手足口病

手足口病の症状・診断・治療

手足口病とは?

手足口病の症状・診断・治療について、こころみクリニックの小児科医専門医が解説していきます。

  • 手・足・口に赤いプツプツとした発疹や水疱が出現する疾患。乳幼児を中心に夏に流行します
  • コクサッキーウイルスA群(6・10・16型)、エンテロウイルス71型というウイルスに感染することで発症します
  • 感染力が強く、幼稚園や保育所などの集団生活で罹患しやすい
  • 感染源は、感染者の鼻水、唾液、便、水泡がつぶれた時に出てくる浸出液など
  • 治療は対症療法。多くの場合は軽度で、1週間程度で自然に回復します
  • 手足口病には、明確な出席停止の義務はありません。発熱・のどの痛み・発疹などの症状が無く元気であれば、幼稚園や保育園に登園することができます

手足口病とは、その名の通り、手のひらや足の裏を含めた手足、口の中、時にはお尻などに、赤いプツプツとした発疹や水疱(水ぶくれ)ができる病気です。
コクサッキーウイルスA群(6・10・16型)、エンテロウイルス71型というウイルスに感染することで発症します。
口の中の水泡は痛みを伴いますが、手足にできる水疱疹には必ずしも痛みや痒みが伴うといわけではありません。

生後6ヶ月~5歳頃の乳幼児に好発するとされていて、幼稚園や保育園などの施設内で集団感染が起こりやすいことも特徴です。その理由には、子ども同士の生活距離が近いこと、濃厚な接触が起こりやすい環境、清潔/不潔の衛生観念が十分で無いことが挙げられます。
また、原因となるウイルスに対する抗体が獲得できていないことから、感染した子どもの多くが発病すると考えられます。

学校保健安全法では、手足口病の出席停止は義務付けられていません。ですので、発熱や痛みが無く、本人が元気に登園できるのであれば登園しても良いことになっています。
ただし、手足口病は感染力が強く、症状が無くなってからもウイルスは排出されます。潜伏期間が3~5日あるので、園での生活中はマスクの着用や手洗いを十分にするなど、しばらく注意していた方が良いかもしれません。
同じ理由で、兄弟児が手足口病で自宅療養している場合にも、その旨を伝えた方が良いでしょう。

手足口病の症状と予後

  • 手や足に水疱疹(水ぶくれや赤いプツプツが混ざったようなもの)がみられる
    ※お尻にも出現することがある
  • 口の中に、水疱(水ぶくれ)やびらん/潰瘍(粘膜の表面/粘膜の深くまでが一部剥げる)がみられる
  • 軽度(38度前後)の熱が見られることもある
  • 症状が消失してから、1~2ヶ月後に手足の爪が一次的に脱落する場合もある

発症した患者さんの大部分は予後良好で、1週間程度で回復します。ですが、まれに脊髄炎や脳炎、心筋炎などを引き起こす場合があります。

手足口病の診断

手足口病の診断は、主に現れている症状に基づいて行われます。

手足口病の治療法

手足口病の症状・診断・治療について、こころみクリニックの小児科医専門医が解説していきます。

手足口病の治療は、主に対症療法になります。
基本的に経過観察をしながら、発熱やのどの痛みに対して解熱鎮痛剤を用いて過ごします。

まれに脊髄炎や脳炎などの中枢神経系の合併症や心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などの合併症を起こす場合があります。
手足口病の症状と異なる症状がある場合や、いつもと様子が違うなと感じた場合は医療機関を受診しましょう。

合併症へ移行している場合に現れる症状については、次の「手足口病にかかった時の対応」の項で詳しく説明しています。気になる方はそちらも読んでみて下さい。

手足口病にかかった時の対応

子どもが手足口病にかかった時には、「子どもの回復を促すための対応」「家庭内での感染拡大を予防する対応」「合併症の早期発見」の3つの対応が必要になってきます。

子どもの回復を促すための対応

こまめな水分補給と栄養補給

のどの痛みで水分摂取が少なくなると、脱水状態に陥りやすくなります。少ない量でいいので、こまめに水分をとれるようにしましょう。のどの痛みを考えると、刺激が少なくのどごしの良いものが摂取しやすくなります。飲み物では、麦茶やスポーツ飲料、冷めたスープ。食べ物なら、ゼリー、プリン、ヨーグルト、卵豆腐、冷ましたうどんなどです。本人が摂取しやすそうなものを、用意してあげましょう。

家庭内での感染拡大を予防する対応

流水での手洗いとマスクの装着、エタノール消毒による手指衛生

感染源は、咳や鼻水、便、潰れた水疱からの浸出液などになります。
流水と石鹸でしっかりと手洗いをしましょう。
また、症状が無くなってからもこれらの分泌物の中にウイルスの排出は続くと言われています。咳や鼻みずからは1~2 週間、便からは数週〜数か月間に渡って排出されます。
症状がある間だけでなく、症状が落ち着いてからも、手洗いやおむつの取り扱いには注意しましょう。

エタノールでの清掃や消毒

兄弟児がいて同じおもちゃで遊ぶ場合は、しばらくは遊ぶおもちゃを別々に分けるなどの工夫も必要になります。おもちゃを分けることができない場合は、おもちゃをエタノールで消毒するなどして対応しましょう。また、家庭内で人が良く触る場所はエタノールが含まれている消毒剤でこまめに拭くようにしましょう。

タオルや食器の共有をやめる

タオルや食器を共有すると、ウイルスを家庭内で広げてしまいます。ですので、タオルは共有せず、別のものを使いましょう。また、食事も別々のお皿に取り分けるようにしましょう。

合併症の早期発見

症状や治療の頁でも触れましたが、手足口病は稀に脊髄炎や脳炎などの中枢神経系の合併症や心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺などの合併症を起こす場合があります。
お子さんが1歳未満の乳児の場合は自分で訴えることができないので、保護者の方の観察が重要になります。

以下のような症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

  • 高熱や2日以上続く発熱がある
  • 頭や首を痛がる
  • 嘔吐する
  • 呼吸が速い、息苦しそう
  • おしっこが出ていない、または、おしっこは出るが少量で色がとても濃い
  • 意識の変化がある(呼びかけに反応しない、視線が合わない、弱々しく泣く、しゃべらない、活気がない、ぐったりしている、など)

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:夏に多い子供の病気  投稿日:2024-05-31

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

プール熱(咽頭結膜熱)の症状・診断・治療

プール熱(咽頭結膜熱)の症状・診断・治療 目次 プール熱(咽頭結膜熱)とは? プール熱(咽頭結膜熱)の症状 プール熱(咽頭結膜熱)の診断 プール熱(咽頭結膜熱)の治療法 プール熱(咽頭結膜熱)にかかった時の対応 プール熱… 続きを読む プール熱(咽頭結膜熱)の症状・診断・治療

カテゴリー:夏に多い子供の病気  投稿日:

アデノウイルス感染症

アデノウイルス感染症の代表的な2つの病気 目次 アデノウイルス感染症とは 咽頭結膜熱(プール熱) 流行性活結膜炎(はやり目) アデノウイルス感染症の予防/感染拡大防止の方法 アデノウイルス感染症とは アデノウイルスという… 続きを読む アデノウイルス感染症

カテゴリー:夏に多い子供の病気  投稿日:

エンテロウイルス感染症

エンテロウイルス感染症 総論(手足口病、ヘルパンギーナ) エンテロウイルス感染症とは エンテロウイルス感染症とは、エンテロウイルス属に属するウイルスによって引き起こされる感染症のことを言います。 エンテロウイルスには多く… 続きを読む エンテロウイルス感染症

カテゴリー:夏に多い子供の病気  投稿日:

人気記事

【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)  投稿日:

SGLT2阻害薬の効果と副作用

SGLT2阻害薬とは? SGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬は糖尿病の治療ガイドラインで定められている治療薬のひとつで、膵臓ではなく腎臓に作用することで血糖値を改善する働きがあります。 SGLT2は腎臓に存在する… 続きを読む SGLT2阻害薬の効果と副作用

カテゴリー:糖尿病治療薬  投稿日:

【医師が解説】脂質異常症(高脂血症)の症状・診断・治療

脂質異常症(高脂血症)とは? 脂質異常症とは、 悪玉コレステロール(LDL)の上昇 中性脂肪(TG(トリグリセリド))の上昇 善玉コレステロール(HDL)の低下 のどれかを満たした時に診断される病気です。 昔は高脂血症と… 続きを読む 【医師が解説】脂質異常症(高脂血症)の症状・診断・治療

カテゴリー:脂質異常症(高脂血症)  投稿日: