ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎の原因と治療

ウイルス性胃腸炎とは?

ウイルス性胃腸炎はウイルスに感染して起こる急性の胃腸の病気で、嘔吐や下痢が主な症状です。
乳幼児に多く、特に乳児は重症化しやすいため注意が必要です。
子どものウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスには「ロタウイルス」「ノロウイルス」「腸管アデノウイルス」があり下記の特徴があります。

ロタウイルス

好発時期 3月〜5月
好発年齢 乳幼児(6か月〜2歳までが特に多い)
症状 白くて酸っぱいにおいの水のような下痢
吐き気、嘔吐、発熱、腹痛
潜伏期間 2〜4日

就学前までにほぼすべての子どもが感染すると言われおり、5歳までの急性胃腸炎で入院する患者の40〜50%を占めます。
予防に有効なロタウイルスワクチンは定期接種ですが、生後6週〜14週6日の期間に初回を受けなければなりません。

ノロウイルス

好発時期 11月〜2月
好発年齢 すべての年齢
症状 突然の嘔吐、下痢、腹痛、微熱
潜伏期間 1〜2日

集団発生しやすく、食中毒の患者数の約半分を占めます。
ウイルスで汚染されたカキやサラダなどからの感染が多い傾向です。
症状は1〜2日で軽快します。

腸管アデノウイルス

好発時期 年間
好発年齢 3歳以下
症状 下痢のみの場合もある
発熱・嘔吐は軽度
潜伏期間 3〜10日

食べ物から感染した例はなく、乳幼児の便から感染します。
ほかのウイルスよりも下痢をする期間が長く、1週間以上になる場合もあります。

症状

ウイルス性胃腸炎の主な症状は下痢や嘔吐のほかに以下のものがあります。

下痢 1〜7日間続く
嘔吐 半日の間に何度も繰り返す、あるいは1日1〜2回くらいが2〜3日続く
吐いた物をのどに詰まらせて死亡した事例がある
腹痛 年長時は訴える場合がある
発熱 微熱
出現しない場合も多い

症状が進み一番問題となるのは脱水です。
下痢や嘔吐で体の水分が失われてしまうためです。
特に乳児は脱水症状がひどくなりがちであり、重症化のリスクが高いです。
そのほか、痙攣や肝機能異常、急性腎不全などの合併症も起こります。

年齢が低いと症状をうまく伝えられません。
下痢や嘔吐に加え、以下のような状態が見られたら早めに医療機関で診察を受けましょう。

  • 口や唇が乾いている
  • 尿量が少ない
  • いつもより機嫌が悪い
  • ぐったりしている感じがある
  • 泣いても涙が出ていない

感染経路

胃腸炎の原因となるウイルスの感染経路は「人からの感染」と「食べ物からの感染」の2つです。

人からの感染

便や吐いた物を処理した手や、便や吐いた物から飛び散ったものが口の中に入り感染します。
ノロウイルスでは乾燥して空気中に漂っているものが口に入っても感染しますので、汚染物が乾燥する前に速やかに片付けましょう。

食べ物からの感染

ウイルスで汚染した手で食品を触って調理した、ウイルスが増殖した二枚貝などを十分加熱しなかったなどでウイルスを体内に入れてしまいます。

診断

症状や周囲の感染状況などから診断します。
ウイルスの種類が違っても治療法は同じであるため、ほとんどの症例でウイルスを特定する検査はしません

治療

ウイルス性胃腸炎に効果がある治療法はなく、症状を和らげる対症療法が中心です。
病院およびご家庭でおこなう対応について説明します。

対症療法

ウイルス性胃腸炎の症状を和らげる対症療法には以下のようなものがあります

  • 吐き気止め
  • 整腸剤
  • 解熱剤
  • 脱水がひどいときは点滴で水分・電解質を補給

症状に合わせて医師から処方されます。
医師の判断によりますが、点滴は入院しなくても外来で受けられます。
点滴を1回するだけでもお子さまのきつさは改善されます。

家庭での対応

ご家庭では脱水を防いだり、体力を消耗したりしないような対応をしていきます。

嘔吐したとき

嘔吐してすぐは飲んだり食べたりはさせずに寝かせてあげましょう。
吐き気があるときは飲んでもすぐに嘔吐してしまい、さらに体の水分が奪われてしまいます。
30分くらいして飲めそうであれば、スプーン1杯程度(5cc程度)の水分を、5分くらいの間隔で飲ませ量を増やしていきます。

吐き気が続く場合は、吐き気止めを使い治ってから同じように進めていきます。

水分は経口補水液のように塩分や電解質なども調整されている方が、体に吸収されやすいです。
しかし飲み過ぎると糖分が多くなりすぎるため、体調が回復してきた場合には水やお茶などと組み合わせて与えましょう。

下痢が続くとき

食べ物よりも水分を中心に与えましょう。
腸を刺激して腸の動きが活発化し、腹痛や下痢がひどくなる場合があります。
水分でも、柑橘系のジュースや牛乳、乳酸飲料は控えてください。

食事

症状がある程度落ち着いていれば食事も可能です。
柔らかくて消化のよいものを少しずつ与えていきましょう。

ウイルス性胃腸炎を予防するには?

お子さまがウイルス性胃腸炎にかかり家族内に広めないための予防方法は、「手洗い」「汚染物の処理」「加熱」です。

手洗い

ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスにはアルコール消毒は効果がありません
以下のタイミングで手(指の間、爪の間も)を石鹸でしっかり洗い流水で洗い流してください

  • 汚染物を片付けた後
  • トイレ後
  • 食事前
  • 調理前後

汚染物の処理

吐いたものやオムツを触るときは使い捨ての手袋をしてください。
ビニール袋に汚染物すべてを入れてしっかり口を閉じます。
床や便座が汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を薄めて拭きます。
衣類が汚れた場合も次亜塩素酸ナトリウムに漬け込んで、ほかの人とは別に洗濯してください。
症状がよくなっても2週間程度は便にウイルスを含んでいるので、油断せず対応を継続しましょう。

加熱

食べ物は中心部までしっかり火を通します。
中心部が85〜90℃で90秒以上の加熱が必要です。
そして調理器具は使ったらすぐに洗い、熱湯消毒するのが有効です。

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カテゴリー:通年の子供の病気  投稿日:2024-10-07

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