慢性疲労症候群こころみ医学

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断基準と症状とは?

慢性疲労症候群とは?

慢性疲労症候群とは、十分な休息によって軽減されない疲労感を特徴とする症候群で、頭痛、微熱、動悸、記憶力低下、のどの痛みなど様々な症状を伴います。

強い倦怠感のために、仕事や勉強を継続することが困難になってしまうこともしばしばあります。

発症の原因は明確に解明されているわけではありませんが、一説には、強いストレスがかかり続けた状態とウイルス感染が免疫系の機能障害を生じさせ、過剰な免疫反応が脳の神経にダメージを与えて倦怠感を引き起こすと考えられています。

慢性疲労症候群の診断基準はこれまでに複数定められていますが、最新のエビデンスに基づく診断基準は2015年に米国医学研究所が公表したものになります。

この診断基準によると、ME/CFSの診断には3つの中核症状の全てと、2つの追加症状のうちの少なくとも1つを満たすことが必要であるとされています。

ME/CFSの3つの中核症状

  1. 活動レベルの大幅な低下
    仕事、学習などの社会的生活や、日常生活における活動レベルが発症前と比べて著しく低下した状態が6ヶ月以上継続し、以下のような疲労を伴う。
    ①しばしば深い疲労
    ②新規発症の疲労(生涯続くとは限らない)
    ③継続的、または激しい活動の後でなくとも起きる
    ④安静にしていてもあまり軽減されない
  2. 労作後倦怠感(PEM)
    発症前なら問題なかった身体的、精神的、感情的な労作後に症状が悪化する。PEMはしばしば病気を再発させる。
    患者によっては、感覚刺激過剰(光や音)がPEMを誘発することもある。
    症状は通常、活動または曝露の12〜48時間後に悪化し、数日から数週間続くこともある。
  3. 睡眠で疲れが取れない
    ME/CFS 患者は、客観的な睡眠の変化がないにもかかわらず、一晩中眠った後でも気分が良くならない、または疲れが取れないことがある。

2つの追加症状

さらに以下の2つの症状のうち、少なくとも1つが存在する必要があります。

  1. 認知機能障害
    患者には、思考、記憶、実行機能、情報処理に問題があり、注意欠如や精神運動機能の障害もある。
    これらは、労作、努力、長時間の直立姿勢、ストレス、時間的プレッシャーによって悪化し、患者が仕事を維持したり、フルタイムで学校に通ったりする能力に深刻な影響を与える可能性がある。
  2. 起立性調節障害
    起立姿勢をとり、それを維持することによって症状が悪化するもので、起立時の心拍数や血圧の異常によって客観的に測定される。
    ふらつき、失神、疲労の増加、認知機能の悪化、頭痛、吐き気などの起立性症状は、日常生活で静かに直立した姿勢をとると悪化し、横になると改善する(必ずしも完全に解決するわけではない)。

米国医学研究所委員会は、「中等度から重度の強度で、これらの症状を半分以上の期間がしめていない場合、ME/CFS でないことを疑う必要がある」と明記しています。

その他に認められる症状とは?

ME/CFSの多くの方では、以下のような他の症状も伴っています。

  • 筋肉痛
  • 腫れや赤みのない関節痛
  • 新しいタイプの頭痛
  • 首や脇の下のリンパ節の腫れや痛み
  • 頻繁に起こる喉の痛み
  • 寒気や寝汗
  • 視覚障害
  • 光や音に対する過敏性
  • 吐き気
  • 食物、臭気、化学物質、薬物に対する過敏症

参考:米国疾病管理予防センターHP ”Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome”

執筆者のご紹介

こちらの記事は、永野医師が執筆し、大澤医師が監修を行っております。

執筆・監修

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こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

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大澤亮太

  • 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
  • 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
  • 学会:日本精神神経学会

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