炎が好発する季節は、夏季にやや多いという報告もあります。
急性喉頭蓋炎の診断
急性喉頭蓋炎の診断は、主に臨床症状と喉の内視鏡検査により行われます。
典型的な症状には、急激な発熱、声のかすれ、唾液の増加、嚥下困難、呼吸困難などがあります。特に、小児の場合には症状が突然に発生し、発症してから数時間以内に窒息に陥ってしまうことがあります。
内視鏡検査では、腫れた喉頭蓋と声帯周囲の炎症が確認されます。しかし、直接喉頭蓋を見る検査には、小児の場合には気道が完全に閉塞してしまうおそれもあるため、手術室など、救急対応が可能な場所で行われるべきとされています。
血液検査や喉の培養検査も行われることがあり、感染の原因を特定するために重要です。
急性喉頭蓋炎の重症度分類にはさまざまなものがあります。その中でも、菊池らの分類というものは、喉頭蓋の腫れの程度と呼吸困難があるかどうかの2点に注目しています。
- Ⅰ期:喉頭蓋の腫脹が舌面のみに認められるもの
- Ⅱ期:喉頭蓋の腫脹が舌面から喉頭面に及んでいるもの
- Ⅲ期:呼吸困難を伴うもの。さらにⅢ期を症状発現から呼吸困難が生じるまでの時間が1日未満の劇症型と,1日以上であった非劇症型に分類
この分類は現在最もよく使用される分類法の一つで、たいへん分かりやすい分類法です。
急性喉頭蓋炎の治療法
急性喉頭蓋炎の治療には、抗菌薬の投与と気道の確保が必要です。重症の場合は、緊急の気管挿管や気管切開が行われることもあります。ステロイド薬が腫れを減らすために使用されることもあります。
また、酸素療法や輸液治療も必要な場合があります。早期の診断と適切な治療が重要であり、症状が現れたらすぐに医療機関を受診することが大切です。
急性喉頭蓋炎を見逃さないためのポイント
さて、ここからは急性喉頭蓋炎を見逃さないためのポイントについて解説していきましょう。
急性喉頭蓋炎は急速に進行するため、以下のポイントに注意して早期に発見することが重要です。
- 急激な発熱と喉の痛みを伴う呼吸困難の発生
- 声がかすれたり、喉が痛いために水や食べ物が飲み込めなかったりする(嚥下困難:えんげこんなん)
- 唾液の増加や、口を開け下顎を突き出し、首を伸ばした前のめりの姿勢(三点支持という姿勢)になる
- 小児の場合は、突然落ち着きが無くなったりイライラしたりする
- 呼吸の際の喘鳴やチアノーゼ(青白い肌色)の出現
これらのサインが見られた場合は、迅速に医療機関への受診が必要です。特に、呼吸困難が見られる場合は、緊急性が高いため、すぐに救急車を呼ぶ必要もあります。
まとめ
急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋とその周囲の組織の急激な腫れと炎症を特徴とする病態であり、重症化すると命に関わる危険性があります。そのため、症状の早期発見と迅速な治療が非常に重要です。特に、小児や免疫力が低下している成人はリスクが高いため、注意が必要です。喉の痛みや呼吸困難などの症状が現れたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
急性喉頭蓋炎は小児だけでなく、成人でもみられる病気です。手遅れにならないように、この記事で解説したようなポイントを参考にしてみてくださいね。
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カテゴリー:喉の病気 投稿日:2024-05-31
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