小児のアレルギー性鼻炎

小児のアレルギー性鼻炎の症状・検査・診断・治療

アレルギー性鼻炎とは

アレルギー性鼻炎とは、本来は体にとって無害なものを異物と認識し、排除しようと鼻粘膜が過剰に反応する病気です。

原因によって発症する時期が異なり、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の2種類に分けられます。

 通年性アレルギー性鼻炎:一年を通じて発症し、ダニ、カビ、ペットの毛などが原因。
 季節性アレルギー性鼻炎:特定の時期に発症し、スギ、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサなどの花粉が原因。

アレルギーがおこるしくみ

アレルギーの素因を持っている人の体にハウスダストやスギ花粉などの物質(抗原)が入ると、それに対応するため、体内でIgE(アイジーイー)抗体が作られます。

産生されたIgE抗体は血液中を流れて鼻の粘膜のマスト細胞(肥満細胞)につき、待機します。これを医学的には感作と呼び、この状態で発症するとは限りません。

感作された状態で再び抗原が侵入してくると体は異物と認識し、マスト細胞(肥満細胞)から化学伝達物資であるヒスタミンとロイコトリエンを放出します。ヒスタミンの神経刺激作用でくしゃみや鼻水をおこし、ロイコトリエンは血管を刺激して鼻づまりをひきおこすのです。

なお、マスト細胞はかゆみや炎症をおこす化学物質が多くつまっているため肥満細胞 とよばれることもありますが、体の肥満とは関係がありません。

子供のアレルギー性鼻炎

子供のアレルギー性鼻炎は低年齢化しており、飛散花粉数の増加や大気汚染、居住環境や食生活の変化、腸内細菌の変化などが要因とされています。

症状 

アレルギー性鼻炎の3大症状は、くしゃみ・鼻水(水様性)・鼻づまりです。子供の場合は症状がわかりにくいため、保護者の評価が診断に役立ちます。

鼻をかむことができないお子さんは鼻すすりで症状に気づくことがあるでしょう。鼻づまりは口呼吸、いびきとして現れ、鼻いじりによる鼻出血がおこることもあります。

鼻や目をこすることで鼻尖部の横にすじが入る、目の周りにクマができるなど顔面の変化を認めることがあります。

放置するとどうなるの?

アレルギー性鼻炎において、自然治癒は期待できません。成長するにつれて次々にアレルギー疾患にかかっていくことを「アレルギーマーチ」といい、進行させないための早期発見や治療の第一歩が大切です。

命に関わることはありませんが、鼻水や鼻づまりなどの不快な症状は、集中力や意欲の低下につながります。さらに慢性化による副鼻腔炎や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などを合併するおそれもあります。

アレルギー以外でも鼻炎はおこる

鼻炎がおこる原因はアレルギーだけではありません。感染症や寒冷刺激、たばこの煙や大気汚染物質、薬剤などが要因に挙げられます。また、ホルモンの影響でおこる鼻炎として妊娠性鼻炎 があります。この場合は原則として妊娠4カ月の半ばまでは薬物治療を避け、どうしても必要な場合に使用されるのが鼻噴霧用の薬物です。

検査と診断

正確な診断のためには問診が重要です。以下のような症状が参考になるため、医師に伝えるようにしましょう。

  • いつから始まったか(特定の季節におこっているか)
  • どのような症状があるか
  • 症状の強さ(日常生活に与える影響)
  • 他にアレルギーの病気はあるか、治療歴など
  • 家族にアレルギーの病気をもつ人がいるか

問診を基本として原因の特定につながっていきます。

アレルギーによるものか検査する

鼻炎の症状がアレルギーによるものか判断することが大切です。鼻鏡検査では、鼻粘膜や、鼻水の様子などを観察します。アレルギーの場合は鼻粘膜が青白く腫れますが、花粉飛散のピークや感染症の時に鼻粘膜は赤くなります。また、鼻水はアレルギー時にはサラサラの水様性で、ウイルス感染の場合は膿性鼻汁を示すのが特徴です。

鼻汁好酸球検査は、鼻水の中にいる好酸球(白血球の一種)を調べるものです。実際にアレルギー反応が起こっているかどうかがわかりますが、花粉の季節外や鼻水が少ないなど鼻の症状がなければ陰性になる可能性があります。

状況に応じて鼻のレントゲン撮影や内視鏡の一種である鼻腔ファイバーを使用した検査が行われます。これにより、副鼻腔炎やアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織の塊)肥大との鑑別が可能です。なお、細くて柔らかい鼻腔ファイバーが開発されており、0歳から使用できるものがあります。

検査結果をふまえて鼻炎がアレルギーによるものと判明すれば、次は原因となる物質(アレルゲン)が何かを特定していきます。

抗原(アレルゲン)を調べる

アレルギーをひきおこす原因物質(アレルゲン)は抗原とよばれ、それらを特定することで治療法が変わってきます。

皮膚テスト

直接アレルゲンを接触させることで皮膚の反応をみる検査があります。プリックテストは、アレルゲンの液体を腕にたらして、専用の針などで皮膚の表面に傷をつけます。皮内テストは、皮下の薄い組織に水泡をつくるように注射をするもので、いずれも皮膚が赤く反応すると陽性です。すぐに結果がわかる検査ですが、すべての施設で行える検査ではありません。

血液検査

血液検査を行うとアレルギー体質であるかが判明し、なかでも血清特異的IgE(アイジーイー)抗体検査では、何のアレルゲンに反応しているのかがわかります。子供には直接血管に針を刺さず、少量の血液だけで検査を行う方法もあります。

血液検査の数値が高いからといって必ずしも発症するわけではありません。一度に多くの項目を調べることができず、結果が出るまでに時間がかかる、高価であるなどデメリットもあります。

鼻誘発試験

鼻誘発試験とは、直接アレルゲンを鼻の粘膜にろ紙などでつけ、くしゃみの回数やかゆみ、鼻みずなどの反応をみるものです。現在のところハウスダストとブタクサのみ検査が可能で、スギ花粉症は調べられません。この検査は特定のアレルゲンに対して過敏症を誘発するため注意が必要です。子供の年齢や発育状況を考慮して行う必要があります。

治療

アレルギー性鼻炎に根治が期待できる唯一の方法はアレルゲン免疫療法のみとされています。その他は症状を軽減させる対症療法が行われます。

原因となる物質(アレルゲン)を取り除く

治療の基本は、体内に入るアレルゲンの量を減らすことです。室内ダニの除去や花粉の回避、犬や猫などのペットを飼うことは避けた方がよいでしょう。どうしてもペットを飼う場合には、屋外で飼育する、寝室には入れないなどの工夫が必要になります。

薬物療法

症状を軽減させるために薬物療法を行います。内服や点鼻などの方法があり、内服はシロップや噛んでのむチュアブルなど形態もさまざまなものがあります。

市販のものは対象年齢を確認するなど注意をしてください。ステロイド点鼻薬は2歳以下の子供が使用すると幼児呼吸抑制など副作用の危険があるため禁忌です。使ってはいけません 。また、点鼻薬を長期使用すると薬剤による鼻炎をひきおこすおそれがあります。

季節性アレルギー性鼻炎の場合は、花粉が飛ぶ前の初期治療が大切で、治療の開始時期についてはかかりつけ医に相談しましょう。

また、12歳以上のスギ花粉症で重症の場合は、オマリズマブ(商品名:ゾレア)の注射が実施できます。これは、IgE(アイジーイー)抗体に作用してマスト細胞(肥満細胞)との結合を妨げ、アレルギー反応の元を抑える薬です。使用する前には血液検査が必須で、血清IgE濃度や体重により投与量が決められます。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法は、減感作療法や脱感作療法ともいわれ、アレルゲンを少量ずつ投与し、免疫系が過剰な反応をおこさないようにするものです。皮下注射や舌の下に投与する舌下免疫療法はスギ花粉症とダニアレルギーにおける5歳以上の子供に実施されます。治療には数年必要で、即効性のある治療ではありません。

手術療法

鼻腔内の通気目的でレーザー光線を使用した手術は子供にも実施可能です。手術適応については、症状や年齢、本人の理解度などに応じて判断されます。

日常生活のポイント

毎日の生活が治療につながります。花粉症によく効くと紹介される民間療法については、科学的な根拠が示されていません。なかには安全性が危惧されるものもあるため注意が必要です。

なお、腸内環境を整えることはアレルギー症状によい影響を与えると注目されており、研究が期待されています。

鼻のケア

鼻粘膜が腫れているため、鼻を強くかまないようにしましょう。鼻洗浄は有用ですが、子供の場合は肺に水が入ったり、中耳炎になったりする可能性があるため、嫌がる場合は無理に行わないようにしてください。

マスクの着用や部屋の加湿は鼻粘膜の乾燥対策につながります。鼻づまりが苦しいときは、入浴やレンジで温めた蒸しタオルを鼻に当てるのも効果的です。温かい物を食べる、マグカップにお湯を入れて蒸気を吸わせるなど、やけどに注意しながら行ってください。

また、寝る時は副交感神経が優位となるため、鼻がつまりやすいです。赤ちゃんの場合は縦に抱く、布団の下にタオルや敷物を使用して上半身が高くなるような対策をしてみましょう。

目のケア

アレルギー症状がおこると目のかゆみに悩まされることがあります。花粉やホコリが付着している目の表面を流すことは有用ですが、水道水を使用すると細胞が傷つき、目の表面を守っている涙も洗い流してしまいます。また、カップを使用した洗眼液はまぶたについた花粉が目に入るおそれがあるため、人口涙液などで洗い流すような点眼が効果的です。かゆみが強いときは冷たいタオルや、タオルでくるんだ保冷剤を目にあてると症状が改善されます。

目に負担をかけないために、長時間のテレビやスマートフォンの使用には注意しましょう。

掃除の仕方に注意

症状をおこす原因のアレルゲンに注意が必要です。布団を干すとダニ対策が行えますが、花粉がつく可能性があるため、乾燥機を活用します。掃除機はゆっくり動かすなど掃除の仕方にも気をつけてください。

換気時にカーテンを全開にすると花粉が入り込むため、薄いカーテンをしたまま換気をして花粉の侵入を防ぎます。

なお、アレルゲンが付着しやすい布のソファは避けた方が無難です。ぬいぐるみや衣類もできるだけ毛羽立つものを避け表面はつるつるしたものを選んでください。

他のアレルギー反応に注意する

花粉症の患者がある特定の食べ物を食べると口のかゆみやのどの腫れなどをおこす場合があります。これは食品がアレルギーの成分に似ており、体が異物と判断するためです。「口腔アレルギー症候群」と呼ばれており、以下のような報告例があります。

  • シラカンバ:リンゴ、モモ
  • スギ:トマト
  • ブタクサ:スイカ、メロン

症状は、食後しばらくすると自然に軽快しますが、まれに重症化することもあります。花粉症を持つ人で、口の中に症状が見られる場合は医師に相談してください。

まとめ

アレルギー性鼻炎とは、侵入してきたアレルゲンを排除するために鼻粘膜が過剰に反応するものです。

発症時期により、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の2種類に分けられます。

放置すると、学習障害や気管支ぜんそくなどをひきおこす可能性があります。

治療の基本はできるだけアレルゲンを避けること。症状を抑える薬物を使用し、アレルゲン免疫療法、手術療法が行われる場合もあり、医師と相談して、適切な治療を受けましょう。

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カテゴリー:通年の子供の病気  投稿日:2024-05-30

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