扁桃周囲膿瘍は放置したら危険!扁桃周囲膿瘍の症状・原因・治療法について医師が解説
はじめに
「扁桃周囲膿瘍」とは、喉の奥の扁桃に細菌が感染し、膿がたまる病気です。主にものを飲み込むときに喉に強い痛みが生じ、治療が遅れると小児では致命的になってしまうこともあります。
今回の記事では、扁桃周囲膿瘍の症状や原因、治療法について解説していきます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
扁桃周囲膿瘍とは
扁桃周囲膿瘍は、扁桃の周囲に膿が溜まる感染症です。扁桃炎が悪化することで発生します。
扁桃は、被膜(ひまく)という構造でおおわれています。激しい炎症が起こり、この被膜構造を超えてしまうと、扁桃と咽頭収縮筋(いんとうしゅうしゅくきん)との間に膿瘍(のうよう)、つまり膿のかたまりができてしまいます。これが、扁桃周囲膿瘍です。
ただし、明らかな扁桃腺炎の症状がなくても、扁桃周囲膿瘍になってしまうこともあります。
20才代から40才代に多くみられ、子供や老人は少ないとされています。また、性別としては、男性にやや多いです。
扁桃周囲膿瘍は放置すると、呼吸障害や敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
また、免疫力が低下していない場合には子供が扁桃周囲膿瘍にかかることはほとんどないともされていますが、子供に起こった場合には気道、つまり空気の通り道を防いでしまう可能性があります。そのため、症状について理解しておくことは大切です。
扁桃周囲膿瘍の症状
扁桃周囲膿瘍の症状は、以下のようなものになります。
のどの激しい痛み
通常、痛みは片側の扁桃に限局、つまり片側だけに現れ、飲み込むときに悪化します。
発熱
38°C以上の発熱がよく見られます。
開口障害
膿瘍そのもの、もしくは膿が溜まることによる痛みのために口を大きく開けることが困難になります。
唾液の増加
痛みによって飲み込むことが難しくなるため、唾液がたまります。
悪臭を伴う口臭
膿による悪臭が口臭の原因となります。
声の変化
通称「ホットポテトボイス」と呼ばれる、こもったような声になります。
頸部のリンパ節の腫れ
感染によって頸部のリンパ節が腫れることがあります。
呼吸困難
炎症が喉まで達し、喉頭蓋(こうとうがい)という喉のフタのような構造の部分にまで浮腫が生じると、呼吸困難をきたすおそれもあります。
扁桃周囲膿瘍の原因
扁桃周囲膿瘍の原因は、扁桃に病原菌が感染し、周囲に感染が広がり、膿が溜まってしまうことです。
細菌感染
扁桃周囲膿瘍の最も一般的な原因は、扁桃に発生する細菌感染です。特に、A群β溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)がよく関与しています。この細菌は、通常の扁桃炎を引き起こすことがあります。また、嫌気性菌という、生きていくために酸素を必要としないタイプの細菌も扁桃周囲膿瘍に関連していることが多いです。
扁桃腺炎に対して適切な治療を受けられないと、感染が悪化して膿瘍を形成することがあります。
扁桃の慢性的な炎症
扁桃に繰り返し炎症が起こっている場合、感染が広がりやすくなり、膿瘍のリスクが高まります。
免疫系の弱さ
免疫系が弱い人は、扁桃周囲膿瘍を含むさまざまな感染症にかかりやすくなります。
扁桃周囲膿瘍の検査
診断は、主に以下の検査によって行われます。
視診
のどの奥を観察し、扁桃の腫れや膿の有無を確認します。
膿瘍がある側の扁桃が腫れ、口蓋垂(こうがいすい)が、膿瘍ができているために内側へずれている所見や、腫れている所見がみられることがあります。
触診
首周辺の腫れや硬さを確認します。リンパ節の腫れがないかをチェックできます。
血液検査
白血球数の増加やCRP値の上昇を確認します。
画像診断
必要な場合には、超音波やCTスキャンを用いて、膿瘍の大きさや位置を詳細に確認します。
針吸引
膿瘍が出来ていると思われる部位に、細い針を刺します。膿がひけてくるかどうかをチェックしたり、同時に膿瘍の中身を減らすことができたりと、診断と治療を兼ね備えるものです。
扁桃周囲膿瘍の治療
扁桃周囲膿瘍の治療は、膿の排出と抗生物質による感染のコントロールが中心です。
膿の排出
針や細いチューブを用いて膿を吸引するか、小さな切開をして膿を排出します。
抗生物質
感染を抑えるため、ペニシリンやクリンダマイシン、セファロスポリン、メトロニダゾールなどの抗生物質を投与します。通常は静脈内または経口で投与されます。
痛みの管理
鎮痛剤を用いて、痛みを和らげます。
水分補給
脱水を防ぐため、十分な水分を摂取することが重要です。
扁桃摘出術
重症の場合や膿の排出が困難な場合は、扁桃を摘出する手術(扁桃摘出術)が必要になることもあります。手術の利点は、手術後の痛みが比較的軽いことや、発熱などの全身症状も術後にすみやかに改善することなどがあります。一方、手術のリスクとしては、出血が起こることや、膿瘍の内容が漏れる、敗血症になる、あるいは喉頭浮腫(喉がむくんでしまうこと)などがあります。
まとめ
扁桃周囲膿瘍は、扁桃の感染症が悪化することで発生する急性の疾患です。重篤な合併症を防ぐためにも、激しい喉の痛みや発熱が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。適切な治療によって、多くの場合は回復が期待できます。食事がとれないほど喉の痛みがあったり、息苦しさがあったりするときは、耳鼻咽喉科や頭頸部外科を受診しましょう。
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カテゴリー:喉の病気 投稿日:2024-06-04
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