小児用肺炎球菌ワクチンについて
小児用肺炎球菌ワクチンとは
小児用肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌が引き起こす感染症を予防するためのワクチンです。
特に、小さな子どもにとって重要な予防接種です。
名称 | 沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15) |
---|---|
定期 / 任意 | 定期接種 |
ワクチンの種類 | 不活化ワクチン |
接種方法 | 皮下注射または筋肉内注射 |
費用 | 定期接種:無料 任意接種の場合は1回1万円前後(施設による) |
肺炎球菌について
肺炎球菌(はいえんきゅうきん)は、正式にはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)という名前の細菌です。
この細菌は、小さい子どもやお年寄りのような免疫力が低い人々にとって危険な細菌です。
肺炎球菌感染症にかかると、肺炎や髄膜炎などを引き起こすことがあります。
肺炎球菌の特徴
- 集団生活で広がりやすい
- 保育園や幼稚園、小学校など、子どもたちが集まる場所で感染しやすいです。
- 気道から感染
- 主に咳やくしゃみ、気道の分泌物を通じて感染します。子どもが触ったおもちゃや家具を介しても広がることがあります。
- 引き起こす病気
- 肺炎:咳や発熱、呼吸困難などの症状を引き起こします。
- 中耳炎:耳の痛みや発熱、耳からの分泌物が見られます。
- 髄膜炎:高熱、頭痛、首の痛み、意識障害などの重い症状を引き起こします。
- リスクの高い人
- 特に0歳児や小さな子どもは、免疫力が十分に発達していないため感染しやすく、重症化しやすいです。
- 免疫力が低い人(例えば、病気や治療の影響で免疫力が低下している人)や高齢者も注意が必要です。
肺炎球菌は感染すると重い病気を引き起こすことがあるため、予防接種が重要な役割を果たします。
細菌性髄膜炎の危険性
細菌性髄膜炎は非常に危険で、重篤な病気です。
早期に適切な治療を受けなければ生命に関わることがあります。
肺炎球菌による細菌性髄膜炎の死亡率は約2%です。
また、10%の子どもには難聴、精神発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症が残ることがあります。
これらの後遺症はお子さんの一生に影響を及ぼす可能性があるため、予防が極めて重要です。
髄膜炎は早期発見と治療が鍵ですが、最も効果的なのは予防接種です。
接種スケジュールの例
小児用肺炎球菌ワクチンは生後2か月になったら始めます。
早めに始めることで、赤ちゃんは早期に免疫を得ることができます。
生後2ヶ月から15ヶ月までに、合計4回接種します。
- 生後2か月:1回目の接種
- 生後3か月:2回目の接種(1回目の接種から27日以上あける)
- 生後4か月:3回目の接種(2回目の接種から27日以上あける)
- 生後12か月から15か月:追加接種
PCV13とPCV15の違い
PCV13とPCV15は、どちらも肺炎球菌による感染症を予防するためのワクチンですが、カバーする菌株の数に違いがあります。
2024年4月から、PCV15(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン)が利用可能になりました。
- PCV13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)
- 特徴:13種類の肺炎球菌に対する免疫を提供します。
- 利点:長い間使われており、その効果がよく知られています。
- 接種方法:6歳未満は皮下注射のみ
- PCV15(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン
- 特徴:PCV15は、PCV13に加えてさらに2種類、合計15種類の肺炎球菌に対する免疫を提供します。
- 利点:PCV13ではカバーされていない2種類の追加の肺炎球菌に対しても保護するため、より広い範囲の感染症予防が期待できます。
- 接種方法:皮下注射または筋肉内注射
PCV13から15への変更は可能?
PCV13からPCV15への変更は可能です。
PCV15は追加の菌株に対する予防効果が得られます。
変更する場合は医師と相談し、適切な接種スケジュールを確認してください。
PCV15は皮下注射と筋肉内注射のどちらも可能です。
一般的に筋肉内注射の方が痛みが少ないとされているため、お子さんには筋肉内注射の方が適していると考えられます。
ワクチン接種の一般的な副反応
ワクチン接種には、以下のような副反応があります。
- 注射部位の腫れや痛み
- 軽い発熱
- 疲れやすさ
まれに報告される重い副反応
- ショック
- アナフィラキシー
- 痙攣
肺炎球菌のワクチンは他の一般的なワクチンと同じように、安全性が高いことが確認されています。
万が一、副反応が心配な場合は、接種前に医師とよく相談しましょう。
肺炎球菌ワクチンの重要性(まとめ)
肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による感染症のリスクを減少させ、感染したとしても重症化を防ぐ効果があります。
日本では肺炎球菌ワクチン導入後、小児の侵襲性肺炎球菌感染症(※)の患者数が約80%減少しました。
小児用肺炎球菌ワクチンは子どもの健康を守るために重要なワクチンです。
生後2ヶ月から始まる予防接種スケジュールに沿って、定期接種を受けましょう。
※侵襲性感染症:通常は菌が存在しないはずの体の中(血液や脳脊髄液など)に菌が入り込んで起こる感染症のこと。
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カテゴリー:こどものワクチン 投稿日:2024-12-06
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