クループ症候群の特徴や症状
炎症や腫脹など、何らかの異常により上気道が狭くなることで起こる疾患を総称してクループ症候群と言います。
クループ症候群を引き起こす具体的な疾患は次の通りです。
- ウイルス性クループ
- 急性喉頭蓋炎
次の項目では、ウイルス性クループと急性喉頭蓋炎をそれぞれ詳しく解説します。
ウイルス性クループ
ウイルス性クループの特徴
多くのお子さんは軽症で、数日から1週間ほどで症状が落ち着きます。
生後6か月から3歳の乳幼児に多いです。
晩秋から冬にかけて多くみられます。
ウイルス性クループの原因
クループ症候群の原因となるのは次のようなウイルスです。
- パラインフルエンザウイルス
- RSウイルス
- アデノウイルス
- コロナウイルス
- インフルエンザウイルス
感染経路としては、飛沫感染と接触感染です。
ウイルス性クループの症状
1~3日の上気道(鼻やのど)の炎症に続き次のような症状が認められます。
- 声がかれる(嗄声)
- 犬が吠えたような咳(犬吠様咳嗽)
- 息を吸ったときに鳴る「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」という呼吸音(吸気性喘鳴)
- 呼吸困難感
いずれの症状も、鼻やのどの炎症で腫れることにより気道が狭くなることが原因です。
症状のピークは3~4日で、1週間ほどで徐々に改善します。
原因となるウイルスによっては、発熱を伴うこともあります。
基本的には自宅で療養しますが、入院の場合には投薬や酸素投与が必要です。
朝から昼には症状が落ち着き治ったと思われても、夜間に症状が出ることが多いため油断はできません。
夜間に呼吸困難感が強くなったり、咳が止まらなくなったりする場合には救急外来を受診してください。
ウイルス性クループの診断・検査方法
基本的には、お子さんの症状をもとに診断します。
具体的には、犬吠様咳嗽と吸気性喘鳴を確認することでクループ症候群と診断できます。
必要に応じて、頸部(首)のX線撮影を行います。
X線画像上で気道の形状が左右非対称になっているとクループ症候群と診断できます。
ウイルス性クループの治療方法
治療方針としては、気道が狭くなった原因を解消することが重要です。
デカドロン(デキサメサゾン)を経口投与します。
これにより、のどの炎症を抑え症状を改善することが可能です。
加えて、ボスミン(アドレナリン)の吸入を行うこともあります。
即効性があり、投与後すぐにのどの腫れを抑え呼吸困難感を軽減することができます。
ただし、ボスミンの効果は一過性のため、帰宅後に症状が悪化する可能性があることに留意が必要です。
軽傷な場合は、ご自宅での療養となります。
ご自宅では充分な水分補給と加湿をすることが重要です。
次のような症状がある場合には、入院し酸素投与や点滴が必要となります。
- 意識がはっきりしない
- チアノーゼ(血液中の酸素が不足することで皮膚が青っぽく変色する状態)
- 聴診時の呼吸音が明らかに減弱する
- 陥没呼吸(息を吸うときにのどの下、鎖骨の上がペコペコへこむこと)
ごく稀に、のどに管を挿入(挿管)して酸素投与が必要になる場合があります。
急性喉頭蓋炎
急性喉頭蓋炎の特徴と原因
急性喉頭蓋炎はのどの「喉頭蓋」とその周囲に起こる重症の細菌感染症です。
原因の多くはインフルエンザ菌b型(Hib)であり、ワクチンが定期的に接種されるようになった今日では珍しい病気となりつつあります。
しかし、ひとたび急性喉頭蓋炎になると、急速に容態が悪化し気道閉塞によって死に至ることもあります。
急性喉頭蓋炎の症状
急性喉頭蓋炎のお子さんの症状は次の通りです。
- 突発的なのどの痛みや発熱
- 食べ物を飲み込めない(飲み込むと痛い)
- 普段よりもよだれが多い(流涎)
- 呼吸の頻度が極端に多い
- 息を吸ったときに鳴る「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」という呼吸音(吸気性喘鳴)
- 陥没呼吸(息を吸うときにのどの下や鎖骨の上がペコペコへこむこと)
急性喉頭蓋炎では、三脚位と呼ばれる特徴的な姿勢を取ることがあります。
三脚位とは次のような姿勢のことを指します。
- 背をまっすぐに前傾して座る
- 口を開けて下あごを前に出す
- 首を極端に伸ばす
急性喉頭蓋炎の診断・検査方法
次の症状がある場合には、急性喉頭蓋炎を疑います。
- 強いのどの痛み
- 息を吸ったときに鳴る「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」という呼吸音(吸気性喘鳴)
のどに内視鏡の管を挿入して腫れた喉頭蓋を確認することで急性喉頭蓋炎であることを診断できます。
また頸部(首)を側面からX線撮影することで、腫れた喉頭蓋を確認することも可能です。
急性喉頭蓋炎の治療方法
お子さんが急性喉頭蓋炎になってしまった場合、すぐに入院加療が必要となります。
急性喉頭蓋炎のお子さんは酸素が不足しがちなため、気道を確保することが重要です。
のどに管を挿入(挿管)したり、声帯の少し下を切開し管を挿入(気管切開)したりすることで、肺へ直接酸素を投与することもあります。
喉頭蓋の炎症を抑えるために、抗菌薬を投与します。
急性喉頭蓋炎を防止するために必要なこと
急性喉頭蓋炎を防止するためには、Hibワクチンの接種が最も重要です。
大切なお子さんの命を守るためにも、定期的なワクチン接種を心がけてくださいね。
ご自宅の療養時の注意点
クループ症候群では、夜間に容態が悪化することがしばしばあります。
療養中に次のような症状が認められた場合には、早急に医療機関を受診させてください。
- 意識がはっきりしない
- チアノーゼ(血液中の酸素が不足することで皮膚が青っぽく変色する状態)
- 聴診時の呼吸音が明らかに減弱する
- 陥没呼吸(息を吸うときにのどの下、鎖骨の上がペコペコへこむこと)
クループ症候群に関するまとめ
クループ症候群は、炎症や腫脹などの異常により上気道が狭くなることで起こる疾患の総称です。
具体的な疾患は次の通りです。
- ウイルス性クループ
- 急性喉頭蓋炎
ウイルス性クループは生後6か月から3歳の乳幼児に多いです。
比較的軽症のお子さんが多く、数日から1週間ほどで症状が落ち着きます。
ウイルス性クループに特徴的な症状は次の通りです。
- 声がかれる(嗄声)
- 犬が吠えたような咳(犬吠様咳嗽)
- 息を吸ったときに鳴る「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」という呼吸音(吸気性喘鳴)
急性喉頭蓋炎は喉頭蓋とその周囲に起こる重症の細菌感染症です。
急速に容態が悪化し気道閉塞によって死に至ることもある危険な疾患です。
突発的に次の症状が出た場合には、急性喉頭蓋炎を疑いましょう。
- のどが痛くなる
- 食べ物を飲み込めなくなる
- よだれが多くなる
- 呼吸の頻度が極端に多くなる
- 息を吸ったときに「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」と鳴る
- 息を吸うときにのどの下や鎖骨の上がペコペコへこむこと
治療としては、抗菌薬を投与し喉頭蓋の炎症を抑えます。
原因の多くはインフルエンザ菌b型(Hib)であるため、Hibワクチンを定期的に接種することで急性喉頭蓋炎を発症するリスクを大幅に減らすことが可能です。
大切なお子さんを守るためにも、ワクチンの定期的な接種を心がけてくださいね。
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