ぎょう虫感染症
ぎょう虫感染症とは
- 寄生虫による感染症で、ぎょう虫の卵を口に入れることで感染します
- ぎょう虫の卵は感染者の指、衣類や寝具、またはほこりを介して広がります
- 子どもを中心に感染しますが、感染した子どもを介して大人にも感染します
- 主な症状は肛門部の痒みで、夜間の痒みが原因で寝不足になったり、落着きがなくなったりすることがあります
- 症状から感染が疑われる場合は、粘着剤の付いたセロファン紙で検査をします。セロファン紙にぎょう虫の卵が付着していると確定診断となります
- 治療は抗寄生虫薬の内服になります。子どもの感染の場合は、同居している家族も感染していることを考慮して、同居の家族全員が内服することが多いです
- 昭和20年代には寄生虫の保卵率は全国民の70〜80%程あったとされていたことから、小学3年生以下の児童にはぎょう虫検査が義務づけられていました。しかし、下水など衛生環境の整備が進んだことなどで感染率は激減し、平成27年度限りでこの検査も廃止されました
衛生環境の改善、生活環境や公衆衛生の向上によって、近年ではぎょう虫感染症の罹患率は1%以下となっていますが、完全にいなくなったわけではありません。
ぎょう虫は卵によって感染を広げていきますが、その流れを簡単に説明します。
まず、ぎょう虫卵自体は症状を引き起こすものではありませんが、口からヒトの体内に取り込まれることで、腸内で卵が孵化し感染となります。
卵が腸内で孵化し2〜3週間すると成虫になります。
その後さらに数週間かけて成熟し、交尾後にメスは抱卵し腸内で生き続け、オスはすぐに息絶え便と一緒に排泄されます。
メスは約1ヶ月間、卵の成熟を待って産卵を行います。
ぎょう虫感染症の痒みは、メスが肛門から這い出して産卵する際に引き起こされます。
ぎょう虫感染症の症状が夜間入眠中に起こるのはそのためです。
産卵後、メスは寿命をむかえるため、腸内に戻る事はありません。
治療法は抗寄生虫薬の内服になります。
しかし、抗寄生虫薬は成虫を駆虫させることはできますが、卵には効果がありません。
卵の長径は、40マイクロメートル(0.04mm)と小さいために、肉眼では確認できません。
つまり、目に見えない卵を治療後に再び取り込まないための予防が重要になります。
ぎょう虫感染症の症状
- 夜間の肛門周辺のおしりの痒み
- 頻度は低いですが、女の子では腟のまわりの痒みと炎症
- 睡眠不足による注意力の低下
感染してもぎょう虫の数が少ない場合は、ほとんどが無症状です。
主症状の痒みは、産卵時にメスのぎょう虫が肛門部に出てくることで引き起こされます。
夜間にお子さんがおしりを痒がっている場合は、肛門でクネクネと動いている白いぎょう虫を見られるかもしれません。
ぎょう虫感染症の診断
現れている症状からぎょう虫感染が疑われると、粘着剤の付いたセロファン紙で検査を行います。
起床直後に、粘着剤の付いたセロファン紙を肛門にあて、セロファン紙にぎょう虫の卵が付着していると確定診断となります。
ぎょう虫数が少ないと、1回のセロファン検査では偽陽性となる可能性もあるので、2回検査を行うことが一般的です。
ぎょう虫感染症の治療法
ぎょう虫感染が診断されると、抗寄生虫薬を内服します。
1回の内服では駆虫率が90%のため、2週間あけて2回内服することになります。
抗寄生虫薬は卵には効果がありません。
つまり、内服によって成虫を駆虫できたとしても、卵を取り込んでしまうと再び感染してしまうので、産み付けられた卵を広げないように予防を同時に行うことが重要になります。
また、ぎょう虫感染症は感染力が強く、家族内に感染者がいると再感染を繰り返してしまいます。
そのため、陽性者本人だけではなく、家族全員で内服治療を行ってもらうことになります。
ぎょう虫感染症の予防
起床後お風呂で肛門部を洗い流す
夜間に肛門部に産み付けられたぎょう虫の卵を洗い流すことで、卵が拡散蔓延することを防ぎます。
爪を短く切る
長い爪は卵が溜まりやすく、爪を短くすることで爪と指の間に卵が溜まることを予防します。
食前やトイレ後の手洗いの徹底
手に付着した卵を除去し、感染拡大を防ぎます。
家庭内の清掃(お風呂の脱衣所やトイレなど)
お風呂の脱衣所やトイレ、または着替えをする場所は、卵が脱落し拡散しやすい場所になります。
掃除機でこまめに掃除をしましょう。
ちなみに、アルコール消毒はぎょう虫の卵に対してはあまり有効ではありません。
消毒剤で卵は不活化できず、感染能力は維持されるからです。
ぎょう虫の卵は非常に小さく、家庭内の表面に付着すると簡単には除去できないので、手洗いや清掃、寝具の洗濯などの物理的な方法が推奨されます。
下着や衣類、寝具の洗濯とこまめな交換
定期的な洗濯と交換で卵が寝具や衣類に残ることを避けます。
卵が付着した衣類や寝具を清潔に保つことで、再感染を防ぎます。
寝具や衣類を直射日光に当てる
ぎょう虫の卵は紫外線に弱く、直射日光には卵を死滅させる効果があります。
寝具や衣類を外で干し、カーテンを開けて部屋に日光を取り入れましょう。
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カテゴリー:特殊な子供の病気 投稿日:2024-11-07
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