糖尿病治療薬こころみ医学

カナグル(一般名:カナグリフロジン)の効果と副作用

果物から開発された糖尿病治療薬

カナグルは、りんごや梨に含まれる物質に数々の改良を加えることで開発され、世界80ヵ国以上で承認されています。(2022年5月現在)

カナグルは飲むだけで血糖値を改善することができるため、ダイエット目的での適応外使用が問題にもなっています。

ここでは、カナグルの効果と副作用について、その作用の仕組みから詳しく説明します。

カナグルとは?

カナグルはSGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬に分類されるお薬で、2型糖尿病と2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に使用できます。

慢性腎臓病はCKD(chronic kidney disease)とも称され、慢性に経過するすべての腎臓病を指します。

SGLT2の中では、カナグルとフォシーガの2剤が慢性腎臓病に適応をもっています。

カナグルは商品名で、一般名(成分名)はカナグリフロジンです。

カナグルの適応と効果

カナグル(一般名:カナグリフロジン)の適応としては、以下が認められています。

  • 2型糖尿病
    あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること
  • 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
    末期腎不全又は透析施行中の患者を除く

カナグルの用法

カナグルの用法は、以下のようになっています。

<2型糖尿病・2型糖尿病を合併する慢性腎臓病>

  • 100mgを1日1回朝食前または朝食後に服用する

カナグル開発時の臨床試験ーⅡ型糖尿病

食事や運動または使用している血糖降下薬で、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者さん127例を対象に、カナグル錠100mgを1日1回52週間投与したときの結果は次表の通りです。

2型臨床試験でのカナグルの結果を医師が詳しくお伝えします。

カナグル開発時の臨床研究ー慢性腎臓病

2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者さんを対象に、カナグル錠100mgを標準治療に1日1回115週間(平均値)追加したときの結果は次表の通りです。

腎臓病に対するカナグルの効果を示したグラフを医師が解説します。

カナグル適応外使用の実情

2型糖尿病の患者さんがカナグルを服用すると、6ヵ月で約2.6kg、1年間で約3.0kgの体重減少が報告されています。(カナグル開発時の臨床試験)

しかしながら高額な費用をかけてまでの体重減少が期待できるお薬ではありません。

メディカルダイエットという響きに惑わされず、その費用をもっと他の楽しいことに使ってください。

ダイエット目的での服用は全額自己負担なので、膀胱炎等の副作用が発生しても自己責任で、重大な副作用が生じた場合の救済制度の対象外ともなります。

カナグルは2型糖尿病のお薬なので、ダイエット目的での服用はおすすめできません。

カナグルの効果とメカニズム

まず最初に、高血糖時の尿糖排泄について説明します。

カナグルの効果とメカニズムについて医師が詳しく解説します。

  1. 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
  2. 濾過された糖は主にSGLT2(※)の働きで血液中に再吸収されます。

再吸収しきれなかった糖が尿として排泄されます。
※SGLT2:糖を運ぶたんぱく質のひとつ。SGLT1・SGLT2の2種類あり、腎臓で糖の再吸収に関わるのは主にSGLT2である。

カナグルを服用するとどうなるでしょうか。

カナグルの効果とメカニズムについて、医師が詳しく解説している画像です。

  1. 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
  2. カナグルがSGLT2による再吸収を妨げます。
  3. 再吸収しきれない糖が腎臓で増えるため、尿中へ排泄される糖も増えます。

結果として、カナグルを服用すると血液中へ再吸収される糖が減少するため、血糖値が低下します。

同時に、血液中へ再吸収されるナトリウム量も減少するため、腎臓への負担が軽減されます。

その他、尿量の増加に伴う体内水分量の減少をはじめとする様々な要因もあり、腎臓を巡る血液の循環が改善され、腎臓は老廃物や余分な水分を効率よく体から排出できるようになることが示唆されています。

最終的に、腎障害の進行を遅らせることが期待されています。

カナグルの副作用

カナグルの主な副作用として

  • 膀胱炎等の尿路感染
  • 頻尿
  • 便秘

が報告されています。

また、重篤な副作用としては、低血糖、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症、脱水、ケトアシドーシスがあります。

※詳しく知りたい方は、『SGLT2阻害薬の効果と副作用』をお読みください。

その他、下肢切断の副作用について、海外のカナグル錠の添付文書に警告表示が掲載されていましたが、既に取り下げられています。

その理由は、特に慎重なモニタリングが行われている場合には、下肢切断リスクが根拠となった論文より低いことが示唆されたからです。

カナグル錠の下肢切断リスクについて

下肢切断の発現機序は、現時点では明らかになっていません。

カナグル開発時の国内の臨床試験では、下肢切断関連の副作用は報告されていませんが、海外の臨床試験 (CANVAS及びCANVAS-R )において下肢切断の発現頻度が高かったことが報告されています。

また、下肢切断リスクが有意に上昇するのは65歳以上の心血管疾患がある患者だったという報告もあります。a)

そもそも、2型糖尿病患者さんは下肢の潰瘍や壊死のリスクが高いため、予防的フットケアの重要性を認識することが大切です。

a)Fralick M, et al:BMJ 370, m2812, 2020

カナグルの剤型と薬価

カナグルの剤型と薬価は以下の通りです。

  • 発品:100mg錠 168.8円
  • 後発品:未発売
    ※2023年4月現在

カナグルのまとめ

  • カナグルは、2型糖尿病および2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に使えるお薬です。
  • カナグルを服用すると腎臓において血液中へ戻る糖が減少するため、血糖値が低下します。
  • 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者さんにおいて、カナグル服用群ではプラセボ群よりも慢性透析療法への移行例が少ないことが報告されています。

執筆・監修

※2022年4月、田町三田院オープン!
磁気刺激による新たな心の治療、東京横浜TMSクリニック併設!
こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

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大澤亮太

  • 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
  • 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
  • 学会:日本精神神経学会

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