耳下腺腫瘍とは?症状や治療について解説
耳下腺腫瘍は、耳下腺という唾液腺に発生する腫瘍であり、良性と悪性の両方が存在します。
一般の方々に向けて、耳下腺腫瘍の基本的な情報、症状、診断方法、治療法、よくある質問についてわかりやすく解説します。
今回の記事によって、耳下腺腫瘍に関する理解を深め、適切な対応方法を知っていただければ幸いです。
耳下腺腫瘍とは?
耳下腺は、耳の下に位置する唾液腺の一つで、口腔内の湿潤を保ち、食事中に消化を助ける重要な役割を果たしています。
耳下腺腫瘍とは、この耳下腺に発生する腫瘍のことを指します。
耳下腺腫瘍には、良性と悪性のものがあり、2017年WHO分類では、悪性腫瘍は21(亜分類をいれて23)、良性腫瘍は11種類となっています。
耳下腺腫瘍の中では、良性が圧倒的に多くみられます(約10:1)。
そして、良性腫瘍の中で最も一般的なのは多形腺腫やワルチン腫瘍といわれるものです。
これらはゆっくりと成長し、通常は痛みを伴わないしこりとして現れます。
一方、悪性腫瘍には耳下腺がんが含まれます。
これは早期発見が難しく、進行すると他の組織に浸潤しやすい特性を持っています。
悪性腫瘍はかなりまれながんであり、1年間に新たに耳下腺がんだと診断される人は、人口10万人あたり0.6人というデータもあります。
症状
耳下腺腫瘍の症状は、腫瘍の種類や大きさによって異なります。以下に主な症状を挙げます。
- 耳下部の腫れ:最も一般的な症状で、耳の下や顎の近くにしこりが感じられることがあります。
- 顔のしびれや痛み:悪性腫瘍の場合、顔面神経に影響を及ぼし、しびれや痛みを引き起こすことがあります。
- 唾液の分泌異常:唾液の量が減少したり、逆に増加したりすることがあります。
- その他の症状:悪性腫瘍の場合、体重減少や疲労感などの全身症状が現れることがあります。
診断方法
耳下腺腫瘍の診断には、以下の方法が用いられます。
- 診察と問診:最初に医師が患者の症状について詳しく尋ね、触診によってしこりの有無を確認します。
- 画像診断:腫瘍の大きさや位置を詳しく調べるために、超音波検査、CTスキャン、MRIが行われます。これにより、腫瘍の性質をある程度把握することができます。
- 生検:最終的な診断には、生検が不可欠です。穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)という検査では腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で病理検査を行います。これによって、良性か悪性かを確定します。
治療方法
耳下腺腫瘍の治療法は、腫瘍の性質によって異なります。
良性腫瘍の治療
耳下腺腫瘍は、良性であっても手術適応となる場合が少なくありません。
一番多くみられる多形腺腫は、一般的に大きくなる傾向があることや、悪性化する可能性があるため、一般的に手術の対象となります。
ワルチン腫瘍であるという確証が得られた場合には、見た目のことを気にしないのであれば経過観察という選択肢もあります。
また、多形腺腫やワルチン腫瘍であると確定診断がつかない場合にも、手術の方針となります。
悪性腫瘍の治療
悪性腫瘍の場合には、以下のような治療方法があります。
- 手術:悪性腫瘍の場合、腫瘍と周囲の組織を広範囲に切除する手術が行われます。
再発防止や顔面神経の温存、唾液瘻(だえきろう)の発生防止、唾液機能の温存などを考慮して手術が行われます。 - 放射線療法:手術後や手術が難しい場合に、放射線を使って腫瘍を縮小させたり、残存するがん細胞を除去します。
- 化学療法:抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃する治療法です。進行がんの場合に適用されることが多いです。しかし、がんに対しては今のところ有用でない場合が多いとされています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 耳下腺腫瘍は遺伝しますか?
A. 多くの場合、耳下腺腫瘍は遺伝しませんが、一部の遺伝的要因が影響することもあります。家族歴がある場合は、定期的な検診が推奨されます。
Q2. 良性腫瘍が悪性に変わることはありますか?
A. 良性腫瘍が悪性に変わることは非常に稀ですが、定期的な検診が重要です。特に腫瘍が急激に大きくなる場合は注意が必要です。
Q3. 手術後の回復期間はどのくらいですか?
A. 回復期間は手術の範囲や患者の健康状態によりますが、一般的には数週間から数ヶ月です。手術後のケアやリハビリが重要です。
Q4. 生活習慣の改善で予防できますか?
A. 健康的な生活習慣は全般的な健康維持に寄与しますが、耳下腺腫瘍の予防には直接的な影響はないとされています。定期的な健康診断が重要です。
Q5. 再発のリスクはどの程度ありますか?
A. 良性腫瘍の場合、再発のリスクは低いですが、悪性腫瘍の場合は再発の可能性があるため、定期的なフォローアップが重要です。
まとめ
耳下腺腫瘍は早期発見と適切な治療が重要です。
日頃から健康に注意し、耳の前や耳の下を触った時にしこりがあるといった場合には、早めに医師に相談しましょう。
また痛みがあったり、腫瘤が大きくなったり、顔の麻痺といった症状が出てきた場合には早急に耳鼻科医の診察を受けましょう。
早期発見、早期治療によって治療の選択肢が広がり、予後が改善する可能性が高まります。
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カテゴリー:喉の病気 投稿日:2024-08-12
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