萎縮性腟炎の症状や治療法
50歳代以降の女性において「外陰部の不快感」で困っている方はたくさんいらっしゃいます。
その原因は‘萎縮性腟炎’であることが多いです。
腟内は女性ホルモン、すなわちエストロゲンによって健康的な環境が作られています。ラクトバシラスという細菌が多数存在し、腟内を酸性にして炎症や感染から守っています。
卵巣機能が十分にあり生理が毎月来ているときには、エストロゲンによって腟の壁のうるおいは保たれています。しかし、閉経が近くなってくるとエストロゲンの作用が少しずつ低下していきます。
エストロゲンが減少してしまうと、善玉菌であるラクトバシラスも減ってしまいます。その結果、腟内に炎症や感染を起こしやすくなります。
エストロゲンが減ると、腟の壁は薄くなり弾性が失われます。うるおい不足となり、不快感や性行為のときの痛みの原因になります。
このような不快な症状には対処法があります。早めに診察を受け適切な治療を受けることで症状は早く良くなります。気軽に婦人科へご相談ください。
本日は萎縮性腟症についてお話しします。
萎縮性腟炎の原因
卵巣機能の低下によってエストロゲンが減少することが原因です。
腟壁の上皮はエストロゲンによって層が保たれています。エストロゲンが低下すると、腟上皮は薄くなり水分量が減少して短縮、狭小化してしまいます。
腟内にはラクトバシラスという細菌が多数存在し腟内の環境を保つ役割をしています。つまり、腟内は自分で自分をきれいにする作用をもっています。女性ホルモンの作用によって、自浄作用は保たれています。卵巣機能が低下することによりこの自浄作用は失われ、腟内では炎症や感染が起こりやすくなります。
閉経後の女性だけではなく、若年女性においても萎縮性腟炎が見られることがあります。なんらかの原因によって卵巣機能が低下しているときに起こります。(ダイエット、ストレス、産後、卵巣摘出、抗がん剤治療など)
萎縮性腟炎の症状
腟内の乾燥、かゆみ、違和感、不快感を感じます。
性行為のときに痛みが出たり、出血したりします。
帯下(おりもの)が黄色くなったり臭いがしたりします。
頻尿、尿漏れ、血尿など、膀胱炎のような症状が出ることもあります。
萎縮性腟炎の診断
内診台に上がって頂き、外陰部や腟内の様子を観察します。萎縮性腟炎を起こしているときには腟壁は乾燥し、ただれて赤くなります。
帯下(おりもの)の症状が見られるときには、帯下の一部を採取して検査に出すこともあります。培養検査によって判断するため、結果がわかるまでに数日〜1週間程度かかります。
性器出血がみられるときには、子宮頸癌や子宮体癌の検査を行い、悪性腫瘍でないかどうかを判断します。
萎縮性腟炎の治療
エストロゲン補充療法
局所療法
女性ホルモンである、エストリオールの腟錠を腟内に挿入し治療を行います。腟錠での治療では、子宮内膜への影響(子宮体癌のリスクを上げる)が少なく、血栓症などの副作用が少ないため安全に治療を行うことができます。
エストリール腟錠0.5㎎ もしくは ホーリンV腟用錠1㎎ 1日1回 7~14日間程度投与
全身投与
萎縮性腟炎以外にも、エストロゲン欠乏による症状(ホットフラッシュやイライラなど)がある場合には、エストロゲンの全身投与を行います。
内服薬や経皮製剤を用いてエストロゲンを補充します。子宮内膜を保護する必要があるため黄体ホルモン製剤も同時に投与を行います。
抗菌薬腟錠
腟内に雑菌が繁殖しているときには、抗菌薬を腟内に投与します。
保湿剤、潤滑ゼリー
乾燥を強く感じているときには保湿剤を塗って治療を行います。性交痛で困っているときには潤滑ゼリーの使用を検討します。
漢方薬
困っている症状や体質に合わせて漢方薬を用いることもあります。八味地黄丸、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯などの漢方薬が萎縮性腟炎に効果があると言われています。
※帯下の不快感や臭いが気になって外陰部や腟の中をごしごしと洗浄される方がいらっしゃいます。腟内には、自浄作用を持つ細菌が存在することによって健康的な環境を保っています。しっかりと洗ってしまうと、この良い細菌まで減ってしまいます。腟内は基本的には洗浄する必要はありません。どうしても洗いたいときにはぬるま湯を使ってこすらずに優しく洗いましょう。通常のボディソープではなく弱酸性のデリケートゾーン専用の商品を使うのがおすすめです。
※自己判断で市販の塗り薬を使われている方もよくおられます。塗り薬を使うことによって余計に症状が悪化しているケースをよく拝見します。自己判断せずに早めに婦人科で相談することをおすすめします。
まとめ
更年期以降の女性では、エストロゲンが減少することによって腟内に炎症を起こしやすくなります。
そして、外陰部や尿路の不快な症状を引き起こしてしまいます。
萎縮性腟炎は腟内に挿入する薬剤によって女性ホルモンを補充し治療することができます。
萎縮性腟炎以外の原因で、かゆみや帯下増加を引き起こしていることがあります。自己判断により塗り薬を使うとかえって症状が悪化することがよくあります。
萎縮性腟炎の検査や治療は痛みを伴うものではありません。早めに受診して頂くことで、効果が高い治療を行い不快な症状は早くよくなります。
外陰部の不快感、乾燥でお困りの際には気軽にご相談頂けると幸いです。
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カテゴリー:その他の婦人科疾患 投稿日:2024-05-31
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