風疹(ふうしん)
風疹とは?
風疹(ふうしん)は風疹ウイルスに感染して起こる急性ウイルス性発疹症です。
同じように発疹が出現する麻疹(はしか)よりも症状は軽い傾向にあり、発疹は3日程度で消失するため「三日ばしか」とも呼ばれます。
患者数は常に子供より大人に多く、2回の予防接種の普及により2020年以降の全体の患者数は激減し子供ではごくわずかです。
しかし予防接種をしていても免疫が十分でない場合があります。
さらに世界では流行している地域もあるため、訪日外国人観光客や海外旅行などにより持ち込まれた風疹ウイルスにお子さまがいつ感染するかは分かりません。
まわりの人へうつしやすい期間は発疹が出現する前後1週間ほどです。
麻疹よりも感染力は低いですが、1人の風疹患者から5〜7人に感染させる力を持っています。
潜伏期間
14〜21日
風疹の症状
風疹の主な症状は「発熱」「発疹」「リンパ節の腫れ」で、症状がない不顕性感染の人も15%位います。
そのほか、鼻水や目の充血、関節痛が見られる場合もあります。
関節痛は大人が75%で出現するものの、子供では20%にしか出現しません。
一般的に大人より子供の方が症状は軽い傾向です。
ここでは主な症状と合併症について説明します。
お子さまの症状と比べてみてください。
発熱
約半数の患者で熱が出ますが、麻疹とは違い39℃以上の高熱にはなりません。
発疹
発熱と同時に、淡くて赤い小さな発疹が顔や首から出始め全身に広がります。
発疹どうしで結びつかないため大きくはなりません。
そしておよそ3〜5日で色素沈着せず消失します。
リンパ節の腫れ
リンパ節の腫れは発疹が出る数日前から起こり、3〜6週間ほど続きます。
リンパ節が腫れる特徴的な場所は、耳のうしろや首、うしろ頭です。
合併症
風疹は予後が良好な病気ですが、入院が必要となる合併症をおこす場合もあります。
- 血小板減少性紫斑病 3,000〜5,000人に1人
- 急性脳炎 4,000〜6,000人に1人
上記のように確率は低いですがどのお子さまにも可能性はあります。
異常を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。
風疹の診断
3つの症状(発熱、発疹、リンパ節の腫れ)が揃えば風疹と診断できます。
しかし症状が揃わない場合、風疹と診断するのは難しいため採血を実施します。
採血では抗体や風疹ウイルス遺伝子の検出が可能です。
さらに2018年の「風しんに関する特定感染症予防指針」改正により全例でウイルス遺伝子検査をするようになったため、のどまたは鼻を綿棒で拭った液や尿も必要となる場合があります。
風疹の治療
風疹を治す治療はありません。
風疹によって起きる症状を和らげる対症療法をしていきます。
また風疹に感染したおそれがある場合に、発病を予防するための措置もありません。
家庭での対応
風疹は症状が軽い傾向にあるため、子供はぐったりせず元気な場合も多いでしょう。
元気であれば、室内でいつもと同じように過ごしてかまいません。
しかし、感染力が強い発疹が出ている間の外出は控えてください。
せきやくしゃみ、つばの飛び散りでまわりの人がうつる可能性があるため、風疹にかかったことのない家族がいる場合は、部屋を別にして可能ならマスクをつけた方がいいでしょう。
登園・登校停止期間
学校保健安全法において、保育園や幼稚園、学校の出席停止期間は「発疹が消失するまで」です。
そのほか同居人が感染者となった、風疹が発生した地域に住んでいるなど、風疹患者と接した疑いがある場合も医師の判断で出席停止となります。
風疹の感染経路
風疹患者のせきやくしゃみ、会話時のつばの飛び散りなどによる「飛沫感染」でうつります。
まわりの人に感染させる期間は、発疹が出る前後1週間位です。
1人の患者からまわりの人にうつす力は5〜7人で、インフルエンザの2〜3人よりも強力です。
風疹の予防
風疹ウイルスの感染を防ぐには、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)による予防接種が有効です。
現在2回の定期予防接種(公費負担)が実施されています。
- 1回目:1歳
- 2回目:小学校入学前1年間
1回接種するだけでは免疫をつけられない場合もあり、2回接種によって95%以上の人が免疫をつけられます。
2021年度の調査によると免疫を持っていない(抗体価8未満)小児の数は予防接種をしていない0歳児が一番多く、2回接種後の7歳では免疫のない児はいませんでした(図1)。
風疹ワクチンを接種していない0歳児に免疫を持っている児がいるのは、母親からの免疫が移行していると考えられています。
しかし月齢が上がるにつれて免疫は無くなっていくため、1歳になると同時のMRワクチン接種が重要です。
妊婦が風疹にかかると?
風疹は感染力の強い風疹ウイルスにより発症する病気で、一般的に子供の症状は軽く予後は良好な場合が多いです。
ですが問題となるのは妊婦への感染です。
妊娠20週位までに風疹に感染するとお腹の赤ちゃんにも感染して「先天性風疹症候群」を発症するリスクが高くなります。
先天性風疹症候群の主な症状
【3大症状】
- 心疾患
- 難聴
- 白内障
【そのほか】
- 色素性網膜剥離
- 発育遅滞
- 精神発達遅滞 など
お母さまが妊娠中の場合、妊婦健診で風疹に免疫があるとわかっていれば問題はありませんが、免疫が十分でないときは要注意です。産科の医師へ電話で相談してください。そしてお母さまだけでなく、ほかの妊婦や妊婦がいる家族などと接触するのも控えましょう。
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カテゴリー:春に多い子供の病気 投稿日:2024-11-23
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