小児におけるタバコの誤飲と対処法について
小児におけるタバコの誤飲事故について
お子さまの誤飲事故の中で、タバコの誤飲が最も多いです。
タバコを誤飲することでニコチンによる中毒症状が生じます。
嘔吐するため重篤な中毒症状が出ることはまれです。
ただし、重篤な中毒症状によって命を落としてしまうこともあり、決して油断はできません。
タバコを誤飲しやすい小児の年齢
タバコの誤飲は0~2歳のお子さまに多いです。
6~11カ月になるとハイハイやつかまり立ちが始まり、1歳以降では自分の力で移動できるようになります。
1歳6か月以降には動きも早くなり、両手で物を持つことができるようになります。
これらの時期のお子さまは、タバコを口にいれてはいけないと認識できません。
そのため、手の届く場所にタバコがあると口に入れてしまうことがあり大変危険です。
タバコを誤飲したときの症状
タバコを誤飲した場合、次の症状が出ることがあります。
症状が出る場合には、誤飲後30分~4時間以内に次のような症状が出ます。
症状が出るまでの時間や程度は、誤飲した量によりさまざまです。
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- めまい
- 腹痛
- 下痢
- 咳
- 喘鳴(呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューとなること)
- 顔面蒼白(チアノーゼ)
- よだれの増加
小児がタバコを誤飲した場合の致死量
タバコ誤飲事例において、考えるべきなのは接種したニコチンの量です。
小児におけるニコチンによる致死量は10~20 mgとされています。
タバコ1本あたりに16~24 mgのニコチンが含まれているため、タバコを半分以上誤飲した場合、命を落としてしまう可能性があります。
多くは2~5 mg程度のニコチンを接種した時点で嘔吐するため、致死量まで接種することは非常にまれです。
タバコを誤飲したときの対処法
タバコを誤飲したときにすべきこと
応急処置として、水分を与えずにできるだけ嘔吐させてください。
「いつ」、「どのくらいの量」を誤飲したのかを把握することも重要です。
水分を与えずできるだけ嘔吐させ、状況を把握できたら医療機関へ受診させましょう。
お子さまに次の症状が出た場合には、速やかに救急車を呼びましょう。
- 嘔吐した
- 意識がはっきりせずにぐったりしている
- けいれんしている
タバコを誤飲したときにしてはいけないこと
お子さまがタバコを誤飲したとき、嘔吐させるために水や牛乳を飲ませてはいけません。
水分によってタバコに含まれるニコチンが溶け出し、症状を重篤にすることがあり危険です。
タバコの浸出液を誤飲する危険性について
少量のタバコを誤飲しても死に至ることはほとんどありません。
しかし、タバコの浸出液を誤飲した場合は大変危険です。
(※タバコの浸出液:タバコを浸した液体)
タバコに含まれるニコチンは水に溶けすい性質があるため、タバコの浸出液を誤飲することでニコチンを直接接種することになります。
浸出液に溶けたニコチンの量が多いと、5分以内に死亡してしまいます。
タバコの浸出液が生み出されてしまうことを避けるために、空き缶やペットボトルを灰皿代わりにすることは絶対に控えましょう。
タバコの浸出液を誤飲した場合には、救急車を呼び早急に医療機関へ受診させてください。
タバコ誤飲時における受診の目安
タバコを誤飲した場合、次の基準に該当する場合は早急に医療機関へ受診させましょう。
- タバコの浸出液を誤飲した(すぐに救急車を呼んでください)
- タバコを1/4本以上誤飲した
- 顔面蒼白、嘔吐、ぐったりしている
タバコを誤飲して1日症状がなければ、タバコによる中毒症状はないと判断できます。
タバコの誤飲に対する治療
ニコチンの中毒症状が出た場合には、症状に応じた治療(点滴や酸素投与など)を行います。
タバコを多量に誤飲したり、タバコの浸出液を誤飲したりした場合には、胃洗浄が必要です。
症状がない場合には経過を観察します。
数時間程経過を観察し、症状が出なければ帰宅できます。
タバコの誤飲を予防する方法
タバコの誤飲に関する実態調査
乳幼児におけるタバコの誤飲実態を把握するために消費者庁によるアンケートが実施されました。
重要なポイントは次の通りです。
- 禁煙者のいる家庭の2割でタバコや吸殻を入れた(いれそうになった)ことがある
- 誤飲しそうになったお子さまの年齢は0~2歳
- 3割の家庭でタバコや灰皿がお子さまの手の届く場所に置かれている
- 5割の家庭でお子さまのいる場所で喫煙している
- テーブルの上にあるタバコや灰皿の吸殻を口にするお子さまが多い
- 飲料の缶やペットボトルの中に捨てられた吸殻を口にしたお子さまもいた
タバコの誤飲を予防するために必要なこと
タバコの誤飲を防止するためには、特に次のことに留意しましょう。
- タバコの誤飲は非常に危険であることを認識する
- お子さまのいる場所で喫煙しない
- お子さまの手の届く場所にタバコや灰皿を置かない
- 飲料の缶やペットのボトルを灰皿代わりにしない
お子さまによるタバコの誤飲を予防するためには、周囲の大人の配慮が重要です。
お子さまの健康を守るためにも、どうしてもタバコを吸う場合には、タバコや吸殻の管理にも配慮してあげましょう。
タバコの誤飲に関するまとめ
お子さまの誤飲事故の中で、タバコの誤飲が最も多いです。
タバコを誤飲することでニコチンによる中毒症状が生じることがあります。
タバコの誤飲は0~2歳のお子さまに多いです。
お子さまの行動範囲が広がっていくため、タバコの誤飲に注意が必要となります。
タバコを誤飲した場合、次のような症状が誤飲後30分~4時間以内に出ます。
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- めまい
- 腹痛
- 下痢
- 咳
- 喘鳴(呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューとなること)
- 顔面蒼白(チアノーゼ)
- よだれの増加
タバコを誤飲した場合には、水分を与えずできるだけ嘔吐させ、医療機関へ受診させましょう。
ニコチンが水分中に溶け出し症状を重篤にすることがあるため、嘔吐させるために水や牛乳を飲ませてはいけません。
タバコの浸出液を誤飲した場合には、迅速に救急車で受診させてください。
タバコの誤飲を防止するためには、周囲の大人の配慮が必要です。
大切なお子さまの健康を守るためにも、タバコの誤飲が危険であることを認識しタバコの管理を徹底するようにしましょう。
参考にした文献
- 1) 厚生労働省 (2004). 家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告.(2024年2月25日参照)
- 2) 公益財団法人 日本中毒情報センター (2012). 保健師・薬剤師・看護師向け中毒症状.(2024年2月25日参照)
- 3) 消費者庁 (2021). 乳幼児のたばこの誤飲に注意しましょう!-加熱式たばこは紙巻たばこより誤飲しそうになった割合が高く、より注意が必要です-.(2024年2月25日参照)
- 4) 政府広報オンライン (2020) . ボタン電池や医薬品、タバコなど こどもの誤飲事故にご注意を!. (2024年2月25日参照)
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カテゴリー:特殊な子供の病気 投稿日:2024-05-30
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