誤嚥性肺炎と口腔ケア

誤嚥性肺炎とは?

食事や水分などを飲み込むことを「嚥下」といいます。

また、誤嚥とは口から食道へ入るべきものが誤って気管に入ってしまうことを指します。

この誤嚥の際に唾液、胃液、食べ物などの他、口腔内の細菌も誤って吸引することで、肺炎を引き起こします。

誤嚥性肺炎を起こす理由

誤嚥性肺炎を起こす理由は、舌やのどの筋肉の運動障害にあります。

その原因には、

  • 舌や喉の腫瘍手術後の運動神経障害
  • 胃の疾患(逆流性食道炎など)

そして最近注目されているのは、

  • サルコペニア
  • フレイル

というものです。

サルコペニアとは、年齢とともに筋力が低下することです。

歩く筋力の低下のため、食事も購入しやすいもの、食べやすいものになります。

特にたんぱく質の摂取が減ることで、さらに筋力が低下するという悪循環に陥ります。

フレイルは筋力低下だけでなく、気持ち的にも落ち込むことで、精神機能や社会性の低下に陥ります。

病気ではありませんが、健康と要介護の間の状態を指します。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎を予防するには、いくつかのチェックポイントがあります。

  • 手洗い、マスクの装着

まず、口の中に入れる細菌を減らすことです。帰宅時や食事前には手洗いをしましょう。

また外出時はマスクをつけることで、お口に細菌が入ることを減らします。

  • 栄養をしっかりとる

年齢が高くなると、どうしても食が細くなります。

たとえ少量でも栄養価のバランスのとれた食事を目指しましょう。

炭水化物が手軽で摂りすぎになると思いますが、タンパク質を意識して摂取してください。

たとえば、間食の際に栄養補助食品を摂取する方もおられます。

  • 食事の姿勢

寝たきりの方も、上半身を起こした状態で食事をしましょう。

また食事はゆっくり、皆さんそれぞれのスピードで摂るようにしましょう。

急ぐとむせて誤嚥する危険性が高くなります。

  • 適度な運動で免疫力をアップ

栄養を摂取した後は、筋力維持のために体を動かしましょう。

散歩などは気分転換にもなりますし、屋内で体操でも構いません。

  • 口腔ケア

誤嚥性肺炎を起こすリスクを減らすには、口腔内の細菌を減らしておくことも重要です。

また口腔ケアは経口摂取していない方も、口腔内細菌を除去のために必要です。

口腔ケアの重要性

平成25年に千葉大学医学部附属病院がある報告をしました。

  • 歯科・顎・口腔外科、消化器外科、心臓血管外科の手術症例や放射線治療症例
  • 小児科・血液内科の悪性腫瘍に対する化学療法症例

を対象にした報告です。

歯科医師や歯科衛生士が治療の開始前後に介入して口腔内を綺麗にすると、術後の肺炎や口内炎などのトラブルが激減したというものです。

患者さんの負担を軽減するだけでなく、医療費も抑制することができます。

とても画期的な報告で、それ以降「周術期口腔機能管理」として保険収載され、医科と歯科の連携が重要視されています。

周術期口腔機能管理

周術期口腔機能管理が対象になるのは、がん等の手術、放射線治療、化学療法、緩和ケアを実施する患者です。

ただし、これ以外にも、全身麻酔手術を行う患者に対しては、手術の前後に歯科医師・歯科衛生士が口腔内を清潔に保つことは、とても重要です。

全身麻酔手術では、お口から気管まで麻酔のチューブを挿入しますが、この時に気管に口腔内の細菌を入れ込んでしまうことがあります。

また手術終了時には抜去しますが、麻酔から完全に覚めていない患者さんにおいては、抜去時にむせることがよくあります。この時にも口腔内の細菌を入れ込んでしまうおそれがあります。

口腔ケアで食べかすやプラークなどの量を減らすことも重要ですが、手術直後で経鼻チューブや胃瘻などによりお口から食事をしていない方でも、口腔内は汚れますので、口腔ケアはとても重要です。

全身麻酔、放射線療法、化学療法に限らず、ご自宅でも歯科医師の往診により口腔ケアを受けることができます。

お口の定期的なケアを受けることをオススメします。

参考文献

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大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:肺炎  投稿日:2023-03-10

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