その頭痛は本当に片頭痛?
日本人の10人に1人が悩まされているという片頭痛。ひどくなれば生活にも大きな支障をおよぼすレベルになってしまいます。
しかし、自分では「片頭痛」と思い込んでいても、実は違っていたというケースも多いのです。
片頭痛とは具体的にどんな頭痛なのでしょうか?その診断方法と診断基準を確認してみましょう。
診断の難しい片頭痛
片頭痛(偏頭痛)は、その名前の通り、頭の片側(コメカミあたり)が痛むことが多いのが特徴です。しかしながら、両側や後頭部が痛む片頭痛もあるので、かならずしも片側の頭痛だけが片頭痛とは言えません。
また、頭痛の60分前くらいに目の前にまぶしい光が現れるなどの「前兆」があるのも片頭痛特有の症状ですが、これもある人と無い人がいます。
一口に片頭痛と言っても、実は色々なタイプに分かれ、
- 前兆のない片頭痛
- 前兆のある片頭痛
- 小児周期性症候群
- 網膜片頭痛
- 片頭痛合併症
- 片頭痛疑い
と、6つもの種類があり、細かく分類すれば10種類以上にもおよびます。とはいえ、これらが明確に区別できないことも多いですし、他の症状が合併していることも少なくはありません。何となく簡単に診断がつきそうなイメージがあるかもしれませんが、実際にはかなり診断が難しい頭痛なのです。
片頭痛の診断の実際
片頭痛には一応ガイドライン上の診断基準がありますが、それに上手く分類できないものも多く、検査数値や画像でわかるものでもないので、「これがあったら絶対に片頭痛」という決め手がないのが実情です。
そのため、
- 診断には患者さんからの詳細な問診が重要
となってきます。
医学上の明確な異変が見当たらない頭痛は「1次性頭痛」「慢性頭痛」などと呼ばれ、
- 片頭痛
- 緊張性頭痛
- 群発頭痛
の3つがあげられます。
この3つを鑑別する方法は詳細な問診以外なく、慎重な診断が必要になってくるのです。
先に除外すべき頭痛とは?
片頭痛は診断が難しい慢性頭痛ですが、激しい頭痛が初めて認められたときは、他の病気も疑ってみなければいけません。
例をあげると、
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
これらは2次性頭痛といって、緊急性が高いことが多く怖い頭痛ではありますが、検査結果で確定することが可能です。激しい痛みがあるときは「片頭痛だろう」と自己判断をせず、まずは医療機関を受診するようにしましょう。
片頭痛の診断基準
片頭痛の診断基準も細かく分ければ多岐にわたりますが、ここでは代表的な
- 前兆のない片頭痛
- 前兆のある片頭痛
の分類での診断基準をみてみましょう。
1.前兆のない片頭痛の診断基準
- 頭痛発作が5回以上ある
- 頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
- 頭痛の性状が①から④の2項目を満たす
①片側性
②拍動性
③中等度~重度の頭痛
④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける - 頭痛発作中に少なくとも以下の1 項目を満たす
①悪心または嘔吐(あるいはその両方)
②光過敏および音過敏
2.前兆のある片頭痛の診断基準
- 頭痛発作が2回以上ある
- 少なくとも以下の 前兆が1つ以上ある
①きらきらした線や点が見える、または陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状(閃輝暗点)
②手足や唇、舌のチクチク感および・または手足の感覚低下
③元に戻る失語性言語障害 - 少なくとも以下の前兆が一つ以上ある
①同名性の視覚症状 または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
②少なくとも 1 つの前兆は 5 分以上かけて徐々に進展するかおよび・または異なが引き続き 5 分以上かけて進展する
③それぞれの前兆の持続時間は 5 分以上 60 分以内
診断基準からみた片頭痛とは
これは、医療向けの慢性頭痛のガイドライン(2013年)をもとに記載した診断基準です。難しい表現も多いため、少しまとめさせていただきます。
まず片頭痛の特徴としては、
- 繰り返す頭痛
です。
- 前兆なしの場合は少なくとも5回
- 前兆があったとしても2回
くり返しの頭痛が認められて初めて片頭痛といえます。
そして痛み方ですが、
- 片側性
- 拍動性(ドクンドクンと鼓動に合わせた痛み)
- 中等度~重度の頭痛
- 日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
のうち2項目を満たす必要があります。
すべてを満たす必要はないため、右だけ左だけといった片側の頭痛ではなくても、
- ドクンドクンとした重度の頭痛が頭全体にある
となると、片頭痛の可能性があるということになります。
その他、さまざまな症状などを患者さんから聞き取り、必要なときは他の頭痛を除外する検査も行って、片頭痛かどうかを診断していきます。
片頭痛の診断には患者さんの協力も大切です
片頭痛の診断について患者さんにお伝えしたいのは、
- 片頭痛は、必ずしもガイドラインにうまく分類できない可能性もある難しい病気
ということです。
まだ明確なメカニズムがわかっていない病気でもあり、他の慢性頭痛との線引きも難しい部分が多いので、診断基準やガイドラインも年月とともに変更されていきます。
また、検査数値や画像などで判断できるものでもありません。
そのため、現実の診断は
- 患者さんからの詳しい問診
が手掛かりとなるのです。
- どこがどのように痛むか
- 痛みの前に目がチカチカするなどの前兆はあるか
- 痛みはどのくらい続くか
- 特定の匂いや光や食べ物など頭痛の引き金になる要因はあるか
など、様々な情報が診断の決め手になっていきます。
片頭痛は医師と患者さんが一緒に病気を診断する病気です。病院に行ったらあとはお任せではなく、
- 目の前がチカチカする
- 特定のにおいをかぐと頭痛が起こる
など、ぜひ、ご自分も探偵になったつもりで、何かヒントになりそうなことががあれば、積極的に医師へ伝えるようにしてください。
※片頭痛の具体的な要因や症状については、『頭の片側がズキズキ痛むのは片頭痛?片頭痛の症状とは?』・『ズキズキ痛む片頭痛の原因と対策は?』もお読みください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:頭痛 投稿日:2019-12-13
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