ヘルパンギーナの症状・診断・治療
ヘルパンギーナとは
- ヘルパンギーナとは、発熱、のどの痛み、口腔内の水疱を主症状とする、子どもがかかる夏風邪の1つです
- 感染力が高く、主にコクサッキーウイルスA群(特にA16型)によって引き起こされます。感染経路は飛沫感染や接触感染になります
- 主に5歳以下の子どもがかかることが多く、中でも1歳代が全体の90%以上を占めます。子どもに多い疾患ですが、まれに大人もかかることがあります
- ウイルス性の感染症なので特効薬は無く、治療法は対症療法になります。1週間程度で自然回復します
- 出席停止の義務はありませんが、主要な症状が改善されるまで自宅での休養が推奨されます。
ヘルパンギーナは夏に乳幼児の間で流行する感染症の1つです。同じように夏に子どもが感染する疾患に、「プール熱」「手足口病」があるので、この3つは”子どもの三大夏風邪”と呼ばれています。
主にコクサッキーウイルスA群(特にA16型)によって引き起こされますが、エコーウイルスや他のエンテロウイルスが原因となることもあります。
感染力が強く、感染した人が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫や、感染者の口や鼻から出る分泌物に直接触れた後に自分の口、鼻、目などを触る接触感染で感染します。また、ウイルスは感染者の糞便からも排出されるので、おむつ交換後に手洗いが不十分な場合などは感染を広げてしまうことになります。
ヘルパンギーナには出席停止の義務はありませんが、発熱やのどの痛みが軽快し、食事が十分に摂れるまでは自宅療養することになるでしょう。症状改善後も2週間ほどは糞便中にウイルスが排出されるので、幼稚園や保育園への登園を再開する場合は園にも罹患にした旨をつたえておきましょう。
ヘルパンギーナの症状と予後
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナの症状は以下のものがあります
- 発熱
- のどの痛み
- 食欲不振
- 唾液の増加
- 口内の後部(咽頭や口蓋扁桃周辺)に現れる小さな水疱や潰瘍
ヘルパンギーナは初期症状として、39度近くの高熱が突然出ることが多く、同時に強い喉の痛み(特に飲み込むときに強い痛み)を伴います。発熱や痛みによって、元気がなくぐったりしている、水分や食事を摂取したがらない、唾を飲み込めずによだれが増すという様子が見られることがあります。
発熱後数日には口の奥の方・上側(軟口蓋、口蓋弓)に小さい水疱が現れます。
症状のピークは感染後2~3日で、発熱や喉の痛みが最も強くなります。
1週間ほど経つ頃には、徐々に症状が軽快していきます。水疱や潰瘍は自然に治癒し、発熱や喉の痛みも和らいできます。
軽快するまでの過程で、高熱による脱水症状が心配される場合があります。こまめな水分補給と安静を確保し、自己回復を促すためにも必要に応じて解熱剤を使いましょう。
ヘルパンギーナの予後
ヘルパンギーナ自体は特別な治療を必要とせずに1週間程度で回復します。
通常、重篤な合併症を引き起こすことは少ないとされていますが、エンテロウイルスによる感染症の中には、稀に重篤な合併症を引き起こすものがあります。具体的には、髄膜炎や脳炎といった神経系の合併症です。
頭痛、嘔吐、首の硬直、意識の変化(呼びかけに反応しない、視線が合わない、弱々しく泣く、しゃべらない、活気がない、ぐったりしているなど)がある場合は、髄膜炎などが疑われるのですぐに受診しましょう。
ヘルパンギーナの診断
ヘルパンギーナの診断は、主に現れている症状に基づいて行われます。
ヘルパンギーナと手足口病の違い
「ヘルパンギーナ」と「手足口病」は夏に乳幼児の間で流行り、発熱や口腔内の水疱という点で似ている部分もあることから気になる方もおられるかもしれません。
ヘルパンギーナと手足口病は、いずれも主にエンテロウイルスによって引き起こされる感染症ですが、厳密には原因となるウイルスの種類には違いがあります。また、症状は似ている部分もありますが、異なる部分もあるのでそれによって診断されます。
【原因ウイルス】
ヘルパンギーナも手足口病もエンテロウイルス属のウイルスによって発症します。
この属には、コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス71型(EV-A71)など複数のウイルスが含まれており、それらはさらにいくつかのグループや群に分類されます。
- ヘルパンギーナの原因ウイルス:主にコクサッキーウイルスA群(特にA16型)
- 手足口病の原因ウイルス:主にコクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型(EV-A71)
【症状】
- ヘルパンギーナ:高熱(39度以上)、口腔内の水疱、のどの痛み
- 手足口病:手のひら・足の裏・口腔内に現れる発疹や水疱が主症状、発熱はこれらの症状に随伴した症状で38度以下と軽度のことが多い
口腔内の水疱や発熱といった似ている部分もありますが、手足に水疱や発疹があるかどうかなどで診断が異なります。
ヘルパンギーナの治療法
ウイルス性の感染症なので特効薬はありません。
症状に応じた対症療法を行い軽快するのを待ちます。1週間程で症状は軽快します。
- 解熱鎮痛剤による発熱や痛みの緩和
- 十分な水分補給、必要に応じて点滴
発熱や喉の痛みが激しい場合、特に小児では水分摂取が困難になることがあります。このような状況では、脱水を防ぐために点滴治療が必要となることがあります。
脱水の兆候には、乾燥した口、泣いても涙が出ない、尿の量が減るといったものがあります。これらの症状がある場合は、医師に伝えましょう。
ヘルパンギーナにかかった時の対応
こまめな水分補給と栄養補給ができる工夫をしましょう
のどの痛みが強いので、水分をとりたがらないことがあります。また、発熱もあることから、脱水状態に陥りやすくなります。一口ずつでいいので、こまめに水分をとれるようにしましょう。のどの痛みが強い場合は、刺激の少なくのどごしの良いものが摂取しやすいです。飲み物では麦茶やスポーツ飲料、冷めたスープ。食べ物なら、ゼリー、プリン、ヨーグルト、卵豆腐、冷ましたうどんなどです。本人が摂取しやすそうなものを、用意してあげましょう。
家庭内での感染拡大を予防しましょう
感染は、飛沫、接触、便口感染で起こるので、流水での手洗いや、手指消毒を十分に行いましょう。また、症状が軽快した後も飛沫からから1〜2週間、便から2〜4週間にわたってウイルスが排出されます。おむつ交換後に手洗いが不十分だと汚染された手指を介して感染が広がるので、手指衛生を徹底しましょう。
また、家庭内で人がよく触る部分(ドアノブ、スイッチ、リモコンなど)や子どもがよく触るもの(オモチャなど)をエタノール消毒などで定期的に洗浄・除菌しておくことは、感染拡大を防ぐ上で有効です。
よくある質問
Q:ヘルパンギーナは大人にもうつりますか?
A:ヘルパンギーナは子どもから大人にも感染する可能性があります。ただし、成人の場合、免疫システムが成熟しているため、症状が軽度あるいは無症状であることがあります。
Q: ヘルパンギーナはどれくらいの期間で治りますか?効く薬はありますか?
A:ヘルパンギーナに効く薬はなく、解熱鎮痛剤を使用した対症療法によって自然に症状が軽快していくのを待ちます。1週間程度で軽快します。
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カテゴリー:夏に多い子供の病気 投稿日:2024-05-30
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