慢性副鼻腔炎


慢性副鼻腔炎とは?原因や症状、治療法について医師が解説

慢性副鼻腔炎とは?

慢性副鼻腔炎は、鼻の副鼻腔(副鼻腔)が長期間にわたって炎症を起こす状態のことをいいます。

副鼻腔とは、頭蓋骨を構成している骨によって作られる、部屋のような空洞です。*1

引用)*1 世界初、手術手技を実施可能にした「精密ヒト鼻腔モデル」を開発

副鼻腔には前頭洞、前・後篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞があり、これらを合わせた用量は成人で約80mlと言われています。*2

通常、副鼻腔は鼻の周りに存在し、空気を浄化し湿潤に保ち、免疫システムによって微生物から身体を守る重要な役割を果たしています。しかし、慢性副鼻腔炎では、これらの副鼻腔が炎症を起こし、症状が持続的に現れる状態となっています。

慢性副鼻腔炎の原因

主に風邪等のウイルスや細菌感染によって生じる副鼻腔の炎症が12週間以上続く物を慢性副鼻腔炎とよびます。

急性の副鼻腔炎が適切に治療されなかったことによって、副鼻腔に膿汁(のうじゅう:細菌と戦った後に死んだ白血球などが含まれる液体のこと)が貯留する感染性の疾患です。蓄膿症(ちくのうしょう)として一般的に知られています。

一方で、アレルギー性疾患が増えるにつれ、慢性副鼻腔炎の中には好酸球性副鼻腔炎という特殊なタイプのものがあるということもわかってきました。

その他にも、カビが原因となるものや、虫歯から起こる副鼻腔炎もあります。*3

好酸球性副鼻腔炎と、いわゆる蓄膿症である非好酸球性副鼻腔炎の違いについて、簡単な表にしてみましょう。

非好酸球性副鼻腔炎 好酸球性副鼻腔炎
病態 細菌感染(インフルエンザ菌,肺炎球菌) アレルギー性炎症(非アトピー性)
炎症の部位 上顎洞 篩骨洞
膿汁の貯留(鼻茸,後鼻孔ポリープ) 鼻茸、粘稠性の鼻汁
症状 膿性鼻汁、湿性咳嗽、鼻閉 嗅覚障害、鼻閉
炎症のタイプ 好中球性炎症 好酸球性炎症
合併症 副鼻腔気管支症候群(鼻と気管支の両方に炎症がおきて、痰がからんだ湿った咳が続く病気)、滲出性中耳炎 気管支喘息、好酸球性中耳炎
治療 抗菌薬、手術 ステロイド、手術、生物学的製剤

*3〔専攻医トレーニング講座〕慢性副鼻腔炎の病態分類.日耳鼻.2022:125;1600-1603.
を参考に一部追記・改変

これを踏まえ、ここから慢性副鼻腔炎の症状や治療について詳しく解説していきましょう。

慢性副鼻腔炎の症状

さて、先ほど簡単に触れましたが、慢性副鼻腔炎の症状について解説しましょう。*3

もちろん慢性副鼻腔炎の症状は個人によって異なりますが、蓄膿症の場合には一般的な症状として、以下のようなものが現れます。

  • 膿性鼻汁
  • 湿性咳:下気道にも鼻水が垂れ込み、炎症が起こり痰の混じった咳がでます。
  • 中耳炎:副鼻腔の炎症によって耳管という耳と鼻の奥をつなぐ管の機能が障害されることで、中耳炎が起こります。
  • 鼻閉:重症になると、上顎洞にできた鼻茸(はなたけ)によって高度の鼻詰まりをきたしてしまうことがあります。

慢性副鼻腔炎の診断

慢性副鼻腔炎の診断基準は、以下のようになっています。*3

  • 鼻副鼻腔炎は「鼻閉」または「鼻漏(前鼻漏または後鼻漏)」のうちの 1 症状を有する
  • 「顔面痛または圧迫感」と「嗅覚低下または脱出」を含めた 2症状以上を有する
  • 「鼻内視鏡所見」または「CT 所見」のいずれか、または両方に所見を認める

こうした診断基準を満たし、12週間以上症状が続いているものについて、慢性副鼻腔炎と診断されます。

慢性副鼻腔炎の検査は、鼻の内視鏡検査やX線、CTスキャンなどの画像検査で行っていきます。

特に、内視鏡検査やCTスキャンを行うことで、副鼻腔の異常や炎症の程度を確認し、正確な診断を得ることが可能となります。

例えば、下の図のAでは非好酸球性副鼻腔炎のCTスキャンと、内視鏡検査です。CTでは上顎洞に陰影を認め、内視鏡では白っぽい膿のような鼻水の垂れ込みを認めます。

一方、Bでは好酸球性副鼻腔炎のCTスキャンと篩骨洞優位の陰影と、内視鏡では中鼻道に鼻茸を認めます(画面左側の白っぽいもこもことした膨らみのことです)。

引用)*3〔専攻医トレーニング講座〕慢性副鼻腔炎の病態分類.日耳鼻.2022:125;1600-1603.

慢性副鼻腔炎の治療

慢性副鼻腔炎の治療は、その原因に基づいて個別に行われます。*3

好中球が浸潤するようなタイプの慢性副鼻腔炎では、治療はマクロライドという種類の抗菌薬を少量長期に投与することで高い効果が期待できるとされています。なかなか治らない症例に対しては、副鼻腔の粘膜を残したまま、副鼻腔を開放する、鼻内内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)という手術によってとても高い治療効果が得られるとされています。

好酸球性副鼻腔炎の場合にも、まずは同じように薬物治療、手術という方法がとられます。一方で、近年生物学的製剤という薬も保険適応となりました。

まとめ

今回の記事では、慢性副鼻腔炎の原因や症状、治療法について解説しました。
慢性副鼻腔炎は急性副鼻腔炎が治らずに慢性化してしまうものの他に、アレルギーなどの関与が考えられている好酸球性副鼻腔炎というものがあります。

なかなか治らない鼻水や鼻づまりなどがある場合には、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:鼻の病気  投稿日:2024-05-31

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎とは?診断方法や治療について医師が解説 目次 アレルギー性鼻炎とは 季節性アレルギー性鼻炎 通年性アレルギー性鼻炎 アレルギー性鼻炎の診断 アレルギー性鼻炎の治療 まとめ アレルギー性鼻炎とは アレルギー… 続きを読む アレルギー性鼻炎

カテゴリー:鼻の病気  投稿日:

人気記事

【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)  投稿日:

SGLT2阻害薬の効果と副作用

SGLT2阻害薬とは? SGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬は糖尿病の治療ガイドラインで定められている治療薬のひとつで、膵臓ではなく腎臓に作用することで血糖値を改善する働きがあります。 SGLT2は腎臓に存在する… 続きを読む SGLT2阻害薬の効果と副作用

カテゴリー:糖尿病治療薬  投稿日:

【医師が解説】脂質異常症(高脂血症)の症状・診断・治療

脂質異常症(高脂血症)とは? 脂質異常症とは、 悪玉コレステロール(LDL)の上昇 中性脂肪(TG(トリグリセリド))の上昇 善玉コレステロール(HDL)の低下 のどれかを満たした時に診断される病気です。 昔は高脂血症と… 続きを読む 【医師が解説】脂質異常症(高脂血症)の症状・診断・治療

カテゴリー:脂質異常症(高脂血症)  投稿日: