味覚障害とは?原因や治療法について医師が解説
味覚障害とは
味覚障害とは、味覚に何らかの異常が起こり、味がいつもと異なる、あるいは味を感じにくくなるといった症状が出ることです。
本記事では、味覚障害の症状や原因、関連する症状、対処方法、そして予防策について詳しく解説します。
味覚障害の症状
一言に味覚障害といっても、以下のようにさまざまな症状が現れます。
引用)味覚障害の診療の基本とその実践 総説.日耳鼻.2019;122:1279-1284.
味がしない、あるいは変な味がするために、食事をとることが苦痛になり、体重が減少してしまうこともあります。
人によっては、「味の区別がつくが、おいしくない」「舌がピリピリするのは舌癌ではないか」「食事を食べたくないのでやせた」など、さまざまな症状を訴えることもあります。
味覚障害の主な原因
それでは、まずは味覚障害の主な原因について解説していきます。
原因と年齢の関係
味覚障害の原因というと、亜鉛不足などを連想する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、味覚障害の原因は、大きく分けると以下のようになっています。
- 末梢および中枢の味覚伝導路の障害
- 他の疾患などによる二次的な障害
1は、神経疾患や、手術や歯科処置などで神経を傷つけてしまう末梢性の神経障害や、脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷などで味覚中枢が障害されてしまうことがあります。
一方、2には薬剤性味覚障害や、特発性味覚障害(つまり、原因がはっきりとわからない味覚障害)、亜鉛欠乏性味覚障害、または全身性の疾患の影響などがあります。
また、年齢によっても味覚障害の原因は変わってきます。
味覚障害の原因を、壮年以下(49歳以下)と高齢者(70歳以上)で比較した研究報告があります。
その研究によると、味覚障害の結果は高齢者では薬剤性や全身疾患が多いという結果でした。一方、壮年以下では亜鉛欠乏性のものや特発性のものが多いという結果になっていました。
引用)味覚障害の原因.口咽科.2004;16(2):181-185.
味覚障害の原因となる全身疾患
全身疾患としては、腎障害や肝障害、糖尿病などが原因となることが多いとされています。
味覚障害の原因となる薬剤
高齢者の場合には、薬剤性の味覚障害が問題となります。
その原因となる薬剤とは、高血圧の薬(降圧利尿薬)や、心血管障害の薬(冠血管拡張薬)、肝治療薬、抗生物質、抗がん剤、ウイルス性肝炎などに使われるインターフェロンなど、さまざまなものがあります。
新型コロナウイルス感染症の症状・あるいはその後遺症
新型コロナウイルス感染症の症状としても、味覚障害があります。
また、罹患した方で、発症してから3か月以上たっても後遺症として味覚障害が残ってしまうことがあります。
味覚障害の検査
味覚障害が疑われる場合には、以下のような流れで検査を行っていきます。
問診
味覚障害の原因を推定するためには、詳しく問診することが大切です。
具体的には、
- いつから
- どのような症状を自覚したのか
- きっかけはあったか
- 持病の有無や飲んでいる薬・サプリメントはあるか
- ストレス・不眠の有無
- 食事の有無
- その他(タバコ、飲酒量、体重の増減など)
といった項目を重点的に問診します。
視診
舌苔(ぜつたい)があるか、舌炎があるかどうか、また口腔内乾燥など、口の中のチェックを行います。
亜鉛が不足すると、舌は赤く、平らになってしまうなどの所見が出ます。
以下に、亜鉛補充治療前と後の写真をご紹介します。
引用)味覚障害の診療の基本とその実践 総説.日耳鼻.2019;122:1279-1284.
血液検査
亜鉛欠乏性味覚障害かどうかを調べるために、亜鉛や銅、アルカリフォスファターゼなどの項目を含んだ採血を行います。
また、全身性疾患でないかを調べるために、肝機能・腎機能や血糖値、貧血チェックや血清鉄(Fe)、葉酸、ビタミンB12、総蛋白やアルブミンなどの測定も行われます。
味覚機能検査
電気味覚検査やろ紙ディスク検査という検査があります。
様々な味(甘い、酸っぱい、塩辛い、苦い)の液体を用いて行われることが多いです。これらの液体を舌の異なる部分に塗布し、どのように感じるかを評価します。
その他の検査
その他、舌苔培養、唾液分泌量検査(ガムテスト)、嗅覚機能検査、簡易心理検査、画像検査(副鼻腔CT、頭部MRI)などが行われます。
味覚障害の治療
味覚障害の治療は、その原因に基づいて異なりますが、以下のように進めていきます。
原因の特定
味覚障害の背後にある原因(例えば、薬剤の副作用、栄養不足、特定の疾患など)を特定し、その原因を治療することが最優先となります。
例えば、栄養不足が原因である場合、亜鉛やビタミンの補給が勧められることもあります。
亜鉛欠乏にならないように何を食べるべき?
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取の推奨量は以下のようになっています。
- 18~74歳の男性で11mg
- 75歳以上の男性で10mg
- 18歳以上の女性で8mg
亜鉛は、魚介類、肉類、藻類、野菜類、豆類、種実類に多く含まれています。
特にかき(養殖/生)には100gあたり14.5mgと亜鉛が多く含まれています。
また、うなぎの蒲焼100g(1串)は2.7mg、豚・肝臓生100gあたり6.9mgと魚介類や肉類に亜鉛が多く含まれています。
不規則な食生活や偏食、過度なダイエットをやめ、日々の食事内容に注意することが大切です。
薬物療法
特定の薬剤が味覚障害の原因である場合、その薬剤の変更や用量の調整が検討されます。
また、味覚を改善するために、漢方薬や口腔内乾燥を改善する薬を使用することもあります。
口腔衛生の改善
口腔内の問題が味覚障害の原因である場合、適切な口腔衛生の維持が重要です。
定期的な歯科診察や口腔ケアを行っていきます。
味覚トレーニング
味覚の感受性を高めるために、定期的に様々な味を試すトレーニングを行うことが有効な場合があります。これは、味覚受容体の感度を向上させることが目的です。
代替療法
アロマセラピー、鍼治療、またはリラクゼーションテクニックなどの代替医療を用いて症状の緩和を試みることがあります。
カウンセリングとサポート
長期にわたる味覚障害は生活の質に影響を及ぼすことがあるため、心理的なサポートやカウンセリングが有益であることがあります。
まとめ
今回の記事では、味覚障害の原因、症状、検査、治療法について解説しました。
味覚障害の原因は年齢や健康状態により異なり、治療もそれぞれの原因に応じたアプローチが必要です。適切な栄養補給や口腔ケア、時には味覚トレーニングも効果的な場合があります。
もしも味覚がおかしいなと感じることがあれば、耳鼻咽喉科や口腔外科の受診を検討するようにしましょう。
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カテゴリー:よくある耳鼻科の症状 投稿日:2024-06-04
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