【おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の症状・診断・治療】
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは
- おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、主に唾液や呼吸器分泌物を介して人から人へと伝染します。
- 3〜6歳頃の幼児に好発しますが、大人も感染することがあります。
- 主な症状は、耳下腺(耳の下側、えら部分)の腫れで、発熱や嚥下痛を伴うこともあります。
- おたふくかぜに感染すると、無菌性髄膜炎、膵炎、睾丸炎などの合併症を発症することがあります。この合併症は子どもよりも大人の感染者に見られることが多いとされています。
- おたふくかぜには特効薬があるわけではなく、現れている症状に対する対症療法を行いながら、自然治癒によって症状がなくなるのを待ちます。合併症を起こさなければ1週間程度で自然に回復します。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の症状
おたふくかぜは、2週間程の潜伏期間を経て発症します。
主症状は以下の症状です。
- 両側、または、片側の耳下腺の腫れ
- 発熱
- 疼痛
ワクチン接種の有無によって症状の程度は異なります。
ワクチン接種している場合は、症状が軽度で済むことが多いです。
具体的には、腫れや痛みが少なく、発熱が低いか全くないこともあります。
一方で、ワクチンを受けていない場合は、腫れや痛みがより強く出ることが一般的で、発熱も高くなりがちです。
また、感染しても症状が見られない「不顕性感染」という場合もあります。
通常であれば、唾液中や尿中へのウイルスの排出が発症後しばらく続き、5日程度で感染力が弱まります。
しかし、不顕性感染の場合、本人も感染していることに気づいていないので、知らないうちに周囲に感染を広げてしまうということになります。
子どもが感染した場合は約1/3が、成人の場合は大部分が不顕性感染となると言われています。
おたふくかぜは、多くの場合軽症で済むものの、ウイルスが体の他の部分に影響を及ぼすといくつかの合併症を引き起こすことがあります。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の合併症
おたふくかぜの合併症は、場合によっては重症化する可能性があります。
主な合併症には以下のようなものがあります。
- 無菌性髄膜炎
- 膵炎
- 睾丸炎
- 卵巣炎
- 難聴
【無菌性髄膜炎】
- 合併症の中では最も多い頻度で起こります(全体の約10%)
- ムンプスウイルスが脳や脊髄の膜に感染することで発生します。発熱、頭痛、首の硬直、嘔吐などの症状が現れることがあります。
【膵炎】
- 非常に強い腹痛や吐き気を伴い、血糖値の上昇を引き起こすことがあります。
- 合併症として起こる頻度はまれですが、重症化すると死亡することもあります。
【睾丸炎(精巣炎)】
- 小児のおたふく風邪ではほとんど見られない合併症ですが、思春期以降の男性がおたふくかぜに罹患した場合の約20〜30%が併発します。
- 将来の不妊症になるリスクを高める可能性があります。
【卵巣炎】
- おたふくかぜに感染した思春期以降の女性に発生しますが、睾丸炎に比べて発生率は低いです。
- 不妊に関しては、睾丸炎ほど明確な関連性は示唆されていません。
【難聴】
- 非常に稀ですが、発症した場合は多くの場合は永続的で重度の難聴となる可能性が高いです。
- 片側性になることが多いとされています。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の診断
おたふくかぜの診断は、主に現れている症状に基づいて行われ、血液検査や尿検査によって確定診断となります。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の治療法とワクチン
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の治療法
おたふくかぜに対する特効薬はなく、症状を軽減するための対症療法が行われます。
ワクチン接種の有無によって異なりますが、症状は1〜2週間で自然治癒します。
対症療法は具体的に、以下の方法があります。
- 鎮痛剤や解熱剤を用いて痛みや発熱を抑える
- 安静にして体力の回復を図る
- 十分な水分補給を行う
また、これらの対症療法と同時に合併症を併発していないか様子を観察することも重要になります。
特に、睾丸炎や髄膜炎が発生した場合には、入院治療が必要となることがあるので、合併症が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)のワクチン
おたふくかぜのワクチン接種は任意となりますが、生後12~15ヶ月の間に初回接種が行われ、4~6歳の間に追加接種が推奨されています。
ワクチン接種により、おたふくかぜの発症リスクを大幅に減らすことができ、また、発症した場合でも重症化を防ぐ効果があります。
任意接種のため基本的には自己負担となりますが、自治体によっては補助もあるので、各医療機関や自治体に確認しましょう。
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カテゴリー:特殊な子供の病気 投稿日:2024-11-07
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