お薬の基礎知識と上手に飲ませてあげる方法
お薬の作用
お子さんの体には、病気を予防したり病気から回復したりするための「自然治癒力」があります。
しかし、風邪をひいてしまうと「自然治癒力」が充分に機能しないこともあります。
病気や風邪になったときに、お子さんの「自然治癒力」を助けることがお薬の役割です。
お薬には主作用と副作用があります。
- 主作用:お薬の本来の目的である、病気や風邪の症状を軽くする作用です。
- 副作用:本来の目的以外の好ましくない作用です。皮膚にブツブツができたり、眠くなったりなど様々な作用があります。
お薬の飲み方によっては、副作用が出やすくなることもあるので、決められた用法(用量やタイミング)でお薬を使ってあげる必要があります。
お薬の種類
お薬は大きく次の3種類に分類されます。
- 内服薬:お口から飲むお薬です。胃や腸などの消化管を経由してお子さんの体に作用します。
- 外用薬:貼ったり塗ったりするお薬です。座薬や目薬なども外用薬に分類されます。
- 注射薬:体内に直接投与するお薬です。
お薬の種類によって、作用する機序が異なります。
そのため、お薬の種類によって決められた方法でお薬を使用するようにさせてあげましょう。
お薬の使用方法
お薬には用法(用量、タイミング)が決められています。
この項目では、用量とタイミングについてお伝えします。
お薬の用量
お子さんの体重やお薬の種類によって、用量が定められています。
お薬の用量を増やせば、その分効果が増えるわけではありません。
むしろ、副作用を引き起こすことがあり大変危険です。
自己判断で用量を決めることなく、決められた用量をお子さんに使用してあげましょう。
お薬のタイミング
飲み薬には決められた服用タイミングがあります。
それぞれの名称は次の通りです。
- 食前:食事1時間から30分前(胃に食べ物がないとき)
- 食後:食後30分以内(胃に食べ物があるとき)
- 食間:食事の2時間後(食事と食事の間。食事中ではない点に注意)
- 寝る前:寝る30分から1時間前
- 頓服(とんぷく):症状が出た時に内服(例:発熱や痛みがでたとき)
お薬の効果を最大限に発揮させるためにも、指定されたタイミングでお子さんへ服用するようにさせてあげましょう。
ただ、小さなお子さんは睡眠や食事の時間が定まらないこともあるため、ある程度の目安として捉えておくのが良いです。
お薬の副作用
お薬はお子さんの病気やけがを治療する際に用いられますが、副作用が出るリスクもあります。
重篤な場合にはアナフィラキシーショックが発現することもあるため注意が必要です。
※アナフィラキシーショック:アレルギー反応によって、血圧の低下、意識がはっきりしない、脱力をきたすような状態です。迅速に処置しないと生命に関わることがあります。
次のようなお子さんは、診察やお薬を処方されるときに注意が必要です。
- アレルギーのあるお子さん
- これまでにお薬で副作用が出たお子さん
- 他の病気で医師の治療を受けているお子さん
- 肝臓や腎臓に異常のあるお子さん
上記に該当する場合には、処方を受ける際に医師や薬剤師に伝えておくと安心です。
お薬を使用したお子さんに異常が現れた場合には、使用を中止して医師に相談してください。
その際には、次のことを伝えるようにしましょう。
- 使用したお薬の名称
- お薬の使用量
- お薬を服用している期間
- どのような症状が出たのか
お薬の保管方法
お薬を保管する場所に関して、次の3点に注意が必要です。
- お子さんが誤って飲むようなことを防止するために、お子さんの手の届く場所にお薬を置くことは控える
- 湿気のある場所、直射日光のあたる場所、高温の場所を避けて保管する
- 誤ってお薬を使用することを避けるために、お薬を食品と同じ場所に保管することは避ける
上手に飲ませてあげる方法
お子さんに上手にお薬を飲ませるには、工夫が必要です。
この項目では、お子さんにお薬を飲んでもらえる方法と注意点をお伝えします。
お薬を飲む環境を整える
まずは、お薬を飲ませることに、ご両親が神経質になりすぎないようにしましょう。
ご両親がお薬を飲まないお子さんにイライラしてしまうと「お薬=叱られる、いやなもの」と認識し、悪循環になってしまいます。
無理に飲ませようとせずに、時間をかけてお薬を飲ませてあげましょう。
お薬を飲めたら、ほめてあげたり、シールを貼ってあげたりして、次のお薬に肯定的な気持ちで臨めるようにしてあげるのが良いです。
ある程度お話ができる年齢のお子さんには、お薬の必要性をお話することも有効です。
- 風邪を治すために、お薬が必要であること
- 咳できつい思いをしなくて良いようにお薬をのむこと
など、お薬の必要性やメリットを伝え、前向きな気持ちにさせてあげましょう。
年代やお薬の種類ごとの上手な飲ませ方
乳児のお子さん
粉薬を少量の水分で溶かし、上あごや頬の裏側にこすりつけてあげます。
そして、白湯を入れておいた哺乳瓶の乳首を加えさせてあげることで上手に飲むことができます。
空腹時の方が満腹時よりも飲みやすく、服用の刺激による嘔吐も少ないです。
お子さんがお薬を飲みやすくするため、粉薬に甘いものを混ぜる方法があります。
この際、1歳未満のお子さんにハチミツを混ぜて与えるのは絶対に控えましょう。
ボツリヌス症という重篤な病気を発症させる危険性があります。
また、母乳やミルクで粉薬を溶かすこともできますが、あまり推奨されていません。
味に違和感を覚え、その後母乳やミルク嫌いになってしまう可能性があるためです。
幼児のお子さん
幼児のお子さんには次の方法で飲ませてあげましょう。
- 粉薬を少量の水分で溶かし、上あごや頬の裏側にこすりつけて水やジュースを飲ませる
- 少量の砂糖水を粉薬に混ぜてお団子状にして飲ませる
- 市販のゼリーに挟んで飲ませる
ジュースを飲ませる際には、味の違いを敏感に感じとってしまうため、普段飲まないものを飲ませてあげると上手く飲みやすいです。
お薬を激しく拒絶するお子さんに無理に飲ませると、嘔吐したり気管にお薬が入ったりすることがあります。
その際には、お子さんの気持ちを落ち着かせて、前向きな状態で飲ませてあげるようにしましょう。
シロップ製剤
お子さんが飲みやすいよう甘くなっていますが、この特有の甘さを嫌うお子さんもいます。
小さなお子さんには、スポイトやスプーンで口の中に入れてあげましょう。
味を嫌ってしまう場合には、1回分のお薬を少量のお水やジュースに混ぜて飲ませてあげるのも有効です。
シロップ製剤は雑菌が繁殖しやすいため、冷蔵庫で保管し、処方から1週間以上経過したものは飲ませないようにしてください。
カプセル製剤
小さなお子さんはカプセルを上手く飲み込めません。
そのため、5歳以上になるまでは、カプセル製剤は控えましょう。
カプセルを口の中に入れすぎてしまうとベタベタしてくっついてしまいます。
口の中に入れた後は、少し多めのお水で早めに飲み込ませてあげると安心です。
お薬の基礎知識と上手に飲ませてあげる方法に関するまとめ
この記事では次のことを解説しました。
- お薬の基礎知識
- お薬を上手に飲ませる方法
お子さんが病気や風邪になった際に、「自然治癒力」を助けることがお薬の役割です。
お薬には本来の目的である主作用に加えて副作用があります。
飲み方によって副作用が出やすくなることもあるので、決められた用法(用量やタイミング)でお薬を使ってあげることが必要です。
用量やタイミングを守ることがお子さんの安全につながるため、決められた用法でお薬を使用してくださいね。
お子さんにお薬を上手に飲ませてあげるためには、環境づくりが重要です。
お薬の種類やお子さんの年代によって上手に飲ませる方法が異なります。
お子さんの能力に合った方法でお薬を飲ませてあげるようにしましょう。
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カテゴリー:小児科での基礎知識 投稿日:2024-06-10
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