おたふくかぜの予防接種の時期・費用
おたふくかぜとは?
おたふくかぜはおたふくかぜウイルスの感染により、片側あるいは両側の唾液を作る耳下腺が腫れる病気です。冬から初夏にかけて患者数が多くなり、3〜6歳児が60%を占めます。中でも4歳児がもっとも多いです。
おたふくかぜウイルスは、飛沫感染、接触感染によりうつり、患者1人から11〜14人へ感染させるほどの強い力を持っています。これまで3〜4年ごとの周期で患者の増減を繰り返していましたが、2018年からはかなり減少した数で推移しています(図1)。
図1. 小児科1定点あたりの患者報告数
(国立感染症研究所 感染症発生動向調査年別一覧-定点把握-)
より作成
感染して2〜3週間の潜伏期間を経てから、特徴的な耳下腺の腫れと痛み、発熱などの症状が出てきます。症状の出ない不顕性感染は30〜35%で、特に1歳児の80%では症状が出ません。4歳以降では90%位の人に症状が出て、大人の方が重症化しやすいです。
合併症には3〜10%で発生する無菌性髄膜炎や致死率の高い脳炎、0.2〜1%で発症し後々まで影響をおよぼす難聴などがあり注意が必要です。
おたふくかぜの予防接種
おたふくかぜを予防する方法はおたふくかぜワクチンの接種のみです。ワクチンを接種すれば、90%前後の人が予防に適した免疫レベルになります。しかし、日本におけるおたふくかぜワクチンの接種率は低く約40%です。2018年から患者数はかなり減少しているものの、免疫のない人が多いため流行する可能性を秘めています。
おたふくかぜワクチンは以前、MMR(麻しん・おたふくかぜ・風しん混合)ワクチンで接種されていましたが、おたふくかぜワクチンを原因とする無菌性髄膜炎が多く発生したために中止されました。現在おたふくかぜワクチンは単独での任意接種です。
欧米では、1回の接種で73〜91%、2回の接種で79〜95%の人はおたふくかぜが流行したときに予防できていました。世界では2回の定期接種が標準で121カ国が実施していますが、日本はいまだに任意接種であるため定期接種の導入を検討中です。
予防接種の重要性
おたふくかぜワクチンは任意接種のため、受けるべきか悩まれる方も多いでしょう。予後は良好な場合が多い病気ですが、致死率の高い脳炎や言葉の習得に悪い影響を与える難聴を合併するリスクが潜んでいます。回避するにはおたふくかぜウイルスからの感染予防が重要です。
おすすめの予防接種の時期
おたふくかぜワクチンは2回の接種が推奨されます。日本小児科学会による接種した方がよい時期・年齢は下記のとおりです。
- 1回目:1歳0ヶ月〜1歳3ヶ月
- ・2回目:5〜6歳
接種するのを忘れた、いつ受けるかわからなかったなど上記に沿わない時期での接種においては、1回目と2回目は28日以上間隔をおいてください。
予防接種の効果
世界ではおたふくかぜワクチンを1回接種している国は患者数が88%以上減り、2回接種している国は97%以上も減少しました。
日本で使用されているおたふくかぜワクチンでは、接種後におたふくかぜを発症したのは乳幼児241名のうち1名のみで、さらに別の報告では家庭内での兄弟間感染を94.3%も減らしました。
予防接種の効果がある期間
おたふくかぜワクチンを接種すると4〜6週間で免疫がつき、その効果は約12年です。しかし接種から5年経過すると、4年目までより効果が低下してくるとも報告されています。1歳になってすぐに接種したら、5年後の小学校入学前に2回目の接種をすれば学校生活は安心でしょう。
副反応と対応
予防接種は免疫がつくばかりでなく副反応が生じるリスクもありますが、自然に感染する場合と比べてもかなり低い確率です。4週間以内に発生する場合が多いでしょう。
副反応
副反応には下記があります。
- 耳下腺炎
- 発熱
- かぜ症状
- 無菌性髄膜炎
- 脳炎
- けいれん
2023年の調査によると、1歳の初回接種での発熱やかぜ症状が多く、問題となる無菌性髄膜炎は1〜6歳児において0.0018〜0.02%と稀でした。そして無菌性髄膜炎の発生は接種する年齢が低いほど下がります。
副反応が出たときの対処方法
発熱やかぜ症状、頭が痛い、吐くなどの症状があれば医療機関を受診しましょう。もし副反応で重い健康被害が出たならば、救済措置として給付金が払われます。
予防接種の費用と助成制度
おたふくかぜワクチンは任意接種でありどの年代でも有料です。これらも要因となり国内での接種率は40%と低い水準にとどまっています。そこでおたふくかぜの流行を防ぎ合併症を発症させないように、おたふくかぜワクチンの接種に助成金を出している自治体があります。
接種費用の目安
1回の接種費用は医療機関によって異なりますが、3,000〜8,000円程度です。
自治体の助成金制度
助成対象者や助成金額には自治体によって違いがあります。
助成対象は「1〜6歳(就学前)」が多く、日本小児科学会がおすすめする接種時期に合わせています。
助成金額は1,000〜5,000円以上と幅があるものの、「3,000〜4,000円未満」が多いです。医療機関の窓口で助成金額との差額を払う、一旦全額支払いした後に口座へ助成金が支払われるなど自治体によって方法は様々です。
おたふくかぜワクチン接種に対する助成金制度を設置しているのは、一部の自治体です。お住まいの地域が該当するかどうかは、自治体のサイトや役所で確認してください。
予防接種後のケア
おたふくかぜワクチン接種後30分はアナフィラキシーを起こすかもしれなので、医療機関内で待機させる場合もあります。当日だけでなく4週後くらいまでは副反応が出やすいので、お子さまの様子をよくみておきましょう。いつもと違うようであれば医療機関を受診してください。
接種当日の入浴は可能ですが、接種したところは強くこすらないようにしましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こどものワクチン 投稿日:2024-06-22
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