子どもの頭痛
子どもが「頭が痛い」と訴えると、保護者としてはとても心配になりますよね。
一方で、小さな子どもは自分の体調をうまく説明できないため、どのようなサインが「頭痛」を示しているのか判断が難しいこともあります。
また、子どもの頭痛には、「命に関わる可能性のある頭痛」と「命に関わらない頭痛」があります。
この記事では、小さな子どもに特有の頭痛のサインについて、頭痛の種類やその特徴、子どもが頭痛を起こしやすい主な疾患や状態、医療機関を受診するタイミングについて解説します。
ぜひ参考にしてください。
子どもの頭痛の特徴
頭痛は自覚症状なので、子どもたちが必ずしも「頭が痛い」という訴えで表現するかどうかはわかりません。
特に、言葉を十分に話せない乳幼児の場合には、頭痛以外に現れている症状やサインを、保護者が見逃さずに気づいてあげることが重要となります。
乳幼児の場合、頭痛を示唆する所見として以下のような様子が見られます。
- 不機嫌、顔をしかめる
- 頭を抑える、頭や顔を触る
- 頭を振る
何かしらの疾患で頭痛が起こっている場合は、頭痛以外にも特有の症状が見られるので、それらの症状と合わせて観察することが大切です。
命に関わる頭痛と、そうでない頭痛
主観的な症状である頭痛ですが、子ども・大人にかかわらず、「様子を見て良い頭痛(一次性頭痛)」と「原因となる疾患・状態がある頭痛(二次性頭痛)」にわけることができます。
基本的に、子どもの頭痛の多くを占めるのは一次性頭痛と言われています。
しかし、割合は少ないものの、重大な疾患の兆候である二次性頭痛の可能性もあるので注意が必要です。
様子を見ても良い頭痛の代表的なものには
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
逆に、何かしらの疾患が原因で生じる頭痛の代表的なものには
- 風邪やインフルエンザ
- 副鼻腔炎
- 髄膜炎
- 外傷性頭痛
特に、髄膜炎、外傷性頭痛、脳腫瘍は命に関わる頭痛となりますので、これらの疾患が疑われた際にはすぐに医療機関を受診することが重要です。
では、それぞれの頭痛について解説します。
片頭痛
子どもの頭痛の中で最も頻度が多いのが、片頭痛です。
特に小学校高学年から中学生にかけて増加します。
ストレスや睡眠不足、姿勢不良や長時間のデバイスの使用が頭痛を誘発する原因と考えられています。
大人にもよく見られる片頭痛ですが、子どもの片頭痛と大人の片頭痛では異なる特徴があります。
その点も含めて解説します。
症状の特徴 | 子ども | 大人 |
---|---|---|
痛みの部位 | 両側性(頭の両側に痛みを感じることが多い) | 片側性(頭の片側に痛みを感じることが多い) |
痛みの性質 | 非拍動性(鈍い痛み)または拍動性 | 拍動性(ズキンズキンと脈打つような痛み) |
痛みの持続時間 | 短時間(1~2時間程度) | 長時間(3~72時間) |
随伴症状 | 悪心・嘔吐、光や音への過敏症、腹痛が出やすい | 悪心・嘔吐、光や音への過敏症 |
前兆の有無 | 前兆がないことが多い | 前兆(視覚異常、しびれ)がある場合がある |
発症の頻度 | 少ないが周期的(発作間隔が不規則) | 発作の頻度は個人差が大きい |
症状の進行 | 成長とともに症状が変化し、成人型片頭痛へ移行可能 | 症状が持続的または悪化する場合がある |
【子どもの片頭痛の特徴】
- ズキズキと脈打つような(拍動性の)痛みよりも、非拍動性の鈍い痛みの場合も多い
- 頭の両側に出ることが多い
- 頭痛よりも悪心・嘔吐、腹痛が前面にでる(周期性嘔吐症候群、腹部片頭痛)
- 光・音・匂い、気圧の変化や人混みなどに対して過敏になることが多い
- 前兆はなく、持続時間は1〜2時間
片頭痛の性状は年齢とともに変化するとされているのですが、思春期以前の子どもの片頭痛は大人の片頭痛と異なり、「両側性」「短時間」「非拍動性」という特徴があります。
また、将来片頭痛に移行することが多い症候群(小児周期性症候群)があり、周期性嘔吐症や腹部片頭痛という症状があります。
このような症候群では、悪心・嘔吐・腹痛などの腹部症状が前面に現れます。
片頭痛は遺伝性による部分もありますが、睡眠不足による原因が大きいとされています。
まずは十分な睡眠時間が確保できているか生活を見直してみましょう。
また、片頭痛を引き起こす誘因(食品・光・匂いなど)が分かっている場合は、それを避けることも大切です。
学校で席の配置が変わると症状が軽減したという例もあるので、先生に相談してみるのも良いかもしれません。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は片頭痛に次いで多い頭痛で、思春期に多く見られます。
頭痛を引き起こす誘引としては、ストレスや睡眠不足、姿勢不良や長時間のデバイスの使用など片頭痛と重なります。
特に、ストレスや長時間の座位姿勢による頭部を支える筋肉の緊張は大きな原因と考えられています。
【緊張型頭痛の特徴】
- 両側性に締め付けられるような鈍い痛み、圧迫感や頭重感などの非拍動性の痛み
- 痛みの程度は軽度から中等度で、日常生活に大きな支障をきたすことは少ない
- 吐き気や嘔吐、光や音への過敏症は見られない
- 持続時間は比較的短いことが多く、数十分~数時間
片頭痛が発作的に生じる痛みに対して、緊張型頭痛は一日を通して慢性的にダラダラと続くことが多いとされています。
ストレスや、首や肩の筋肉の緊張が原因である場合が多いので、これらを解消することが頭痛解消に繋がります。
子どもがリフレッシュできる趣味や遊びの時間を設けることや、長時間デバイスを使用しないような工夫をしましょう。
肩や首の筋肉をほぐすために適度な運動やストレッチも効果的です。
また、きちんと睡眠時間が確保できているかも見直してみましょう。
風邪やインフルエンザ
風邪やインフルエンザに伴う頭痛は、感染による体の反応としてよく見られます。
頭痛が起こるメカニズムとしては、体温の上昇に伴って血管が拡張することや、鼻づまりによって鼻の奥が圧迫されること、感染時に体内で放出されるサイトカインという炎症性物質が痛みを引き起こすとされています。
【風邪やインフルエンザの症状】
- 発熱
- 鼻水・鼻づまり・くしゃみ
- 咳・喉の痛み
- 頭痛
- 全身のだるさ
風邪とインフルエンザでは症状の程度に差はありますが、一般的に風邪症状と言われる症状が現れます。
頭痛の症状も見られますが、この頭痛が風邪またはインフルエンザから来たものであろうということは保護者の方もわかりやすいのではないかと思います。
十分な水分補給と休息を心がけ、必要に応じて解熱鎮痛剤を使用しましょう。
感染症が治るとともに、頭痛も改善するでしょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)
鼻の奥の副鼻腔と呼ばれる空洞に炎症が起きる疾患です。
この炎症が原因で、鼻詰まりや鼻水、さらには頭痛などの症状が引き起こされます。
特に風邪を引いた後などに起こりやすく、子どもの場合、免疫力が未発達であることや、鼻腔が狭いために副鼻腔内に分泌物が溜まりやすいことが要因となって副鼻腔炎にかかりやすいとされています。
【副鼻腔炎の症状】
- 鼻詰まり、黄色や緑色の鼻水
- 咳
- 喉の痛みや声のかすれ
- 発熱
- 頭痛や顔面の圧迫感や痛み
【副鼻腔炎による頭痛の特徴】
- 痛みの場所: 額や頬、目の周囲、場合によっては後頭部に痛みを感じる
- 痛みの性質: 頭を前に傾けたり、動いたりすると痛みが増すことがある
頭痛は、副鼻腔の中に溜まった分泌物が周囲の組織を圧迫することで生じます。
このようなメカニズムから、副鼻腔炎は上記のような特徴的な頭痛と、鼻詰まりや鼻水とともに現れるため、比較的判断がつきやすいのではないかと思います。
副鼻腔炎の治療は原因や症状の重さによって異なりますが、対症療法、抗生物質の投与、薬物療法でも改善しない場合は副鼻腔手術が検討されることもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まる、または低呼吸の状態が繰り返し起こる疾患です。
子どもにおける主な原因は、アデノイドや扁桃肥大が多いとされていますが、その他に肥満やアレルギー性鼻炎も関係します。
これらの原因によって睡眠時に気道が塞がれると、呼吸が断続的に止まったり低呼吸状態になったりします。
このような状態が原因で、朝起きたときに頭痛を感じることがあります。
【睡眠時無呼吸症候群の症状】
- いびき: 大きないびきが特徴 呼吸が一時的に止まると静かになりますが、その後「ガクッ」と呼吸が再開する
- 日中の眠気や集中力の低下: 睡眠の質が低下するため、日中に眠気を感じたり、集中力が低下する
- 朝の頭痛: 前述のように、酸素不足により起床時に頭痛が起こる
- 頻繁な覚醒: 睡眠中に呼吸が止まり呼吸困難で目覚めることや、血中の二酸化炭素濃度の上昇に伴ってホルモンバランスが乱れることで夜間に尿意を催し目覚める
【睡眠時無呼吸症候群による頭痛の特徴】
- 朝方に感じることが多い: 睡眠中に十分な酸素が供給されないため、起床時に鈍い頭痛を感じることがある
- 締め付けられるような痛み: 睡眠中の酸素不足によって、緊張型頭痛に似た症状が見られることが多い
- 慢性的に続く: 無呼吸状態が繰り返されると、頭痛も慢性的になることがある
睡眠時無呼吸症候群は、子どもの成長や発達に大きな影響を及ぼす可能性があります。
睡眠中に十分な酸素が取り込めないと、成長ホルモンの分泌低下や学習能力の低下、集中力や注意力の欠如が生じることがあるからです。
また、慢性的な疲労や情緒不安定も見られ、生活の質が大きく損なわれることがあります。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
髄膜炎
髄膜炎は、脳や脊髄を覆う膜(髄膜)に炎症が生じる緊急性の高い疾患で、頭痛が重要な症状の一つとして現れます。
特に発熱と強い頭痛が同時に現れる場合や、首のこわばりや光に対して過敏な反応が見られる場合などは早急に医療機関を受診しましょう。
髄膜炎は、細菌やウイルス、真菌などの感染が原因で発症するのですが、特に細菌性髄膜炎では重症化しやすいと言われています。
治療の開始が遅れると命にかかわることや、後遺症が残ることもあるので、迅速な対応が必要です。
(ウイルス性髄膜炎の場合は比較的軽症である場合が多いですが、それでも適切な治療と経過観察が重要です)
新生児〜学童の年齢で好発しますが、年齢が低いほど症状が非典型的である場合が多いです。
乳幼児が発症した場合は症状を自分で伝えることができないので、保護者の観察が重要になります。
【髄膜炎の症状】
- 強い頭痛※
- 発熱
- 悪心・嘔吐※
- 意識の混濁
- 首のこわばり(頸部硬直)※
- けいれん(重症例の場合)
- 光や音に対して過敏になる
【小児や乳児に特有の所見】
- 哺乳力の低下:母乳やミルクをうまく飲めない
- ぐったりしている、なんとなく元気がない
- 大泉門の膨らみ:乳児の場合、頭蓋骨の隙間である大泉門が膨らむことがある
髄膜炎を発症すると、髄膜刺激症状と呼ばれる「頭痛」「悪心・嘔吐」「首のこわばり(頸部硬直)」が現れます。
しかし、子ども(特に乳幼児)はこの症状が不明瞭な場合が多くあるため、保護者が見逃さないためにも以下の点に注意しましょう。
- 発熱が続く、または急激に高熱が出る
- 元気がない、ぐったりしている
- 嘔吐や哺乳不良
- 不機嫌や過剰な啼泣
- けいれん
- 皮膚の色が悪い、青紫色(チアノーゼ)
髄膜炎は進行が早い場合があります。
少しでも疑わしい症状がある場合、「様子を見る」よりも「早めに受診する」ことが子どもの命と健康を守るために重要です。
また、髄膜炎は乳幼児期のワクチン接種によって予防が可能です。
接種スケジュールを確認し、適切に予防しましょう。
外傷性頭痛
外傷性頭痛は、頭部に直接的な衝撃や外傷を受けた後に発生する頭痛です。
子どもでは、転倒やスポーツ中の接触事故、遊びの最中の頭部打撲など、日常生活の中で外傷が起こる場面が多く見られます。
「すぐに泣き止んだから」「もう元気に遊びだしているから」といっても、その後の経過を注意深く観察しましょう。
外傷性頭痛では、頭部へのダメージの程度によって症状や症状の出現時期、対応が異なるからです。
【外傷性頭痛の症状】
- 頭痛
- 意識障害※※
- 記憶喪失
- 言葉の理解の低下、正確に話すことができなくなる※※
- 手足のしびれや感覚の鈍麻※※
- 筋肉反射や腱反射の減弱※※
- 目の動きや顔の表情の変化※※
- 姿勢や平衡感覚(バランス)の崩れ※※
【外傷性頭痛の特徴】
- 発生タイミング:頭部外傷後、すぐに頭痛が始まることもあれば、数時間から数日後に発生する場合もあります。
- 痛みの種類:頭部打撲部位に局所的な痛みが生じるほか、全体的な頭痛(締め付けられるような痛み、鈍痛)として感じる場合もあります。
- 伴う症状:頭痛に加え、吐き気・嘔吐、めまい、視覚異常、けいれん、意識障害などが見られることがあります。これらは脳の損傷や出血を示唆する可能性があり、緊急性が高いです。
軽度の頭部外傷で脳に損傷が起こり、短期間の意識障害や記憶喪失を伴うことがあります。
症状は一時的ですが、頭痛が数日から数週間続くこともあるでしょう。
外傷の程度がひどく、血管が損傷するほどのダメージを負った場合は、脳内で出血が起こることがあります。
重症例では意識障害や神経学的症状を伴います。
頭部外傷後において、神経学的所見が見られる場合というのは、何かしらの原因で脳が圧迫されている、または頭蓋骨内の圧が上がっている場合に現れます。
つまり、神経学的所見が見られるということは、外から見えない脳に何かしらの異常があることを知ることができる重要なサインと言えるのです。
【保護者が注意すべき点】
外傷後に「すぐに泣き止んだ」「元気に遊びだしている」といっても、わずかに脳内で出血しているリスクもあります。
外傷後時間が経過してから、次のような症状を示した場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
- 片側の手足が動かない、力が入らない。
- 話し方や言葉の理解に異常がある。
- 意識がもうろうとしている、急に意識を失った。
- 激しい頭痛、嘔吐、ふらつきがある。
- どこかいつもと違う。
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カテゴリー:よくある子供の症状 投稿日:2025-04-15
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