ロタウイルス

ロタウイルス感染症の症状とご自宅で療養するときの注意点

ロタウイルス感染症について

ロタウイルス感染症は、お子さんがロタウイルスに感染することにより発症します。

3月から5月にかけて胃腸炎が流行しており、その多くがロタウイルスによる胃腸炎です。

日本における感染者数は年間80万人ほどで、そのうち26,500~78,000人ほどが入院加療しています。

ロタウイルスの感染力は非常に強く、少しのウイルスが体内に入るだけで感染します。

5歳までにほぼすべてのお子さんがロタウイルスに感染すると言われる程です。

ロタウイルス感染症では、初めて感染するときに最も強い症状が出ます。

ご両親や周囲の大人はこれまでに何度もロタウイルスに感染しており、症状が出ないことも多いです。

一方で、初めて感染するお子さんには強い症状が出現します。

重症化しやすいのは、ロタウイルスに初めて感染する生後6か月~2歳のお子さんです。

ロタウイルス感染症の潜伏期間と症状

ロタウイルス感染症の潜伏期間は2~4日です。

主な症状は次の通りです。

  • 白い水のような下痢
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 発熱
  • 腹痛

これらの中でも、白い水のような下痢と嘔吐を繰り返すことが特徴的です。

通常は1~2週間で回復しますが、症状がひどくなると入院が必要となります。

急激に容態が悪くなることもあるため、決して油断はできません。

ロタウイルス感染症の合併症として、けいれん、肝臓の機能障害、腎不全、脳炎・脳症、心筋炎があります。

合併症によって死に至る場合があるため、注意が必要です。

2000年~2012年の統計調査によると、毎年2~18人のお子さんがロタウイルス感染症によって命を落としています。

後述の症状がある場合には、速やかに医療機関を受診させましょう。

ロタウイルス感染症で受診が必要となる症状

お子さんが嘔吐や下痢を繰り返し、次のような症状があれば速やかに医療機関を受診させてください。

入院して加療が必要になる場合があります。

  • 水分を補給できていない(飲水後に嘔吐を繰り返す)
  • ぼーっとしており呼びかけてもすぐ眠ってしまう
  • ぐったりしている
  • けいれんを起こしている

ロタウイルスの感染経路と感染防止対策

ロタウイルスの感染経路

ロタウイルスにおける主な感染経路は接触感染(経口感染)です。

吐物や便を処理した後、十分に消毒しないまま口に触れることで感染が成立します。

また、排せつ物から浮遊したロタウイルスによってエアロゾル感染することもあり注意が必要です。

ロタウイルス感染症における感染防止対策

ロタウイルス感染症の感染防止対策として、接触感染とエアロゾル感染を防止する必要があります。

具体的な感染防止対策は次の通りです。

  • お子さんの吐物や便を処理するときに使い捨ての手袋を着用する
  • 排せつ物を処理する時にはマスクを着用しエアロゾル感染を防ぐ
  • 排せつ物を処理した後はポリ袋に入れて封をして廃棄する
  • 吐物を処理した後は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)で消毒する
  • 石鹸と流水でしっかりと手洗いする

ロタウイルスはアルコールが効きにくい特徴があります。

そのため、手洗いの際には石鹸と流水を使ってしっかりと手を洗いましょう。

洗い残しのないよう、指輪や時計を外して手洗いすることが望ましいです。

ロタウイルスの診断(検査)方法

ロタウイルス感染症の診断には、お子さんの便を使って検査をする方法が一般的です。

この方法では、15分ほどで結果が出ます。

医師が必要と認めた場合に検査が実施され、診断の補助に使用されます。

ただし、ロタウイルスに感染していても誤って陰性になる場合があるため、最終的にはお子さんの症状や、周辺の流行状況、家族の状況などから医師が診断することもあります。

ロタウイルスの治療方法

ロタウイルスの治療は対症療法

ロタウイルスへの特効薬はありません。

そのため、症状に対して治療を行う対症療法が中心となります。

具体的には次のような治療をします。

  • 発熱があれば解熱剤
  • 整腸剤による腸内環境の改善
  • 脱水を防止するための水分補給(お口からの水分補給が難しければ点滴)

ご自宅での療養方法

ロタウイルスに感染したお子さんをご自宅で療養させる場合には、水分や栄養を補給しつつ安静に過ごすことが大切です。

下痢止めのお薬(止しゃ薬)は、ロタウイルスを体内に長期間残し回復を遅らせてしまうことから、有効とは言えません。

ロタウイルスによってダメージを受けた腸の状態を整えるために、整腸剤を服用させてあげましょう。

脱水の症状がひどくなると、点滴が必要になるため、注意が必要です。

ロタウイルス感染症に対するワクチン

ロタウイルス感染症でお子さんを重症化させないようにするためには、ワクチンの接種が有効です。

ロタウイルス感染症では、初めてウイルスに感染するときに最も強い症状が出現し、重症化するリスクがあります。

ワクチンを接種しておくことで体内に抗体を持つことができ、重症化を防止することが期待できます。

ロタウイルス感染症における保育園登園の目安

お子さんがロタウイルス感染症にかかった場合、回復するまでは保育園に登園できません。

登園の目安としては、「嘔吐や下痢の症状が治まり、普段通り食事できるようになること」とされています。

下痢だけで元気という場合でも、他のお子さんへ感染させないためにも、症状が治まるまでは自宅で安静にさせましょう。

ロタウイルス感染症のまとめ

ロタウイルスは感染力が強く、少量のウイルスを吸入しただけで感染してしまいます。

初めてロタウイルスに感染する生後6か月から2歳のお子さんは重症化する可能性があるため、注意が必要です。

次のような症状がある場合には、医療機関を受診させましょう。

  • 水分を補給できていない(飲水後に嘔吐を繰り返す)
  • ぼーっとしており呼びかけてもすぐ眠ってしまう
  • ぐったりしている
  • けいれんを起こしている

ロタウイルスに感染したお子さんを療養する際には、接触感染やエアロゾル感染に留意して感染拡大を防止しましょう。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:冬に多い子供の病気  投稿日:2024-05-30

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

RSウイルス感染症

RSウイルスの症状・診断・治療 目次 RSウイルスとは RSウイルスの潜伏期間と症状 RSウイルス感染症に注意が必要なお子さま RSウイルス感染症で受診が必要な症状 RSウイルスの感染経路と感染防止対策 RSウイルスの予… 続きを読む RSウイルス感染症

カテゴリー:冬に多い子供の病気  投稿日:

小児のインフルエンザ

小児のインフルエンザの症状や潜伏期間・隔離期間について 目次 インフルエンザとは インフルエンザの潜伏期間と症状 インフルエンザで重症化リスクの高い子供 インフルエンザで受診が必要な症状 インフルエンザの感染経路と感染防… 続きを読む 小児のインフルエンザ

カテゴリー:冬に多い子供の病気  投稿日:

人気記事

【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)  投稿日:

急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについて

急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについても医師が解説 目次 扁桃炎とは 原因と種類 症状 診断方法 治療 回復期間:何日くらいで治るのか? 予防策 まとめ 扁桃炎とは 扁桃腺は、口と喉の間に位置し、体内に侵入する… 続きを読む 急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについて

カテゴリー:喉の病気  投稿日:

SGLT2阻害薬の効果と副作用

SGLT2阻害薬とは? SGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬は糖尿病の治療ガイドラインで定められている治療薬のひとつで、膵臓ではなく腎臓に作用することで血糖値を改善する働きがあります。 SGLT2は腎臓に存在する… 続きを読む SGLT2阻害薬の効果と副作用

カテゴリー:糖尿病治療薬  投稿日: