フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の効果と副作用

腎臓・心臓に効果の期待できる糖尿病治療薬

フォシーガは世界110ヵ国以上で承認されているお薬で、1型糖尿病、2型糖尿病、慢性腎臓病、慢性心不全に使用できます。

フォシーガは膵臓に作用せず血糖値を改善することができます。

しかしながら、ダイエット目的での適応外使用が問題にもなっています。

ここでは、フォシーガの効果と副作用について、その作用の仕組みから詳しく説明します。

フォシーガとは?

フォシーガは、SGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬として世界で初めて2型糖尿病の承認を取得し、110ヵ国以上で承認されています。

フォシーガは錠剤で、1型糖尿病、2型糖尿病、慢性腎臓病、慢性心不全に使えるお薬です。

また、インスリン治療とも併用できるのが大きな特徴といえます。

フォシーガは商品名で、一般名(成分名)はダパグリフロジンです。

フォシーガは先発品で、ジェネリックは販売されていません。

フォシーガの由来とは?

患者さんのため、患者家族のため、医師のためをあらわす「for」と、inhibit glucose absorption(糖の吸収を阻害する)の頭文字「iga」を掛け合わせる(×)ことで、他の血糖降下薬にはない新たな作用であることを表現しています。

フォシーガの適応と効果

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の適応としては、以下が認められています。

  • 1型糖尿病
    あらかじめ適切なインスリン治療を十分に行った上で、血糖コントロールが不十分な場合に限ること
  • 2型糖尿病
    あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮すること
  • 慢性腎臓病
    末期腎不全又は透析施行中の患者を除く
  • 慢性心不全
    慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る

フォシーガの用法

フォシーガの用法は、以下のようになっています。

<1型糖尿病・2型糖尿病>

  • 5mgを1日1回服用する(適宜増量)

<慢性腎臓病・慢性心不全>

  • 10mgを1日1回服用する

1型糖尿病・2型糖尿病

1型糖尿病と2型糖尿病の両方に効果があることを疑問に思われる方もいるかもしれませんが、それについては開発時の臨床試験を簡単にご紹介します。

フォシーガの糖尿病に対する臨床試験での効果を医師が解説します。

【1型糖尿病に対する臨床試験】

対象:インスリン製剤で血糖コントロールが不十分な1型糖尿病患者271例

方法:フォシーガ錠5mgを 1日1回52週間投与

結果:HbA1cは服用開始前で8.45±0.69%、最終評価時までの変化量は-0.11%であった。(NGSP値:平均値±標準偏差)

【2型糖尿病に対する臨床試験

対象:食事や運動または使用している血糖降下薬で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者249例
方法:フォシーガ錠5mgまたは10mg(増量時)を 1日1回52週間投与

結果:HbA1cは服用開始前で7.53±0.761%、最終評価時までの変化量は-0.66±0.711%であった。(NGSP値:平均値±標準偏差)

慢性腎臓病

糖尿病合併の有無を問わない慢性腎臓病患者さんを対象に、フォシーガ錠10mgを標準治療に追加したときの結果は次の表の通りです。
(投与期間:最長39.2ヵ月)

フォシーガの腎臓への効果を調べた臨床研究を医師がご紹介します。

慢性心不全

慢性心不全患者さんを対象に、フォシーガ錠10mgを標準治療に追加したときの結果は次の表の通りです。
(投与期間:最長42ヵ月)

フォシーガの心不全への効果の臨床研究を医師が紹介します。

フォシーガの効果とメカニズム

それではフォシーガは、どのようにして効果を発揮するのでしょうか?

腎臓に対する作用と心臓に対する作用に分けて、ご紹介していきます。

腎臓でのメカニズム

まず最初に、高血糖時の尿糖排泄について説明します。

フォシーガの腎臓への作用を、医師が詳しく解説します。

  1. 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
  2. 濾過された糖は主にSGLT2(※)の働きで血液中に再吸収されます。
  3. 再吸収しきれなかった糖が尿として排泄されます。

※SGLT2:糖を運ぶたんぱく質のひとつ。SGLT1・SGLT2の2種類あり、腎臓で糖の再吸収に関わるのは主にSGLT2。

フォシーガを服用するとどうなるでしょうか。

フォシーガの腎臓への作用について、医師が前後を比較して図表で説明します。

  1. 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
  2. フォシーガがSGLT2による再吸収を妨げます。
  3. 再吸収しきれない糖が腎臓で増えるため、尿中へ排泄される糖も増えます。

結果として、フォシーガを服用すると血液中へ再吸収される糖が減少するため、血糖値が低下します。

同時に、血液中へ再吸収されるナトリウム量も減少するため、腎臓への負担が軽減されます。

その他、尿量の増加に伴う体内水分量の減少をはじめとする様々な要因もあり、腎臓を巡る血液の循環が改善され、腎臓は老廃物や余分な水分を効率よく体から排出できるようになることが示唆されています。

最終的に、腎障害の進行を遅らせることが期待されています。

心臓でのメカニズム

フォシーガはSGLT2を阻害するため、尿量が増えて体内の水分量が減ります。

結果として、尿を出すために心臓が頑張らなくてもよいので、心臓の負担が軽減されます。

(通常、心臓がポンプのような働きをすることで、尿が体から排出されています。)

フォシーガの心臓へのメカニズムについて、医師が詳しく解説します。
その他、フォシーガは、炎症抑制、心機能の改善等の心臓に有益な作用をもたらすことが知られています。

フォシーガの副作用

フォシーガの主な副作用として、

  • 膣カンジダ症等の性器感染
  • 膀胱炎等の尿路感染
  • 体液量減少
  • 便秘
  • 口渇
  • 頻尿
  • 尿量増加
  • 陰部そう痒症

が報告されています。

また、重篤な副作用としては、低血糖、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症、脱水、ケトアシドーシスがあります。

※詳しく知りたい方は、『SGLT2阻害薬の効果と副作用』をお読みください。

フォシーガの剤型と薬価

フォシーガの剤型と薬価は以下の通りです。

  • 先発品:5mg錠 178.7円
  • 10mg錠 264.4円
  • 後発品:未発売

フォシーガのまとめ

  • フォシーガは1型糖尿病、2型糖尿病、慢性腎臓病、慢性心不全に使えるお薬です。
  • フォシーガを服用すると腎臓において血液中へ戻る糖が減少するため、血糖値が低下します。
  • フォシーガはSGLT2阻害薬に分類されるお薬で、インスリン治療と併用できます。

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大澤 亮太

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大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

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精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:糖尿病治療薬  投稿日:2023-06-01

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