川﨑病

川崎病

川崎病とは?

川崎病は全身の血管に炎症が起きて、さまざまな症状が出る原因不明の病気です。
炎症によって心臓を栄養する冠動脈に瘤(血管のこぶ)を作り、その瘤内にできた血栓によって冠動脈が詰まると心筋梗塞を起こす場合があるため、早い段階から適切な治療が必要です。

2023年の報告によると、日本では毎年1万人以上の子どもが発症しており、中でも4歳以下(特に1歳前後)の乳幼児が89%を占めています。
性別では男児の方が多い傾向です。

1967年に川崎富作医師が最初に報告したため「川崎」の名がついています。

川崎病の症状と経過

川崎病には特徴的な6つの症状があります。下記のうち5つが当てはまると川崎病と診断されます。

  • 発熱
  • 両方の眼の充血
  • 唇や口の中の赤み(いちご舌、口からのどに連なる赤み)
  • 発疹(全身、BCG接種痕の発赤)
  • 手や足の変化
    (急性期:手足が硬く腫れる、手のひらや足の裏・指先の先端に赤み
    (回復期:指先から皮がむける)
  • 首のリンパ節の腫れ

上記の症状が5つ当てはまらなくても冠動脈瘤があると不全型川崎病と診断される場合もあるため、疑わしいときは早めに病院を受診してください。

全身の血管に炎症を起こすため、下記の症状が出る場合もあります。

  • 腹痛
  • 嘔吐、下痢
  • せき
  • 鼻水
  • 関節の痛み、腫れ

合併症

川崎病の重大な合併症は「冠動脈瘤」です。
心臓の筋肉に栄養を送っている冠動脈にこぶができるとその中に血栓ができ、冠動脈に血栓が詰まってしまうと心臓の筋肉は壊死してしまいます。
これを心筋梗塞と言い、死亡するリスクが高い状態です。

急性期

症状が出てから10日くらいまでが急性期で、特徴的な症状が多く現れます。
できるだけ早く診断し、冠動脈瘤の発生予防のために早期の治療開始が重要です。

回復期

急性期が終わり、約1か月経過するまでの時期が回復期です。
解熱して特徴的な症状が落ち着きますが、手足においては指先の皮がむけてきます。

遠隔期

回復期が終わると遠隔期です。
症状はなくなっていますが、冠動脈瘤の状態により血栓ができるのを抑えて心筋梗塞を予防する飲み薬を継続していく場合があります。

川崎病の検査

川崎病の特徴的な症状を確認して診断をおこないますが、検査も実施して病状の程度の把握や確実な診断につなげます。

血液検査

血液検査により、血管炎や心臓の状態、血の固まりやすさなどを調べます。

心エコー

超音波で心臓の冠動脈の状態を調べます。検査に伴う痛みはありません

川崎病の治療

川崎病と診断されたらすぐに治療を開始して、血管の炎症を抑えて冠動脈瘤を予防することが重要です。
一般的なのはアスピリン療法と免疫グロブリン療法で、症状が重い場合はステロイドの併用やそのほかの薬を追加します。
それぞれ詳しく解説します

アスピリン療法

血管の炎症を抑え、血を固まりにくくさせて血栓を予防する効果がある薬です。
熱を下げる作用もあるため2〜3日で熱が下がり、ほかの血管の炎症による症状も落ち着いてきます。
冠動脈瘤の予防に役立ちます。

血を固まりにくくさせる作用によって、ケガしたときなどに血が止まりにくくなるため注意が必要です。

2〜3か月継続して飲み続けます。

免疫グロブリン療法

血液から成分を抽出した免疫グロブリン(γグロブリン)製剤を、1〜2日かけて点滴します。
アスピリン療法だけをおこなうよりも冠動脈瘤のできる確率が下がるため、とても有効な治療として90%以上の患児に実施されています。
輸血と同じ扱いのため書類上の同意も必要です。

ステロイド併用療法

血管の炎症が強い場合、炎症を抑える効果のあるステロイドの点滴を、免疫グロブリンと併用します。

抗TNF-α薬

TNF-αは炎症に関係するサイトカインの一種で、その働きを抑えるための薬を点滴して炎症を抑えます。使用するのは急性期のみです。

シクロスポリン

シクロスポリンは体内の過剰な免疫反応を抑える薬で、炎症を抑える働きをします。
症状が重い場合に免疫グロブリン療法と併用すると冠動脈瘤の発生のリスクを減らせます。

血漿交換

血液中の血漿(赤血球や白血球などの血球以外の成分)には炎症を起こす物質が含まれています。
血液を一旦体の外に取り出して、血漿のみ健康な人の血漿(アルブミン製剤)に置き換えて体に戻す方法が血漿交換です。

血液の出し入れには首や足の付け根から血管内に特殊な管を入れなければなりません。
機械と血管の管をつなげて1日2時間程度、3〜6日連続で血漿交換をおこないます。

まとめ

川崎病は全身の血管に炎症を起こす原因不明の病気です。
重大な合併症には冠動脈瘤があり、瘤で形成した血栓が詰まって心筋梗塞を起こし死亡するリスクを持ち合わせています。
発熱や眼の充血、口の発赤、全身の発疹(BCG接種痕の発赤)、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れといった症状があり、5つ以上該当すれば川崎病と診断されます。

診断後すぐに免疫グロブリン療法とアスピリン療法をおこなって血管の炎症を抑え、冠動脈瘤の発生を予防するのが大変重要です。
血管の炎症が強い場合には、ステロイドやシクロスポリンなどの併用、血漿交換が追加されます。

川崎病を疑う症状があれば、すぐに小児科がある病院を受診しましょう。
早い段階で治療を開始すれば冠動脈瘤の発生率が下がります。

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カテゴリー:特殊な子供の病気  投稿日:2024-10-07

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