片頭痛はなぜおきるの?
ズキズキと激しい痛みがともなう片頭痛。日常に支障をおよぼすほど辛い病気ですが、いったいなぜ、そんな痛みがおこってしまうのでしょうか?
片頭痛のメカニズムについて、現在考えられている説をご紹介しましょう。
片頭痛のメカニズム・作用機序
多くの方が苦しむ片頭痛ですが、残念なことに現在はまだ明確なメカニズムはわかっていません。
しかしながら、関連性があると考えられているいくつかの説があります。その代表的なものとして、
- 血管拡張説
- 三叉神経節説
- 中枢起源説
- セロトニン説
があげられています。
1.血管拡張説
まず最初の説としては、血管拡張説があります。これは、
- 脳血管が収縮した後、急激に拡張することで血流が一気に流れ、痛みが出る
というものです。
この説は、血管拡張性物質である calcitonin generelated peptide(CGRP) の増加が密接に関与している可能性から考えられました。しかし、CGRPが関与している可能性は高いと思われるものの、その物質が血管を拡張しただけで片頭痛の激しい疼痛が出るか?と言われれば疑問も多いのです。
2013年の片頭痛のガイドラインでは、「血管拡張説はやや否定的」と記載されています。
2.三叉神経説
1.の血管拡張説より有力視されているのは、三叉神経説です。
これは、
- 三叉神経が刺激されることで痛みが出る
というものです。
三叉神経とは、脳の中でも最も太い神経です。主に脳血管の周囲にあります。
この三叉神経が片頭痛の痛みをおこすメカニズムとして考えられている流れとしては、
- 三叉神経に何らかの刺激が加わる
- 三叉神経からサブスタンスP、CGRPなどの神経ペプチドが発生する
- 血管が拡張する
- 血管が拡張した影響で血管周囲の三叉神経がさらに刺激される。
- 痛みの原因となるサブスタンスPがどんどん増えて片頭痛が生じる
といったことが推定されています。
3.中枢起源説
2.の三叉神経説が有力視されている一方で、三叉神経などの末梢ではなく、痛みを感じる「脳幹」という部分が関与しているのではと考えられたのが、中枢起源説です。
この説では、
- 痛みを感じる脳幹部の受容体が、炎症物質に刺激されることで痛みが出る
と推定されています。
脳幹で痛みを感じる皮質拡延性抑制(CSD)と呼ばれる部位が刺激されることで、片頭痛の痛みが生じると考えられているのです。
例えば、私たちが腕をつねられて痛いと感じるのは、腕のつねられた部位の神経が刺激されて、
- 腕の神経→脊椎の神経→首の神経→脳
と脳まで神経物質がバトンのように渡されていくからです。このとき、バトンのように渡される物質の一つが、三叉神経から発生するサブスタンスPなどです。
そのため、三叉神経から中枢神経への作用が関与している可能性も考慮されています。
ただし、これらの説はまだ推測の域を出ていません。
4.セロトニン説
1~3の説で挙げられた血管拡張、三叉神経、脳の中枢すべてに関与する物質として、神経伝達物質のセロトニンがあります。
セロトニン説は、
- セロトニンが欠乏することで、強い痛みがおこる
というものです。セロトニンには血管収縮作用もあります。
このセロトニンは、
- 消化管粘膜に90%
- 血小板中に8%
- 脳内の中枢神経系に2%
存在する物質です。セロトニンの作用は非常に複雑ですが、片頭痛に関与する作用としては、
- ストレスがかかると、セロトニンが大量に作られる
- セロトニンの放出で脳血管が収縮
- セロトニンは脳内で2%しかないためすぐに枯渇
- セロトニンが無くなることで他の炎症物質が刺激され頭痛が起きる
といった流れで痛みが生じると考えられているのです。
これは、セロトニンの受容体の一つである5-HT1B/1D受容体を作動させるお薬(トリプタン製剤)が片頭痛に効果を発揮することからも、有力視されています。
ただし、単純に
- 脳内のセロトニンが欠乏している
- 片頭痛の痛みの時に急激にセロトニンの上昇がある
といったことだけで、片頭痛が起きているわけではないと考えられています。何らかの形でセロトニンがかかわっていると考えられるものの、はっきりとしたメカニズムはわかっていません。
まとめ
片頭痛のメカニズム、作用機序については、さまざまな説があります。ここでは代表的な
- 血管拡張説
- 三叉神経節説
- 中枢起源説
- セロトニン説
の4つをご紹介しましたが、残念なことに、いずれも完全な解明には至っておらず、今もなお世界中で片頭痛の研究は進められています。
いずれにしても、片頭痛の引き金はストレスや生活習慣、光・匂い・食べ物などもかかわっていると考えられています。
自分がどのようなときに痛みをおこしやすいかを振り返ってみると、予防がしやすくなっていきます。それらの原因や対策については、『ズキズキ痛む片頭痛の原因とその対策は?』をお読みください。
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カテゴリー:頭痛 投稿日:2020-01-06
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