慢性心不全にも使える糖尿病治療薬
ジャディアンスは2型糖尿病と慢性心不全に使用できるお薬です。
ジャディアンスは膵臓ではなく腎臓に作用することで効果を発揮し、血糖値を改善することができます。
ジャディアンスは誰でも飲むことで糖を排泄させるお薬になりますので、やせる目的での適応外使用が問題にもなっております。
ここでは、ジャディアンスの効果と副作用について、その作用の仕組みから詳しく説明します。
ジャディアンスとは?
ジャディアンスはSGLT2(エスジーエルティー・ツー)阻害薬に分類されるお薬で、2型糖尿病と慢性心不全に使えます。
SGLT2の中では、ジャディアンスとフォシーガの2剤が慢性心不全に適応をもっています。
ジャディアンスは商品名で、一般名(成分名)はエンパグリフロジンです。
ジャディアンスは先発品で、ジェネリック医薬品は販売されていません。
ジャディアンスの用法
ジャディアンスの用法は、以下のようになっています。
<2型糖尿病>
- 10mgを1日1回朝食前または朝食後に服用する(25mgまで増量可)
<慢性心不全>
- 10mgを1日1回朝食前または朝食後に服用する(10mgを超えて有効性確認できていない)
ジャディアンス開発時の臨床試験-Ⅱ型糖尿病
血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者さん109例を対象に、ジャディアンス錠10mgを1日1回52週間投与したときの結果は次表の通りです。
ジャディアンス開発時の臨床試験-慢性心不全
慢性心不全患者さんを対象に、ジャディアンス錠10mgを標準治療に追加したときの結果は次表の通りです。(投与期間の中央値:ジャディアンス群で1.19年、プラセボ群で1.17年)
ジャディアンスの効果とメカニズム
まず最初に、高血糖時の尿糖排泄について説明します。
- 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
- 濾過された糖は主にSGLT2(※)の働きで血液中に再吸収されます。
- 再吸収しきれなかった糖が尿として排泄されます。
※SGLT2:糖を運ぶたんぱく質のひとつ。SGLT1・SGLT2の2種類あり、腎臓で糖の再吸収に関わるのは主にSGLT2である。
ジャディアンスを服用するとどうなるでしょうか。
- 血液中の糖が腎臓で濾過されます。
- ジャディアンスがSGLT2による再吸収を妨げます。
- 再吸収しきれない糖が腎臓で増えるため、尿中へ排泄される糖も増えます。
ジャディアンスを服用すると血液中へ戻る糖が減少するため、血糖値が低下します。
心臓でのメカニズム
ジャディアンスはSGLT2を阻害するため、尿量が増えて体内の水分量が減ります。
結果として、尿を出すために心臓が頑張らなくてもよいので、心臓の負担が軽減されます。
(通常、心臓がポンプのような働きをすることで、尿が体から排出されています。)
その他、ジャディアンスは、炎症抑制、心機能の改善等の心臓に有益な作用をもたらすことが知られています。
ジャディアンスの副作用
ジャディアンスの主な副作用として
- 膀胱炎等の尿路感染
- 頻尿
- 口渇
が報告されています。
また、重篤な副作用としては、低血糖、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症、脱水、ケトアシドーシスがあります。
※詳しく知りたい方は、『SGLT2阻害薬の効果と副作用』をお読みください。
その他、下肢切断の副作用について、ジャディアンス錠では注意喚起されていません。
ジャディアンスの剤型と薬価
ジャディアンスの剤型と薬価は以下の通りです。
- 先発品:10mg錠 188.9円・25mg錠 322.6円
後発品:未発売<br>※2023年4月現在
ジャディアンスのまとめ
- ジャディアンスは、2型糖尿病および慢性心不全に使えるお薬です。
- ジャディアンスを服用すると腎臓において血液中へ戻る糖が減少するため、血糖値が低下します。
- ジャディアンスは、慢性腎臓病患者さんの腎臓に対する有効性が示されたことから、「慢性腎臓病」に対する適応追加が承認申請されています。(2023年1月現在)
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:糖尿病治療薬 投稿日:2023-06-09
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