夜尿症

夜尿症(おねしょ)の原因と対策・治し方

夜尿症の定義

夜尿症の定義として「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」とされています。

夜尿症(おねしょ)はいつまで続くのか

多くのお子さまは小学生になるまでに、夜尿がなくなります。
しかし、夜尿がなくならないお子さまも一定数いらっしゃいます。
7歳児における夜尿症の有病率(夜のおねしょをしてしまう割合)は10%程度です。
その後、思春期までに年間14%ずつ自然と解消されていきます。
夜尿症のお子さまの1~2%は、15歳以上になっても夜尿が改善されません。
小学校までに夜尿がなくならないお子さまは、一度小児科か泌尿器科を受診させてあげましょう。

夜尿症への治療による効果

生活指導をはじめとする治療介入により、自然経過に比べて治癒率を2~3倍高めることができます。
適切に治療することで、治癒までの期間が短縮されます。
過去の報告によると、1年後の治癒率は、未介入で10~15%に対し、治療介入では50%です。
夜尿症のお子さまは、そうでないお子さまと比較して、容姿に自信がなくなり自尊心が低くなることが知られています。
夜尿症を解消することで自尊心が改善するため、お子さまの状況に応じて適切な治療介入をさせてあげましょう。

夜尿症の分類

一次性夜尿症と二次性夜尿症

夜尿が消失して6か月に満たない夜尿症は一次性夜尿症に分類されます。
これまで夜尿が消失して6か月以上経過したのち、夜尿症になるものは二次性夜尿症に分類されます。
二次性夜尿症では、生活上のストレス(近親者との死別や保護者の離婚、学校でのいじめ、大地震や交通事故によるトラウマなど)や精神疾患の併存率が高く、そちらを解消することにより治癒することがあります。
あるいは、他の疾患によって夜尿症が引き起こされることもあるため、お子さまの状況に応じて検査が必要になります。

単一症候性夜尿症と非単一症候性夜尿症

昼間に次のような症状がある場合には、非単一性夜尿症と分類されます。

  • 覚醒時の尿失禁
  • 尿意切迫感(急に起こる・我慢することが困難な強い尿意)
  • 排泄困難
  • 排尿回数の過小(1日3回以下)または過多(1日8回以上)

非単一性夜尿症でない場合には、単一性夜尿に分類され、後述の治療法が実施されます。

夜尿症の原因

夜尿症は「親のしつけの問題」、「お子さまの心理的な問題」と誤解されがちですが、これらは誤りです。
夜尿症の原因として、表に示す3つの原因があり、一つあるいは複数の要因が関与しています。

表 夜尿症の原因と特徴

原因 特徴
睡眠からの覚醒能力の欠如 夜尿症のお子さまは睡眠時に覚醒しにくいです。
適切なタイミングで覚醒できないことにより夜尿をしてしまいます。
膀胱の畜尿能力
(膀胱容量の減少)
膀胱に蓄えることのできる尿量が少ないタイプです。
畜尿できる容量を超えると夜尿をしてしまいます。
夜間の尿の生成
(夜間多尿)
夜間の尿量が多いタイプです。
多尿により畜尿可能な量を超過してしまい、夜尿をしてしまいます。

夜尿症のお子さまには尿意があっても目覚めない覚醒能力の欠如が根底にあります。
それに加えて、膀胱容量の減少や夜間多尿が要因として考えられています。

夜尿症の初期診療

この項目では、夜尿症の診療に必要な問診内容や治療方法を紹介します。
なお、昼間に尿失禁のある非単一性夜尿症の場合には治療のアプローチが異なります。
ここでは、夜尿のみが問題となっている単一性夜尿症に対する治療方法をご紹介します。

問診で医師に伝えるべきこと

夜尿症では、お子さまやそのご両親からの問診が非常に重要です。
診察の際には、次の項目を医師にお伝えください。

  • 夜尿の頻度
  • 昼間に尿失禁や尿意切迫感があるかどうか
  • 一日の排尿回数
  • 生活のリズム(夕食時間、就寝・起床時間)
  • 習い事の有無
  • 便秘の有無

生活指導と行動療法

基本的には、生活指導と行動療法を第一に選択します。
具体的な内容は次の通りです。

  • 就寝前にトイレに行かせる
  • 夜間(睡眠2~3時間前)における水分摂取量の制限
  • 塩分の制限
  • 夕方以降の牛乳および乳製品、タンパク質、糖分、カフェインを含む食品の制限

生活指導の効果が認められない場合に、投薬(デスモプレシン)やアラーム療法が選択されます。
投薬とアラーム療法のどちらで治療を進めていくのかについては、お子さまの状態や治療へのモチベーションによって変わるため、担当医とご相談の上決定することが望ましいです。

薬物療法とアラーム療法

生活指導と行動療法で治療の効果が得られない場合には、薬物療法やアラーム療法が選択されます。
この項目では、それぞれの特徴をお伝えします。

デスモプレシンによる治療

夜間の尿量を減少させる目的で、就寝前に抗利尿ホルモン剤を投与する治療法です。
経口薬あるいは点鼻スプレーとして投与することができます。
注意点としては、水中毒や低ナトリウム血症を防ぐために、就寝前2~3時間の水分制限が必要です。

アラーム療法

濡れたらアラームが鳴る機器を使用する治療法です。
夜尿直後にお子さまに強い覚醒刺激を与えます。
アラーム療法がなぜ効果的なのかは明らかでない部分がありますが、過去の研究にて次のような効果が得られることが分かっています。

  • 夜間の尿産出量の減少
  • 尿道括約筋の反射的収縮による排尿抑制
  • 睡眠中の機能的膀胱容量の増大

アラーム療法を継続することで、朝まで夜尿をしないようになり、睡眠時の膀胱容量が増加すると考えられています。
お子さまが自分で起きることができない場合には、家族の協力が必要です。
アラーム療法は週に3回以上の夜尿があるお子さまで、本人および保護者のモチベーションが高い場合に効果が高いと報告されています。

抗コリン薬による治療

抗コリン薬を単独で使用しても治療の有効性は確認されていません。
そのため、抗コリン薬を第一選択として使用することは推奨されていないのが現状です。

ただし、デスモプレシンと抗コリン薬を併用することで次のような効果があります。

  • デスモプレシン単独よりも夜尿の頻度を低下させる
  • デスモプレシン単独よりも早期に夜尿が改善する

抗コリン薬の副作用として、便秘があります。

三環系抗うつ薬による治療

デスモプレシンやアラーム療法で効果が認められない場合には、三環系抗うつ薬の投薬を検討します。
三環系抗うつ薬を投与することで夜尿症への有効性が確認されています。
この薬剤の重大な副作用は、過剰投与による心臓障害です。
お子さまに投与する前に、ご家族に不整脈の方や突然死をされた方がいないかどうかをあらかじめ確認し、場合に応じて追加の検査を行います。
副作用への懸念から、夜尿症への第一選択薬として推奨されていません。

夜尿症の検査

夜尿症を治療する際には、尿検査を実施します。
尿検査によって、次の病気が関与しているかどうかを調べます。

  • 糖尿病
  • 尿崩症(多尿により口が乾き、水分摂取が必要となる病気。お子さまでは夜尿と間違われやすい)
  • 尿路感染症(尿が作られて排出されるまでの経路に感染症が起こること)

初期診療では推奨されていませんが、場合によっては次の検査を行う場合もあります。

  • 血液検査
  • 超音波検査
  • 腹部単純X線検査
  • 排尿時膀胱尿道造影法
  • 尿量測定

宿泊行事への対応

短期間に限っては、夜間睡眠中に起こしてトイレに行かせることが夜尿を防止する有効な方法といわれています。
そのため、先生方にそっと起こしてもらうよう依頼しておくのも一つの手です。

別の手段としては、

  • 生活指導
  • 薬剤(デスモプレシン)を使用する
  • 紙おむつをはく(あるいは尿漏れパッドを使う)

等があげられます。

どの方法で対応する場合でも、お子さまと話し合って、お子さまが納得できるような方法を選んであげましょう。

夜尿症(おねしょ)に関するまとめ

夜尿症の定義として「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」とされています。

夜尿症の分類として、一次性夜尿症と二次性夜尿症があります。

  • 一次性夜尿症:夜尿が消失して6か月に満たない夜尿症
  • 二次性夜尿症:これまで夜尿が消失して6か月以上経過したのち、夜尿症になるもの

また、単一性夜尿症と非単一性夜尿症の分類は次の通りです。

  • 単一性夜尿症:夜間のおねしょのみのもの
  • 非単一性夜尿症:昼間に尿失禁や尿意切迫感があるもの

夜尿症の原因として「覚醒能力の欠如」、「膀胱容量の減少」、「夜間多尿」が考えられています。

単一性夜尿症の治し方として、まずは生活指導や行動療法が実施されます。
生活指導や行動療法で治癒しない場合には、デスモプレシンの投薬やアラーム療法にて治療が行われます。
どの治療方法がお子さまにとって最適なのかは、お子さまやご両親の治療へのモチベーションや夜尿の状況に応じて異なりますので、担当医にご相談くださいね。

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カテゴリー:特殊な子供の病気  投稿日:2024-06-01

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