小児のインフルエンザの症状や潜伏期間・隔離期間について
インフルエンザとは
インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することで発症する感染症です。
一般的な風邪よりも症状が強い特徴があります。
国内における流行期は冬季(12月~3月ごろ)です。
インフルエンザにかかっても、多くは自然と回復します。
ただし、2歳未満の小さな子供や基礎疾患のある子供は重症化することがあるため、注意が必要です。
インフルエンザの潜伏期間と症状
インフルエンザの潜伏期間
インフルエンザの潜伏期間は1~3日です。
インフルエンザウイルスは潜伏期間にも感染力を持つため、流行期には日ごろの感染防止対策が重要となります。/p>
インフルエンザの症状
インフルエンザにかかると、次の症状が急速に現れるのが特徴的です。
- 38℃以上の発熱
- 頭痛
- 全身の倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
上記に加えて、通常の風邪と同様の症状(のどの痛み、鼻汁、咳など)も見られます。
インフルエンザでは、解熱剤の種類によっては症状を悪化させてしまうことがあります。
こどもに投薬する前に医師へ相談してください
インフルエンザの合併症として、脳症、肺炎、心筋炎、中耳炎、熱性痙攣があります。
後述の症状がある場合には、速やかに医療機関を受診させましょう。
インフルエンザで重症化リスクの高い子供
次のお子さんがインフルエンザかかると重症化するリスクがあります。
- 5歳未満(特に2歳未満)のお子さん
- 心臓や肺に基礎疾患のあるお子さん
- 腎臓に基礎疾患のあるお子さ
- 免疫不全のお子さん
入院加療が必要になることもあるため、インフルエンザにかからないように感染防止対策を心がけましょう。
感染防止対策については、こちらをご覧ください。
インフルエンザで受診が必要な症状
次の症状がある場合には、改めて医療機関を受診させましょう。
- 発熱が5日以上続いている
- 水分を接種してもすぐに嘔吐する(脱水が疑われる)
- けいれんしている
- 唇や顔色が悪い
- 異常行動(言動)がある
インフルエンザの感染経路と感染防止対策
インフルエンザの感染経路
インフルエンザの感染経路は飛沫感染と接触感染です。
それぞれ、次のように感染します。
- 飛沫感染:インフルエンザに感染した人の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込むことで感染する
- 接触感染:ウイルスが付着した物を手で触り、そのまま口や鼻を触ることで感染する
インフルエンザにおける感染防止対策
インフルエンザの感染を防止するためには、次の対策が有効です。
有効な対策と効果を表に示します。
対策 | 対策の目的や効果 |
---|---|
ワクチン接種 (予防接種) |
発症の可能性を減らすこと、発症後の重症化を防止することが期待できます。 ただし、ワクチンを接種すればインフルエンザにかからなくなるわけではありません。 |
手洗い | 石鹸と流水による手洗いによってインフルエンザウイルスを除去できます。 インフルエンザウイルスにはアルコール消毒も有効です。 |
屋内の保湿 | 加湿器を使って湿度を50~60%に保ちましょう。 屋内の湿度が低くなると気道粘膜の防御機能が低下し感染しやすくなります。 |
人ごみを避ける | 流行期には人ごみに控えることでインフルエンザに感染しにくくなります。 やむを得ず外出する場合には、できるだけマスクを着用しましょう。 |
マスクの着用 | 飛沫感染の防止に有効です。 家庭内におけるインフルエンザの感染を減らすこともできます。 |
インフルエンザの診断(検査)方法
インフルエンザの診断には、鼻の奥に綿棒を入れて検体を採取する方法が一般的です。
この検査方法では、10~15分で結果が分かります。
発症直後はウイルス量が少なく誤って陰性となる場合があるため、発症24時間以降に検査することが推奨されています。
インフルエンザの流行期に、お子さんが発熱した場合であっても、24時間経過後に受診するようにしましょう。
インフルエンザによる隔離期間
学校保健安全法施行規則第19条によると、インフルエンザによる隔離期間は「発症後5日かつ解熱後2日(未就学児では3日)を経過するまで」と決められています。
解熱すれば保育園に通えるようになるわけではない点に注意が必要です。
なお、兄弟児がインフルエンザにかかった場合でも、感染していない元気なお子さんは保育園へ登園しても問題ありません。
インフルエンザの治療方法
インフルエンザの治療薬
インフルエンザの治療薬は抗インフルエンザ薬を用います。
国内では、5種類の抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザ)を使用することが可能です。
発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで次の効果が見込めます。
- 発熱期間の短縮(1~2日)
- 鼻やのどからのウイルス排出量の低下
ただし、重症化のリスクが高いお子さんにおいては、発症48時間以降であっても服用する場合があります。
また、インフルエンザの多くは自然と回復していくため、抗ウイルス薬の服用は必須ではない点にも留意しましょう。
2018/19シーズンにおいて、ゾフルーザに対して耐性を持つウイルスの出現が報告され、若年のお子さんで特に顕著であったことにより、お子さんへゾフルーザを積極的に投与することは推奨されていませんでした。
その後データ蓄積と検証を経て、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会は次のように提言しています。
- 12歳以上の小児に対して抗インフルエンザ薬を投与する場合には、ゾフルーザを他の薬剤同様に推奨する
- 6歳から11歳の小児については、ゾフルーザを投与するかを慎重に検討することを提案する
- 5歳以下の小児では、耐性ウイルスの排泄が長引く可能性があること、錠剤の服用が困難であることを踏まえて、ゾフルーザの積極的な投与を推奨しない
お子さんにどの抗インフルエンザ薬を投与するかについては、お子さんの年齢や容態をもとに医師が行います。
解熱剤(非ステロイド性抗炎症薬)の投与に関する注意点
バファリンやポンタール、ボルタレンなどの解熱剤(非ステロイド性抗炎症薬)がインフルエンザ脳症・脳炎の合併に関与している可能性があり、使用しないことが推奨されています。
成人と比較して、小児では特に注意が必要です。
解熱剤をお子さんに服用させる場合には、あらかじめ医師へご相談ください。
ご自宅での療養する際に注意すること
ご自宅でインフルエンザのお子さんを療養させる際には、次のことを心がけましょう。
- 水分や栄養補給
- 安静にさせる
- 屋内の保湿(湿度50~60%を目安に)
- お子さんを一人にさせない
小児や未成年者がインフルエンザにかかることで次のような異常行動(言動)を起こすことがあります。
- 急に走り出す
- 部屋から飛び出そうとする
- うろうろと歩き回る
これらの異常行動によって、転落による死亡事例も報告されています。
インフルエンザと診断されて、最低2日間はお子さんを一人にさせないようにしましょう。
インフルエンザに関するまとめ
インフルエンザは冬季(12月~3月)に流行する感染症です。
インフルエンザにかかると、風邪症状に加えて次の症状が急速に現れます。
- 38℃以上の発熱
- 頭痛
- 全身の倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
2歳未満や基礎疾患(心臓、肺、腎臓、免疫不全)のあるお子さんはインフルエンザによって重症化するリスクがあり、日ごろの感染防止対策が重要です。
具体的な対策として、次の方法が有効といえます。
- ワクチン接種(予防接種)
- 手洗い
- 屋内の保湿
- 人ごみを避ける
- マスクの着用
インフルエンザにかかってしまったお子さんをご自宅で療養させる場合には、異常行動による事故を防止するために、最低でも2日間はお子さんを一人にさせないよう注意しましょう。
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カテゴリー:冬に多い子供の病気 投稿日:2024-05-30
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